英文契約の基本的な表現~adjustment (M&Aにおける契約金額調整)~

      2020/09/03

M&Aにおける対価の決め方

M&Aでは、契約金額はどのように決まるのかご存知でしょうか?

もちろん、契約締結時に当事者間で合意した金額を買主が売主に支払って終わり、という場合もあります。

しかし、一般に、M&Aにおいては、対象となる会社の株式が買主に移転するのは、契約締結時から数週間から数ケ月後のクロージング日とされることが多いです。

 

つまり、一旦契約金額を契約締結日に合意した後、実際に買収が完了するまでの間に結構な期間があるのです。

 

この場合、その間に対象となる会社の価値が変化し得ます。

 

例えば、負債が増減し得ます。

例えば、債権が増減し得ます。

 

つまり、契約締結時には、対象となる会社は100百万米ドルの価値と判断されたけれども、数ケ月後のクロージング時には、80百万米ドルに減っていた、ということが起こり得るのです。

 

この場合、100万円米ドル支払わないといけないというのは、買主としては納得できないでしょう。

 

そこで、契約締結時からクロージング時の間に生じる対象となる会社の価値の変化契約金額に反映する必要がでてきます。

これが、価格調整(adjustment)です。

 

価格調整の方法

この価格調整の方法はいくつかありますが、典型的なのは、次の2つについて、契約締結時とクロージング時におけるそれぞれの値を比べることです。

 

  • 正味運転資本(Net Working Capital)=「売掛債権・未収金+棚卸資産」-「仕入債務・未払金」
  • 純有利子負債(Net Debt)=有利子負債-現預金

 

正味運転資本が多いほど、会社の価値は高まります。よって、契約金額に上乗せされます。

一方、純有利子負債が多いほど、会社の価値は下がります。よって、契約金額は減額されます。

 

よって、契約金額の調整額は、以下のような式で表すことになります。

 

クロージング時の正味運転資本-契約締結時の正味運転資本)-(クロージング時の純有利子負債-契約締結時の純有利子負債)

なお、具体的に正味運転資本と純有利子負債の中にいかなる項目を含めるかは、契約当事者間で協議の上で契約書に明記されます。

 

レプワラ違反の補償との違い

時々、この価格調整レプワラ違反の補償が混同されることがあります。

 

例えば、契約締結時に、対象となる会社の負債がいくらであるかについて売主がレプワラしたものの、後に、その負債額が間違っていた場合、これは、レプワラ違反です。

 

よって、間違ってレプワラされた負債額と真実の負債額との差額が、売主から買主に支払われる損害賠償金額=補償となります。

 

一方、上記で紹介した価格調整は、契約締結時の会社の価値が、その後の営業活動など何らかの理由で「変化した場合」に、その変化を対価に反映させるものです。これは、本来、レプワラ違反がどうこうという話ではありません

 

ここで、以前紹介したレプワラの記事(こちらをご参照)でも触れましたが、レプワラ違反の場合には、相手方に補償を求めることができる期間が定められています。

 

よって、例えば、契約締結時になされたレプワラの違反に対する補償期間がクロージング日までとされている場合、クロージング後は、そのレプワラ違反の補償を相手に求めることができなくなります。

この時、価格調整の条文に従ってレプワラ違反の分を補償してもらえるかというと、それは認められない可能性があります価格調整はあくまで「価値の変化」をみるためのものであり、レプワラ違反を是正するためのものではないからです。

レプワラ違反を発見した場合には、補償期間中に速やかに相手に補償を求めるようにしましょう。

 

M&A契約(株式譲渡契約)の全体像とよく使われる重要英単語

M&Aの全体像 conditions precedent adjustment
representations and warranties material adverse effect to the knowledge of ~
GAAP covenants

 

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