英文契約の基本的な表現~Representations and Warranties(レプワラ)~

      2020/09/03

レプワラとは?

representations and warrantiesとは、通常、レプワラと呼ばれます。

これは、M&A契約でよく登場します。

 

representationには、「代表」という意味もありますが、M&Aで使われるレプワラ中のrepresentationsは、この意味ではありません。

これは、「ある事柄について、事実がどうであるかを述べること」といった意味です。

 

M&A契約では、他の会社の全部または一部が取引の対象となります。

当然、買主としては、取引の対象となる事業がどのようなものであるか正確に把握した上で買いたいところです。

買った後で、その会社が、「思っていたような事業を持っていなかった」ということになったら、無駄にお金を使ったことになります。

そのため、買収前には、取引の対象となる事業について詳しく調べます。

これはデューディリジェンス(Due Diligence)といいます。略してDDと書いたりもします。

 

しかし、どんなにその事業について事前に調べたところで、限界があります。

基本的に、会社というものは大きく、様々な要素から成り立っています。

その全てをくまなく、漏れなく確認することは、簡単ではありません。

もしも、取引の対象となる事業全部を完全に調査した上でないと買収できない、としては、いつまでたっても買収できないかもしれません。

 

そこで、DDで調査したことも、し切れていないことも含めて、「この会社は、これこれこういう状態にあります」と売主が買主に対して述べます。

そして、「その事実に間違いはありません」と述べます。

つまり、「ある事柄について、事実がどうであるかを述べる」(=表明representations

そして、「その事実に間違いはないと請け合う」(=保証warranties

これが、representations and warranties=表明保証です。

 

買主は、売主にレプワラをしてもらうことで、「我々の認識とそう大きな違いはないのだろう。レプワラ違反の場合には売主に責任を追及できるし・・・」と考え、比較的安心して、買収を進めることができるようになります(絶対的な安心ではありません)。

 

レプワラは、義務(obligation)とは異なる

契約書には、通常、権利義務が定められます。

義務とは、「契約の相手方当事者に対して、何か行為をすること、またはしないと約束したもの」です。

では、レプワラは、義務でしょうか?

いいえ。

レプワラは、義務ではありません。

レプワラは単に、ある特定の時点におけるある事柄について、それがどのようなものなのかを述べ、それが正しいと保証しているだけです。

例えば、「契約締結時において、取引の対象となる会社には、何ら負債はない。(ここまでがrepresentation=表明)そのことに間違いはありません(ここがwarranty=保証)」というものです。

これは、契約相手方に対して何らかの行為をすること、またはしないことを約束するものではありません。

特に重要なのが、レプワラは、「ある特定の時点」について述べたものである点です。

例えば、契約締結時点でその事柄がどうなのか、または、クロージング時点(契約に基づいて取引が完了する時点)でどうなのか、ということです。

 

レプワラの例

M&A、特に会社を買収する場合には、取引の直接的な対象はその会社の株式です。

よって、その株式について、レプワラがなされます。

例えば、「売主は、確かに、その株式の法的な所有権をもっている。これが真実であると保証する」とか、

「その株式には、何も担保がついていない。これは真実であると保証する」などといったものです。

 

また、M&Aにおいてもっとも重要となる取引の対象である会社の財務状態について、

「この会社には、添付資料に列挙されている以外の負債はない。これが真実であると保証する」とか、

「添付資料にある財務諸表に誤りはない。これが真実であると保証する」といったものもあります。

 

さらに、取引の対象である会社が、何ら紛争に巻き込まれていない点についてもレプワラがなされることが一般的です。

 

つまり、取引の対象となる会社の①株式、②財務状態、そして③紛争といった事項がレプワラの典型例といえます。

 

もちろん、この他にも案件ごとに様々なレプワラがなされますが(例えば、取引の対象である会社が工場を持っている場合には、その工場で環境汚染がないこととか、また、従業員の給料や退職金についてのレプワラなどもあります)、上記3つはほぼ常になされるレプワラという意味で、特に重要といえます。

 

なお、レプワラは以下の様な形で定められます。

The Seller hereby represents and warrants to the Purchaser as follows:

(a)[レプワラの内容]

(b)[レプワラの内容]

(c)[レプワラの内容]

訳:「売主は、本契約によって、買主に対して、以下の通り、表明保証をする

ここでは、represents and warrants動詞で使われています。

 

レプワラ違反の効果

義務違反の場合には、通常、相手に対して損害を賠償します。

では、レプワラ違反の場合にはどうでしょうか?

これもやはり、損害賠償が必要となります。M&Aでは、特にindemnity(補償)といいます。

取引の対象となる事業や会社に、レプワラによって保証された内容と異なる事実が判明するということは、買主にとっては、「思っていたのと違う!」という事態が生じているということです。

これによって買主が被る損害を売主は賠償する責任が生じます。

 

また、そもそも、M&A取引を止める権利が買主に与えられることもあります。

レプワラ違反には様々なものがありますが、M&A取引の本質に関わるような事実に誤りがあった場合には、買主としては、もはやそんな事業・会社は欲しくない、ということもあり得るからです。

 

よって、レプワラ違反の効果としては、損害賠償(補償)と契約解除があり得ます。

 

レプワラの注意点

レプワラについて、ついうっかり忘れがちになるのが、レプワラ違反についての責任を売主に対して追求できる期間です。

これを補償期間と呼びます。

例えば、契約締結維持に売主が行うレプワラが、契約上、クロージング後1ヶ月で満了とされている場合に、買主がクロージングから2カ月経過後に「レプワラ違反があった。損害を賠償せよ」などといっても、それはもはや時間切れです。

その場合、「レプワラ違反はあったが、売主に請求できる期間を超えているので、もう責任を追及できない」ということになります。

 

「何をレプワラの対象とするか」については多くの場合に注意されますが、このレプワラ違反の補償期間については、うっかり注意を欠いてしまいがちです。

実際、この補償期間切れが原因で巨額の損害を被った実例もありますので、ぜひ、気を付けてくださいね(2016年末以降に大きく報じられたウェスチングハウスによるCB&IからのStone & Websterの買収による約7000億円超の巨額損失も、この補償期間切れによるものです)。

 

次は、レプワラと似て非なる物、Covenantsについて解説します。

M&A契約(株式譲渡契約)の全体像とよく使われる重要英単語

M&Aの全体像 conditions precedent adjustment
representations and warranties material adverse effect to the knowledge of ~
GAAP covenants

 

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