英文契約書における例示列挙の方法

      2020/01/30

 

 

英文契約書を読んでいると、次のような表現を目にすることがあります。

 

…including, but not limited to,…

 

これは、どのような意味なのでしょうか。

 

おそらく、多くの人は、「~を含む」といった意味だと気が付くかと思います。

 

その理解はだいたいあっています。

 

より正確に訳すと、「~を含むが、それに限らない」となります。

 

では、単にincluding…という場合と、including, but not limited to,…との間に何か違いがあるのでしょうか?

 

 

 

違いは、あります。

 

 

 

では、どのような違いがあるのでしょうか。

 

単なるincluding…は、「…部分しか含まない」という意味になります。つまり、「限定列挙」です。

 

一方、including, but not limited to,…は、「…を含むんだけど、それに限らないよ」ということ、つまり、…は単なる例示であり、これ以外にも含みますよ、という意味の「例示列挙」となります。

 

具体的に見てみます。

 

英文契約書の中には、次の様なタイトルの条文が定められている場合があります。

 

Force Majeure

 

これは、「不可抗力」という意味です。

 

売買契約を例にとって説明します。

 

ある売買契約において、売主は、納期までに製品を海外にいる買主に引き渡す義務を負っているとします。

 

しかし、突然の大地震で、売主の国の港が壊滅的な状態になり、船で納期までに買主のもとへ運ぶことができなくなったとします。

 

この場合、売主は、「納期までに製品を買主に引き渡す」という契約上の義務を守ることができなくなってしまいました。

 

とすると、契約違反として、売主は買主に対して損害賠償を支払わないといけなくなりそうです。

 

しかし、ここで売主が契約上の義務を履行することができなくなったのは、不可抗力という、売主のコントロールの範囲外の出来事が原因です。売主が悪いわけではないのです。

 

このような場合には、売主は契約違反の責任を負わなくてよい、ということを定めているのが、このForce Majeure条項です。

 

ここで、何がForce Majeure、つまり不可抗力に該当するのか、ということを、英文契約では定めています。

 

具体的には、以下のような感じです。

 

The “Force Majeure” means any cause beyond the control of the Party obliged to perform the obligation including, but not limited to, act of God; acts of governments or governmental authorities; fires, storms, floods, explosions or earthquakes; wars (declared or not), rebellions, revolutions, terrorist attacks, or riots; strikes or lockouts.

 

ここで、including, but not limited to,…が使われます。これは、不可抗力に該当しそうなものを色々と列挙しつつも、ここに列挙していないような出来事が起きて、しかもそれが、起きてから考えてみると、不可抗力に当たるような場合もありえるので、それらも、契約上の不可抗力に該当することにしたいという意図です。

 

もしもここで、単にincluding…とだけ定めてしまうと、ここに列挙した出来事以外は不可抗力に当たらない、ということになってしまいます。しかし、不可抗力に当たりそうなものは契約締結時点で色々思い浮かべて定めたつもりでも、どうしても漏れが出てしまうことがあります。そのような漏れがあっても、何とか契約上不可抗力に当たると解釈してもらえる余地を残そうとするために、including, but not limited to,…という表現が使われるのです。

 

 

したがって、契約を読んでいる際に、including…という表現を見たら、次のように思ってください。

 

「including…となっているけど、果たしてここに列挙されているもので網羅されているのだろうか。ここはincluding, but not limited to,…とするべきではないだろうか?」

 

一方、including, but not limited to,…という表現を見たら、逆に、以下のように思っていただければと思います。

 

「including, but not limited to,…となっているけど、これは例示列挙であるので、不当に色々なものが含まれるようにされて、相手方に有利になっていないだろうか。ここは、限定列挙として、including…とするべきではないだろうか?」

 

このように、including…やincluding, but not limited to,…が定められている条文の文脈によって、どちらのほうが自社に有利になるのかは変わってきますので、この表現を見るたびに検討するようにしていただければと思います。

 

ちなみに、including, but not limited to,…は、including, without limitation…とも記載されることがあります。両者は同じ意味です。

 

契約書を読む際に、includingで検索してみると、すぐにこの表現を見つけることができます。

 

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得