実務で必要なスキルを24時間どこにいても学べる!

本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約で何かを相手に渡す、与える

2023/07/21
 

▶4/30(火)まで、今年の春から企業法務部で働くことになった方や企業法務部の若手の方々に向けて、本郷塾にて単体でご提供している英文契約の講座から、秘密保持契約や売買契約など、企業法務部ならどなたでもかかわることになると思われる9つの講座(講義時間は合計約37時間)をお得なセット割でご提供いたします。詳しくは、こちらをご覧ください。

英文契約基礎から実践講座

この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

 

第29回です。

 

今回は、「何かを相手に渡す、与える」という表現をご紹介します。

 

この表現は、英文契約書の中でよく登場します。

 

例えば、

 

「情報を提供する」という形で。

 

「製品を提供する」という形で。

 

あるいは、「通知を発行する」という形で。

 

具体的には、以下のような表現があります。

 

provide

supply

furnish

deliver

transfer

assign

grant

give

issue

submit

 

たくさんありますね・・・。

 

英英辞典における上記の表現の意味を以下に列挙してみます。特徴的だと思われる部分を赤色にしました。

 

表現 英英辞典による意味
provide to give something to somebody or make it available for them to use
supply to provide somebody/something with something that they need or want, especially in large quantities
furnish to supply or provide somebody/something with something
deliver to take goods, letters, etc. to the person or people they have been sent to
transfer to move something/somebody from one place to another
assign to give somebody something that they can use, or some work or responsibility
grant to agree to give somebody what they ask for, especially formal or legal permission to do something
give hand/provide
issue to give something to somebody, especially officially
submit to give a document, proposal, etc. to somebody in authority so that they can study or consider it

 

・・・英英辞典に記載されている意味を見ても、その違いがよくわからん!

 

と、思われた方も多いのではないでしょうか。

 

ただ、いくつかの単語については、私は「なるほど~」と納得させられました。

 

例えば、grantです。

 

これは、技術ライセンス契約中によくみられる表現です。

 

具体的には、ライセンサーがライセンシーに技術の実施権を与える、という場合です。

「formal or legal permission to do something」とgrantの意味にはありますが、実施権を与えることはまさに「許可」を与える、という意味ですので、ぴったりですね。

 

The Licensor hereby grants to the Licensee the license to use the Technical Information to design, manufacture and sell the Product.

 

訳:ライセンサーは、ライセンシーに対して、製品を設計、製造、および販売するために技術情報を使用する権利を与える。

 

※なぜ、上記の例文で、the Licensor shall grant to…というようにshallが使われていないのか?

shallは義務を課す場合に使われます。ここで、このライセンスを与えるという行為は、ライセンサーが契約締結後に何か行為に出ることを義務付けている条文ではないからです。この契約を締結することによって、ライセンサーは特段何らの行為をしなくても、ライセンシーに対して技術情報の使用を許諾することになります。こういう条文を遂行文と呼びます。この遂行文の場合には、shallは使われず、hereby(「本契約によって」という意味)がよく使われます。

 

 

次に、supplyです。

 

“to provide somebody/something with something that they need or want, especially in large quantities

 

と英英辞典にはありますが、「求めている物、欲している物をprovideする」という点が特徴だと思います。

 

売買契約における製品を売主から買主に提供する際に、このsupplyはよく使われる一方で、別に相手方が欲しているわけではない通知を出す、という場合には、supplyはあまり使われていないように思います。

 

 

そして、submitです。

 

英英辞典の意味を見るに、officialな文書を相手に出す感じが出ていますね。実際、見積書を出すとか、正式な証明書を出す場合にこのsubmitはよく使われています。そして、issueとの違いは、issueはとにかく相手に渡すことに重点が置かれている一方で、submitの方が、相手方に渡した後で、その相手方がそれを見た上で何かアクションを起こすことが予定されているニュアンスがあるように思います。「提出するので見てご対応ください!」的な感じで使われていることが多いように思います。

 

 

以下、厳密な区別はできませんが、私がこれまで英文契約書を読んできて感じている使われ方を示します。なんとなくでも雰囲気を感じていただければよいのですが・・・。

 

表現 英文契約での使われ方
provide 製品・情報の提供
supply 製品の提供
furnish 製品・情報の提供
deliver 納期にかかわる有体物の引渡
transfer 権利・義務関係
assign 権利・義務関係
grant ライセンスの許諾
give 広く何かを相手に渡すときに使われる
issue 文書、通知の発行
submit 文書、通知の発行(受領後に中身を検討して何かアクションをとってもらうものが多い)

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

 

 

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 本郷塾で学ぶ英文契約 , 2016 All Rights Reserved.