英文契約でwarrantyとは?

      2023/07/21

「~を確約する」の意味の保証について

 

37回では「補償」を、第39回では「保証債務を負う」という意味の「保証」についての表現をご紹介しました。

 

今回は、おそらく一番多くの方に馴染みがある「保証」である、「何かを確約する」ときに使われる「保証」について解説したいと思います。

 

この「~を確約する」という意味の「保証」は、売買契約や請負契約といった契約において、物や役務を提供する者、つまり、売主や請負人が、買主や注文者に対して行う品質についての保証(契約の目的物である製品や役務が、契約に従った品質を有していることを保証するもの)でよく使われます。

 

以下は、条文の例のです。

 

売主は、製品の引渡時において、製品が(i)その設計、材料、および技量に何らの欠陥がないこと、および、(ii)本契約に添付された仕様書に合致していることを保証するものとする。

 

上記の条文で使われる「保証」は、warrantyという表現を使います。

 

この動詞形は、warrant(「~を保証する」)です。

 

 

Warranty条項の英語版を下に示します。

 

The Seller warrants that at the time of delivery, that the Product (i) shall be free from defects in design, materials and workmanship and (ii) shall conform to the Specifications attached hereto.

 

 

黙示の保証と明示の保証

 

実は、上記の「品質についての保証」には、大きく2つの種類があります。

 

一つは、「明示の保証」と呼ばれているexpress warrantyです。

 

これは、口頭または書面で表された保証のことです。

 

もう一つは、「黙示の保証」と呼ばれるimplied warrantyです。

 

これは、口頭や書面で明確に表されていないにも関わらず、売主が保証していることになるものです。

 

この「黙示の保証」であるimplied warrantyには、次の2つがあります。

 

特定目的適合性の黙示の保証」:implied warranty of a fitness for a particular purpose

 

これは、買主が商品を購入する際に特定の目的を持っている場合、商品がその目的に適合することを保証するものです。

 

商品性の黙示の保証」:implied warranty of merchantability

 

これは、通常、商品として備わっているべき品質や機能を備えていることを保証するものです。

 

なんだか難しい用語が立て続けに出てきましたね・・・。正直、特定目的適合性と商品性の黙示の保証云々の当たりは混乱してしまいますね。

 

しかし、「契約書の検討・ドラフティングの際に何に気を付けなければならないのか?」という点に絞ると、以下が答えとなります。

 

売主や請負人は、明示の保証も黙示の保証も含めたあらゆる保証を全てしません!と契約書に明記する

 

これまで契約業務に関わっていなかった方は、これを見て驚かれた方もいるのではないでしょうか。

 

「あらゆる保証をしない」なんて契約書に書いて、相手方が認めるわけがない・・・って思いますよね?

 

大丈夫です。みんな書いてます。

 

実は、上記を明記すると同時に、以下のような条文も定めます。

 

売主が保証するのは、この契約書で「保証します」と定められているものだけに限ります

 

「???どういうこと?」

 

明示の保証や黙示の保証というのは、言ってみれば、法律上求められている保証なのです。

 

しかし、その保証は、当事者間の合意で排除できます

 

そして、法律上求められている保証は全部排除して、当事者間で決めた事項についてだけ保証することにするのです。

 

なぜかといいますと、売主としては、正直、よくわからないことを保証したくないわけです。自分が納得した事項についてだけ保証することにしたいですよね。そしてその売主の保証の内容は、契約書、特に仕様書に明記されるのが通常です。買主も当然その仕様書を見ます。よって、当事者間での保証は、それだけで十分足りるのです。

 

というわけで、法律上求められるなんだかよくわからない明示の保証だの、黙示の保証だのといったものはぜーんぶ保証しません!として、ただし、契約書に明記した事項については保証します!ということにするのです。

 

これが、売買契約や請負契約でよく見かける、あの大文字だらけの条文に定められていることです。あれは、誰が見ても目がとまるように全部大文字にされています。正直、読みにくいことこの上ないですが、確かにそこに目は行きますね。

 

この、明示の保証・黙示の保証の排除+契約書に定められた事項のみを保証する旨を定めた条文は、disclaim条項と呼ばれています。disclaimとは、「否認」とか、「拒否」という意味です。まさに、明示の保証と黙示の保証を負わない、というように否認・拒否していますね。

 

以下にdisclaim条項の例文を記載します。特に下線部分で、「商品性・特定目的適合性の黙示の保証」を排除している点をご確認ください。※読みやすくするために、普通に小文字で書きました。

 

There are no warranties of the Seller to the Purchaser hereunder with respect to the Product, express or implied, other than as set forth in this Article X. The Seller does not make any other warranties or implied warranties of any kind, whether arising from law, custom, statute or otherwise, including any implied warranty of merchantability or fitness for a particular purpose. The remedies set forth in this Article X shall be the sole and exclusive remedy for the Purchaser in connection with the defect in the Product.

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得