英文契約の基本的な表現 第37回 補償する・免責する

      2020/01/30

補償とは何か?

 

ほしょうする

 

これを聞いた時、みなさんは何を思い浮かべますか?

 

保証人」という言葉を思い浮かべた人も多いかと思います。

 

これは、皆さんが実家から出て一人暮らしを始めるためにアパートを借りるときに、ご両親に家賃の支払いについて連帯保証人になってもらうなどの場合の保証ですね。

 

または、買った製品に何ら欠陥がないことを「保証」する、という保証を思い浮かべた人もいるでしょう。

 

でも、今回ご紹介したいのは、「補償」です。

 

「保証」とは異なるこの「補償」とは、一体どのような意味なのでしょうか?

 

漢字だけを見ると、「おぎなって償う」という意味なので、何か損失が生じた場合にそれに対処する、というイメージを持つことができますよね。

 

この「補償」は、契約書でよく出てくる言葉です。その意味は、「一方当事者が第三者に対して負担した全額を他方当事者が当該当事者に対し支払うこと」と契約書に関する参考書には書かれていますが、これでもまだ難しいですね。

 

具体例を挙げてみます。

 

売買契約において、買主が購入した製品が、その使用中にいきなり爆発したとします。

 

そしてその爆発によって、買主以外の第三者がケガをしたとします。

 

このとき、そのケガをした第三者が、製品の持主である買主に対して、ケガの治療費を損害賠償するように請求し、買主はこれを支払いました。

 

しかし、製品が爆発したのは、その製品に欠陥があったことが原因です。そこで買主は、自分が第三者に支払った損害賠償金額を、売主に対して請求し、支払ってもらいました。

 

このときの売主による買主への支払いが、「補償」に当たります。

 

先ほどの説明文に照らしてみると、次のようになります。

 

「一方当事者(買主)が第三者(ケガをした人)に対して負担した全額を他方当事者(売主)が当該当事者(買主)に対し支払うこと」

 

そして、売買契約や請負契約においては、この「補償」についての条文が定められていることが多いのです。

 

 

補償の条文の具体例

 

補償の条文は、以下のようなものです。

 

The Seller shall indemnify and hold harmless the Purchaser from and against all damages, claims, losses, expenses, including without limitation, reasonable attorney’s fees, made against the Purchaser in respect of the death, human bodily injury or damage to any property arising out of the Seller’s performance of the obligation hereunder and due to the Seller’s negligence.

 

訳:売主は本契約に基づく売主の義務の履行から生じた生命、身体、その他の財産への侵害で、かつ、売主の過失に基づくものに関して買主に対して課せられた、合理的な弁護士費用を含むがこれに限らない全ての損害賠償額、損害賠償請求支払額、損失額、諸費用について、買主を補償し、免責する

 

 

なお、この条項は、「indemnity条項」、または、「hold harmless条項」と呼ばれています。

 

これは、上記の条文中に、indemnify(~を補償する)、hold harmless(~を免責する)という文言が含まれていることが理由です。

 

この条文は、一見複雑ですが、いつも、概ね以下のような構造で書かれていますので、慣れれば楽に読めるようになるはずです。

 

[主語]+[indemnify and hold harmless]+[補償される当事者(ここに、補償される当事者の役員や従業員、子会社等が列挙される場合もあります)]+[from and against]+[補償される事項]+[arising out of]+[損害を生じさせた原因となる事由]

 

また、上記は、生命・身体・財産への侵害についての補償・免責を定める条文ですが、他にこのindemnity条項は、売主が買主に引き渡す製品について、それが第三者の知的財産権を侵害しているとして、買主がその第三者から訴えられた場合に売主が買主を補償し、免責することを定める際にも使われます。

 

以下は、第三者の知的財産権の侵害についてのindemnity条項の例文です。

 

The Seller shall indemnify and hold harmless the Purchaser from and against all damages, claims, losses, expenses, including without limitation, reasonable attorney’s fees, made against the Purchaser in respect of the infringement of any patent, trademark, design, utility model, copyright or other industrial property right in connection with the Product.

 

ちなみに、補償する当事者(上記の例では売主)をindemnitor、補償される当事者(上記の例では買主)をindemniteeと呼びます。

 

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目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

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 - 英文契約の基本的な表現の習得