英文契約書において「違反する」とは?

      2023/07/19

 

今回は、「違反する」という時に使う表現をご紹介します。

 

契約には、当事者間の権利義務が定められています。

 

特に、義務を中心に定められていますが、この義務は、もちろん、守られなければならないものです。

 

この義務を守らないこと、それを、「契約に違反する」といいます。

 

そして、一方の契約当事者がこの契約に違反した場合、違反されたもう一方の契約当事者はいかなる対処をしてもらえるのか、それもまた契約書で定めています。

 

つまり、契約書は、「契約当事者が守らなければならない事項」と、「それに違反した場合の対処方法」が定められているといえます。

 

この「違反する」というのは、以下のような表現が主に使われます。

 

breach

violate

 

私のこれまでの経験では、violateよりも、breachの方をよく目にします。

 

そこで、両者の間で何か意味に違いあるのか、英英辞典で意味を調べてみました。

 

表現 英英辞典における意味
breach to not keep to an agreement or not keep a promise
violate to go against or refuse to obey a law, an agreement, etc.

 

一見、breachの方は、「合意や約束を守らないこと」、とあるのに対し、violateの方は、合意や約束のほかに、「法律を守らないこと」を含んでいるような記載がありますが、果たして、法律に違反することをbreachと言わないのか否かはよくわかりませんでした。

 

ただ、確かに、契約違反の場合には、breachが使われることが多く、一方で、法律違反の場合には、violateが使われているイメージはあります。

 

例えば、「重大な契約違反」という意味を表すmaterial breachという表現は何度も見たことがありますが、一方で、material violationという表現は見たことがありません。

 

また、契約違反の場合には、常にbreachが使われている、というわけでもありません。

 

例えば、「納期に遅れる」と書きたい場合に、

 

The Seller breaches the obligation to deliver the Product to the Purchaser by the Delivery Date.

 

という表現もないわけではないですが、通常は、次のような表現を使っています。

 

The Seller fails to deliver the Product to the Purchaser by the Delivery Date.

 

この、fail to doは、契約書の中でよく出てきます。failは「怠る」という意味ですので、このfail to doで、「何かをするのを怠る」という意味になります。

 

ちなみに、私は、条文を自分でドラフトする場合には、このbreach、violate、fail to doの使い分けは以下のようにしています。

 

  • 「法律に違反した」という場合:violateを使う

 

  • 「契約に定められている義務に違反した」という場合:breach the obligation under this Agreementという感じでbreachを使う

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得