「下記の」「上記の」という表現 英文契約の基本的な表現 第54回

      2022/06/15

今回は、「下記の」と「上記の」という表現をご紹介します!

 

「下記の」という表現が使われる場面

 

英文契約には、「条文」が定められています。

 

その条文は、「~の場合には、・・・となる」という内容であることがよくあります。

 

この「~の場合には」に当たる部分を「条件」、「・・・となる」に当たる部分を「効果」、と呼びます。

 

そして、この条件や効果が、複数あることがあります。

 

その場合、次のような条文の形となることが多いです。

 

下記の事項を満たす場合には、・・・となる。

 

条件1・・・

条件2・・・

条件3・・・」

 

または、

 

「~を満たす場合には、下記の効果が生じる。

 

効果1・・・

効果2・・・

効果3・・・」

 

つまり、箇条書きにするのです。

 

なぜ箇条書きにするかといいますと、ズラズラと複数の条件や効果をただ書き並べるよりも、箇条書きにした方が分かりやすくなるからです。

 

実際に、箇条書きとそうでない場合とを以下で比較してみましょう。

 

箇条書きにしない場合:

「不可抗力、法令変更、請負人の責めに帰さない事由に基づく注文者の仕様変更命令、請負人の責めに帰さない事由に基づく注文者の作業中断要求、または注文者の契約違反のいずれかが生じた場合には、納期は延長される。」

 

箇条書きにした場合:

以下のいずれかの事由に該当する場合には、納期は延長される。

(1)   不可抗力

(2)   法令変更

(3)   請負人の責めに帰さない事由に基づく注文者の仕様変更命令

(4)   請負人の責めに帰さない事由に基づく注文者の作業中断要求

(5)   注文者の契約違反」

 

いかがでしょうか?

 

箇条書きにした方が、すっきりして見やすいですよね?

 

 

「下記の」を表す表現

 

これは、followingという表現がよく使われます。

 

例文

If the Contractor terminates this Contract in accordance with the Article 20 hereunder, the Owner shall pay to the Contractor the following amounts:

(i)              A;

(ii)             B; and

(iii)            C.

 

訳:コントラクターが本契約の第20条に従って本契約を解除した場合、オーナーは、以下の金額をコントラクターに支払わなければならない。

(1)   A

(2)   B

(3)   C

 

 

「上記の」という表現が使われる場面

 

契約書では、前の条文に定められた事項を引用することがよくあります。

 

例えば、次のような感じです。

 

上記の定めに関わらず、コントラクターはオーナーが被った間接的な損害については責任を負わない。」

 

もっとも、この「上記の」というのが、どれを指すのかわかりにくいことが時々あります。

 

つまり、「上記っていうけど、上には色々なことが定められてるじゃん。具体的にはどれ??」という疑問を感じてしまうようなときです。

 

これでは、場合によっては、当事者間で「上記」とはどれを指すのかについて争いに発展する可能性もありますので、契約書を読んでいる際にそのような疑問を感じたら、「上記の」という表現は使わずに、多少冗長になってしまうとしても、「上記の」に当たる部分を再度そこに明確に書くようにするべきです。

 

「上記の」を表す表現

 

これは、複数あります。

 

  • foregoing
  • aforementioned
  • aforesaid
  • abovementioned

 

英文契約書の中で特によく見かけるのは、「foregoing」だと思います。

 

例文:

Notwithstanding the foregoing, the Contractor is not required to be liable for any indirect damages suffered by the Owner.

 

訳:

上記に関わらず、コントラクターはオーナーが被ったいかなる間接的な損害も賠償する責任を負わない。

 

 

今回ご紹介したfollowingやforegoingといった表現は、英文契約書に限らずメールなどでも使える表現ですので、ぜひ覚えて使いこなしていただければと思います。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

 

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

仕事関係

これから法律・契約について勉強し始める社会人が陥りやすい勘違い

 

英語はある日突然聞き取れるようになるのか?

 

会社は誰のものか?

 

司法試験に落ちた後の人生とは?

 

休日を楽しめない理由とは?

 

ピカソがその絵で伝えようとしたこと

 

メンター(教育係)に初めてなる人へ①

メンター(教育係)に初めてなる人へ②

 

自分の勝因は相手の敗因にある(日露戦争から学ぶ)

 

Subject toとポツダム宣言の受諾

どうして議論がまとまらないのか?

 

歴史の本の紹介

 - 英文契約の基本的な表現の習得