英文契約書における契約締結日と契約発効日

      2020/01/30

 

makeやenter intoが、「契約を締結する」という意味になるということは、「英文契約書においてmake, enter into, conclude, executeとはどんな意味?」で説明しました。

 

では、「契約締結日」と「契約発効日」の違いはご存知でしょうか?

 

「え、どちらも同じじゃないの?」

 

こう思われた方もいらっしゃいますよね。

 

実は、この二つは異なる概念なのです。


 

まず、「契約締結日」とは、「契約が締結された日」のことです。

 

ここで、「契約が締結された日」とは、「契約の当事者間の意思の合致がなされた日」を意味します。それは契約書に両当事者の署名がなされた時点です。片方の当事者だけが署名した日ではなく、両方の当事者の署名がそろった時に、両当事者の意思が合致したことになります。

 

この契約締結日を英語では、次のように書きます。

 

“the date of this agreement”

 

日本語に直訳すると、「本契約の日」となりますが、これが、「契約締結日」を意味します。

 

では、「契約発効日」とは何でしょうか。


 

これは、「契約が発効する日」、つまり、「契約に定められている内容が効力を持つ日」です。

 

これは、「契約書に定められている内容に従って当事者が権利を行使でき、または義務を履行しなければならなくなる日」を意味します。



 

この点、契約が締結された場合、契約発効日についての特段の定めがない場合には、契約締結日から契約は発効します。つまり、契約締結日=契約発効日となります。

 

しかし、契約書の中に、契約の発効に関する次のような条文が定められている場合があります。

 

「この契約書は、○年○月○日に発効するものとする。」

 

このような定めがある場合には、契約書に両当事者による署名がなされたのがこれとは別の日であっても、契約発効日は上記の○年○月○日となります。




ちなみに、この契約発効日は、契約締結日よりも後にすることも、前にすることもできます。

 

なお、契約発効日を締結日よりも遡らせる場合の英文は、次のように書くことができます。これは実務で使う場面が割とあると思いますので、覚えておくと便利でしょう。

 

This Agreement shall become effective retroactively as of [month date, year] and continue for a period of two (2) year.

訳:この契約は、[○年△月□日]に遡って有効となり、そして2年間有効とする。

 



さらに、契約書の一部分の発効を契約締結日とは異なるようにする、ということもできます。

 

例えば、以下のような条文です。

 

「この契約書の第○条および第△条は、○年○月○日から効力を有するものとする。」

 

といった感じです。

 

こう定めておくと、この契約書中の第○条と第△条以外の条文は、契約締結日から効力を持ちます。しかし、第○条と第△条は○年○月○日から効力を有することになります。

 

そして、契約が発効するのを、「ある特定の日付」とする方法以外にも、「ある条件が満たされた場合」とする方法もあります。例えば、以下のような条文が考えられます。

 

「この契約は、以下の条件が満たされた場合に限り、発効するものとする。

(1)   甲が○○すること

(2)   乙が△△すること」

 

このように定められている場合には、(1)および(2)の両方が満たされた場合に初めてこの契約書は効力を持つことになります。

 

なお、英語では次のように書くことができます。

 

The Parties agree it is a condition precedent to the effectiveness of this Contract that the following conditions are satisfied:

(1) AAA;and

(2) BBB.

訳:本契約の当事者は、以下の条件が満たされることがこの契約が有効となる停止条件であることに合意する。以下の条件とは、(1)AAA、および(2)BBBである。

 

 

なお、「契約発効日」は、英語では次のように書きます。

 

“the effective date of this agreement”

 

契約締結日(the date of this agreement)と契約発効日(the effective date of this agreement)とでは、”effective”という文言の有無が違いとなります。

 

ちなみに、契約書の冒頭の以下の記載中の日付は、「契約締結日」を意味します。

 

This Agreement is made and entered into the 25th day of July, 2016 by and between Company A, a corporation duly organized and existing under the laws of Japan, having its principal place of business at [住所] and Company B, a corporation duly organized and existing under the laws of India, having its principal place of business at [住所].

 

これは、冒頭に書いてある日付は契約締結日になる、ということではなく、日付の記載の前に、”make and entered into”という「契約締結」を意味する文言があるので、この文書が、「この契約は、2016年7月25日にカンパニーAおよびカンパニーBとの間で締結される」という意味になるためです。

 

以上から、契約締結日と契約発効日の違いを理解していただけたかと思いますが、契約書をチェックする際には、契約締結日=契約発効日なのか、そうでない場合、契約が発効するのはいつから、そしてどのような条件が満たされた場合なのか、と意識して読むようにし、契約締結後になってから、実はまだ契約は発効していなくて、思ったような義務の履行を相手にしてもらえなくて困る、といったことにならないようにしていただければと思います。

 

 

ちょっと一息 コラム集~お昼休みや休憩時間にお読みください~

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【英文契約の典型的な条文に用いられる表現のまとめ】

1.英文契約の条文の骨子となる表現 2.英文契約の条文の骨子に付随する頻出表現
(1)権利

(2)義務(作為義務禁止

(3)契約に違反する重大な契約違反

(1)~に定められている

(2)~に従って

(3)~に関して

(4)~に関わらず

(5)~を除く

(6)~の範囲で

(7)~の場合

(8)~を含むがそれに限られない

3.英文契に定められる重要な事項
(1)義務の履行

(i)~を履行する

(ii)~を満たす

(2)責任

①損害賠償

(i)(損害)を被る

(ii)liquidated damagesliquidated damagesとpenaltyの違い

(iii)責任上限

(iv)逸失利益

間接損害と逸失利益

Notwithstandingと責任制限の重要な関係

(iv)故意・重過失重過失と結果の重大性の関係

(v)遅延利息

②瑕疵担保(保証)

(i)保証する

(ii)瑕疵を修理・交換

第三者への損害

(i)indemnifyとbe liable for

(ii)indemnifyとdefend

契約解除

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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