英文契約書で「添付資料」とは?
2023/07/18

今回は、英文契約書でよく出てくる「添付資料」を意味する表現をご紹介します。
添付資料とは何か?
まず、そもそも、「添付資料」とは何なのでしょうか?
その名の通り、「契約書に添付されている資料」ですよね。
あれ?ということは、「契約書そのものではない」という理解でよろしいでしょうか?
つまり、契約書本文には、当然、その契約の当事者を拘束する力が生じますが、添付資料は、あくまで契約書に添付されているものなのだから、法的拘束力はない?ただの参考程度のもの?そう考えてよいでしょうか?
答えは、「ダメ」です。
添付資料という言葉からは、上記の様に考える方もいるかもしれません。また、そのような誤解をされるのもやむをえません。
しかし、添付資料は、列記とした「契約書そのもの」なのです。
その意味では、添付資料は、「契約書に添付されたもの」ではなく、厳密には、「契約書の本文に添付された資料」と言った方が正確でしょう。
つまり、契約書は、「本文」と「それに添付される資料(添付資料)」からなる、というわけです。
よって、これまで、「添付資料?どーせ参考資料でしょ?そんなにしっかりチェックしなくてもいいんでしょ?」と思っていた方がいらっしゃったとしたら、ぜひこの機会にその考えを改めていただければと思います。
添付資料に書かれている内容も、契約本文と同じように、原則として、法的拘束力があるのです(明示的に、「添付資料には法的拘束力がない」と定められていれば、その通り、法的拘束力を生じさせないようにすることは可能です)。
とはいえ、通常、法務部門では添付資料まではそこまでしっかり読まないことが多いと思います。
というのも、添付資料は技術的な事項が詳細に定められることが多いからです。つまり、添付資料は主に技術部門の方々がチェックするべき書類と言えるでしょう。
そのため、ある問題が生じる場合があります。
添付資料と契約本文の内容に食い違いがある場合はどうなるのか?
その問題とは、「添付資料の内容が契約書本文と矛盾することがあり得る」という問題です。
例えば、契約書本文には、「保証期間は2年」と定められているのに、添付資料には、「保証期間は3年」と定められていた場合を考えてみましょう。
契約書本文も、添付書類も、どちらも法的拘束力があるのです。
その両方が矛盾している・・・。
本文が優先?
添付資料が優先?
両者の間を採って2年半とする?
このような悩みが出てくるので、例えばEPC契約や株式買取契約等の重要な案件の契約書の本文には、ほぼ必ずといってよいほど、次のような条文が定められています。
「優先順位を定める条文」
例えば、「契約書本文と添付資料が矛盾している場合には、契約書本文を優先する」とか、その逆の定めがあります。添付資料が多い場合には、添付資料の間の優先順位も定められている場合があります。
そして、その定めに従って契約書本文と添付資料の間の優劣関係が判断されることになります。
なので、「添付資料の内容はどのようなものか?」「契約書本文と重なるような記載はないか?」ということを、契約書本文と添付資料を見る担当者間で確認し合い、その結果、「優劣関係を決める条文を定めるか否か」、「定める場合、その内容はどうするか(どういう優劣関係にするか)」を決める必要があります(もっとも、そもそも、契約書本文と添付資料との間で矛盾が生じないように確認することが大事ですが・・・)。
特に、添付資料には「保証に関する事項」と「損害賠償に関する事項」が技術的な記載の中にどさくさにまぎれて定められていることがあるので、その点の整合性は社内の関係部門間でしっかりと確認するようにすることをお勧めいたします。
添付資料を意味する表現
以下のようなものがあります。
- Appendix
- Attachment
- Exhibit
- Annex
- Schedule
上記のどれも意味に違いはありません。
ただし、一つの契約書で、添付資料を例えば「Appendixとする」と決めたら、その契約書内では常に同じ文言、つまり、「Appendix」という表現を使うようにしてください。
そして、添付資料が複数ある場合には、Appendix 1、Appendix 2、Appendix 3のように番号(またはアルファベット等)を付します。
全て最初の文字を大文字にしていますが、添付資料を意味する上記の文言は、定義されることが多いのでそのようにしました。
まとめ
- 添付資料も契約書!つまり、法的拘束力がある!
- 添付資料と契約書本文の記載に食い違いがある場合、どちらが優先するのか争いになる。よって、添付資料と契約書本文とで同種の事項について定める場合には、優劣関係を定める!(特に「保証に関する事項」と「損害賠償に関する事項」で食い違いが生じやすい)(そもそも矛盾しないように全体の整合性を採ることが一番大事であることはいうまでもありません)
- 添付資料を意味する表現は、以下の通り。
Appendix
Attachment
Exhibit
Annex
Schedule
目次 | ||
第1回 義務 | 第10回 ~に関する | 第19回 知らせる |
第2回 権利 | 第11回 ~の場合 | 第20回 責任 |
第3回 禁止 | 第12回 ~の範囲で、~である限り | 第21回 違反する |
第4回 ~に定められている、~に記載されている | 第13回 契約を締結する |
第22回 償還する |
第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) | 第14回 契約締結日と契約発効日 | 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD) |
第6回 ~に従って | 第15回 事前の文書による合意 | 第24回 故意・重過失 |
第7回 ~に関わらず | 第16回 ~を含むが、これに限らない | 第25回 救済 |
第8回 ~でない限り、~を除いて | 第17回 費用の負担 | 第26回 差止 |
第9回 provide | 第18回 努力する義務 | 第27回 otherwise |
第28回 契約の終了 |
第38回 権利を侵害する | 第48回 遅延利息 |
第29回 何かを相手に渡す、与える |
第39回 保証する | 第49回 重大な違反 |
第30回 due |
第40回 品質を保証する | 第50回 ex-が付く表現 |
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 | 第41回 補償・品質保証 | 第51回 添付資料 |
第32回 ~を被る | 第42回 排他的な | 第52回 連帯責任 |
第33回 ~を履行する | 第43回 | 第53回 ~を代理して |
第34回 果たす、満たす、達成する | 第44回 | 第54回 下記の・上記の |
第35回 累積責任 | 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している | 第55回 強制執行力 |
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 | 第46回 証明責任 | 第56回 in no event |
第37回 補償・免責 | 第47回 indemnifyとliableの違い | 第57回 for the avoidance of |
第58回 無効な | 第68回 representations and warranties | |
第59回 whereについて | 第69回 material adverse effect | |
第60回 in which event, in which case | 第70回 to the knowledge of | |
第61回 株主総会関係 | 第71回 GAAP | |
第62回 取締役・取締役会関係 | 第72回 covenants | |
第63回 indemnifyとdefendの違い | ||
第64回 Notwithstandingと責任制限条項 | ||
第65回 M&Aの全体の流れ | ||
第66回 conditions precedent | ||
第67回 adjustment |
【私が勉強した参考書】