英文契約でwhereとは?
2023/07/18

今回は、「where」についてご紹介したいと思います。
「whereなんて、今更解説不要でしょ。中学一年生のときに習う単語じゃん!」
そう思われた方も多いかと思います。
私も、まさか、自分が「where」の意味がわからないで困ることが起きるなんて、英文契約書を読むようになるまで思いませんでした。
whereは、当然、疑問詞の一つ、つまり、5W1Hなどで使われる「どこで?」「どこに?」「どこへ?」といった意味だと思っていました。
つまり、Where are you going? 「どこに行くの?」
とか、
Where are you from? 「どちらのご出身ですか?」
といったものです。
または、関係副詞としてのwhereもありますね。例えば、
This is the house where I lived for ten years. 「これは私が10年間住んでいた家です」といったものです。
この例文では、the houseを「先行詞」なんて言いますよね(10年以上ぶりに「先行詞」なんて言葉を思い出しました)。
では、次の例文におけるwhereはどういう意味でしょうか?
Except where otherwise specifically provided elsewhere in the Contract, the Contractor shall submit to the Owner a notice of a claim for an extension of the Time for Completion.
これは、疑問詞でしょうか?それとも、関係副詞でしょうか?
どちらにしても意味が通りませんよね?
上記の下線部分は、「契約書のどこかに別途明記されている場合を除いて」という意味になります。
つまり、ここでの「where」は、「~の場合には」という意味で、品詞は「接続詞」です。
と、一応、「品詞」を書きましたが、私としては、正直、品詞がどれなのかはどうでもよいと思っています。
重要なのは、「~の場合に(は)」といった意味の場合がある、ということです。
また例文を見てみましょう。
The Contractor shall execute the basic and detailed design and the engineering work in compliance with the provisions of the Contract, or where not so specified, in accordance with good engineering practice.
上記の下線部分は挿入句となっており、意味は、「契約書に記載されていない場合には」という意味になります。つまり、「コントラクターは、契約書の条文に従って設計をしなければならず、もしも契約書にそのような条文が定められていない場合には、good engineering practiceに従って設計をしなければならない」という意味になります。
ここの意味は分かりにくいかもしれないのでもう少し解説すると、契約書に、コントラクターが設計を行う際の「基準・指針」のようなものが定められている場合にはそれに従って設計をすることが求められるが、もしもそのような「基準・指針」が契約書に定められていない場合には、good engineering practiceに従って設計することが求められている、という意味です。
上記の例文は、whereに「~の場合には」という意味があることを知っていないと、意味がよく分からないことになりますよね。
私の経験では、この「~の場合には」という意味でのwhereは、そう頻繁に英文契約書に登場するわけではないように思いますが、疑問詞や関係副詞としてのwhereととらえると意味がよく分からない場面では、「「~の場合には」という意味ではないか?」と疑ってみると、読めるようになることが多いと思います。
目次 | ||
第1回 義務 | 第10回 ~に関する | 第19回 知らせる |
第2回 権利 | 第11回 ~の場合 | 第20回 責任 |
第3回 禁止 | 第12回 ~の範囲で、~である限り | 第21回 違反する |
第4回 ~に定められている、~に記載されている | 第13回 契約を締結する |
第22回 償還する |
第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) | 第14回 契約締結日と契約発効日 | 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD) |
第6回 ~に従って | 第15回 事前の文書による合意 | 第24回 故意・重過失 |
第7回 ~に関わらず | 第16回 ~を含むが、これに限らない | 第25回 救済 |
第8回 ~でない限り、~を除いて | 第17回 費用の負担 | 第26回 差止 |
第9回 provide | 第18回 努力する義務 | 第27回 otherwise |
第28回 契約の終了 |
第38回 権利を侵害する | 第48回 遅延利息 |
第29回 何かを相手に渡す、与える |
第39回 保証する | 第49回 重大な違反 |
第30回 due |
第40回 品質を保証する | 第50回 ex-が付く表現 |
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 | 第41回 補償・品質保証 | 第51回 添付資料 |
第32回 ~を被る | 第42回 排他的な | 第52回 連帯責任 |
第33回 ~を履行する | 第43回 | 第53回 ~を代理して |
第34回 果たす、満たす、達成する | 第44回 | 第54回 下記の・上記の |
第35回 累積責任 | 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している | 第55回 強制執行力 |
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 | 第46回 証明責任 | 第56回 in no event |
第37回 補償・免責 | 第47回 indemnifyとliableの違い | 第57回 for the avoidance of |
第58回 無効な | 第68回 representations and warranties | |
第59回 whereについて | 第69回 material adverse effect | |
第60回 in which event, in which case | 第70回 to the knowledge of | |
第61回 株主総会関係 | 第71回 GAAP | |
第62回 取締役・取締役会関係 | 第72回 covenants | |
第63回 indemnifyとdefendの違い | ||
第64回 Notwithstandingと責任制限条項 | ||
第65回 M&Aの全体の流れ | ||
第66回 conditions precedent | ||
第67回 adjustment |
【私が勉強した参考書】