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英文契約で累積責任とは?

2023/07/21
 
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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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累積責任という表現が英文契約書中で使われる場面

 

累積責任」という言葉は、これまで契約書を検討する仕事に関わったことがない人には馴染みがないものなのではないでしょうか。

 

おそらく、学生時代に法律を専攻していた人にとっても、あまり聞いたことがない言葉だと思います。

 

累積責任とは、契約を締結した当事者がその契約に関して負うことになる全部の責任を足し合わせたもの、を指します。

 

売買契約で言えば、売主が納期に遅れた責任保証性能を出せなかった場合の責任瑕疵があった場合の責任等の合計を累積責任と言います。責任を積み重ねたもの、というイメージを持っていただければと思います。

 

そして、契約書には、この累積責任に上限を設けている条文が定められている場合があります。

 

いわゆる、責任制限条項と呼ばれるものです。

 

この責任制限条項には、相手方当事者が被った逸失利益の喪失などについて責任を負わなくてもよいとする逸失利益の免責条項と、上記の累積責任に上限を設けるものが主なものとしてあります。

 

 

損害賠償に関する民法の原則からみた累積責任の上限

 

おそらく、特に大学で法律を学んだ方にとっては、この責任制限条項は、新鮮な、そして意外なものなのではないでしょうか。

 

というのも、民法では、契約相手が被った損害は、相当な因果関係があるのであれば、全て契約に違反した当事者が賠償しなければならない、というのが原則的な扱いであるからです。

 

そしてその原則は、合理的なものでもあります。

 

契約に違反して相手方に損害を与えた当事者がその損害を全部賠償する、というのは、何ら不公平なものでもなく、当然と言えば当然です。

 

しかし、この責任制限条項は、例え契約に違反したとしても、その当事者が責任を負う範囲を狭めよう、というものなのです。

 

これは特に、売買契約や請負契約で製品を納入する側、つまり、売主や請負人に有利な条項であるといえるでしょう。

 

もっとも、この責任制限条項が、あらゆる契約書に定められているかというと、そうでもありません。

 

業界によっては、民法の原則の通り、生じた損害は相当な因果関係がある限り全て賠償する、という扱いを貫いている業界もあるようです。

 

なので、ご自分の業界で、この責任制限条項を契約書に設けることが一般的なことであるのかについては確認しておくとよいと思います。

 

なお、この累積責任に上限を設ける条文が契約書に定められていた場合でも、故意・重過失によって相手方に生じさせた損害については適用されないことになるという扱いをしている国が多いと思います。故意・重過失の当事者を保護する必要はない、という考え方からくるものでしょう。なので、この累積責任に上限を設ける条文があるからといって、「もうそれ以上責任を絶対に負わなくてよくなる!」というわけではないという点は知っておいていただければと思います。

 

累積責任という表現

 

では、この累積責任を表す英語の表現はどのようなものなのでしょうか?

 

簡単なものですと、total liabilityという表現を使っている契約書も見受けられます。

 

または、maximum liabilityという表現も時々見かけます。

 

しかし、もっともよく使われているのは、aggregate liabilityという表現です。aggregateという単語も、普通はほとんど見かけないのではないでしょうか。

 

英文契約書の中でこのaggregateが使われるのは、累積責任に上限を設ける条文にほぼ限られます。

 

よって、契約書で、totalmaximumまたはaggregateで検索をして何もヒットしなければ、その契約書には、累積責任の条文が定められていない、と判断してよいと思います。その場合、追記するべきか検討することになります。

 

以下は、累積責任の上限を定める条文の例です。

 

Notwithstanding anything to the contrary set forth in this Agreement, the Seller’s aggregate liability to the Purchaser related to this Agreement shall not exceed the amount of the Contract Price hereof.

 

訳:本契約中の如何なる定めにも関わらず、売主が買主に対して負う本契約に関する累積責任は、本契約の契約金額を超えない。

 

ちなみに、累積責任の上限は、契約金額と同額とされていることが多いですが、必ずしもそうしなければいけないわけではありません。契約金額の50%でも、200%でも、当事者間の合意次第です。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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