英文契約でperform/carry out/execute/conductとは?
「~を履行する」という表現が英文契約書の中で使われる場面
契約書は、当事者間の権利義務を定める文書です。
特に「義務」を中心に定められています。
その義務を行うことを、契約では、「義務を履行する」と言います。
よって、「~を履行する」という表現は、具体的には、「義務を履行する」という形で、以下のように使われます。
「当事者Aは、本契約に従い、自己の義務を履行しなければならない。」
「当事者Aが、本契約上の義務を履行するのが遅れた場合には、それによって当事者Bに生じた損害を賠償しなければならない。」
「当事者Aが本契約上の義務を履行することができない場合には、当事者Bは本契約を解除することができる。」
「~を履行する」という表現
この「~を履行する」という意味を表すために英文契約で使われる表現は、以下の4つが主なものです。
- perform
- execute
- carry out
- conduct
なお、上記4つの表現の使い分けは特にありませんが、私がこれまで見てきた英文契約書において最もよく使われていたのは、performだと思います。
いくつか例文を見てみましょう。
The Contractor shall perform its obligation under this Agreement.
訳:コントラクターは、本契約に基づく義務を履行しなければならない。
If the Contractor fails to perform the obligation under this Agreement, the Owner is entitled to terminate this Agreement by giving the written notice to the Contractor.
訳:もしもコントラクターが本契約に基づく義務を履行しなかった場合には、オーナーはコントラクターに書面の通知を提出することによって本契約を解除することができる。
ちなみに、「義務を履行する」を、do the obligationと書くことはまずありません。
また、英文契約書では、抽象的に「義務を履行する」という表現よりも、より具体的な表現で義務を定めるのが一般的です。
例えば、売主には、「製品を引き渡す義務」がありますが、このときは、
The Seller shall deliver the Product to the Purchaser.
と書きます。
deliverが義務の具体的な内容なので、この場合にはperformとかexecuteといった表現は使いません。
つまり、「~を履行する」という表現は、抽象的に「義務を行う」と書く場面で使われる表現なのです。
ちなみに、「権利を行使する」という場合には、上記の4つの表現は使わず、exerciseという表現を使います。
The Purchaser is entitled to exercise the right under this Agreement.
訳:買主は、本契約に基づく権利を行使することができる。
このように「義務」と「権利」とで異なる表現が使われるのは、「義務」はあることを「遂行する」もの、「やり通す」ものであるのに対し、「権利」は、「使う」もの、「行使する」ものである、という違いがあるからだと思います。
整理すると、以下のようになります。
義務の場合は、perform、execute、carry out、conduct
権利の場合は、exercise
これを覚えれば英文契約をずっと読みやすくなる!英単語レベル2
3.「~を履行する」
7.「添付資料」
10.「契約の終了」
英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!レベル1
英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。
・hereto/hereof/herein/hereinafterやthereof/thereby/thereafterなど
・shall 義務
・shall not 禁止
・may 権利
・if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現
・unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現
・otherwise「別途」を表す表現
・notwithstanding ~にかかわらず
・regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現
・to the extent ~の範囲で
・pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現
・provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現
・however provided that 「ただし」を表す表現
目次 | ||
第1回 義務 | 第10回 ~に関する | 第19回 知らせる |
第2回 権利 | 第11回 ~の場合 | 第20回 責任 |
第3回 禁止 | 第12回 ~の範囲で、~である限り | 第21回 違反する |
第4回 ~に定められている、~に記載されている | 第13回 契約を締結する |
第22回 償還する |
第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) | 第14回 契約締結日と契約発効日 | 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD) |
第6回 ~に従って | 第15回 事前の文書による合意 | 第24回 故意・重過失 |
第7回 ~に関わらず | 第16回 ~を含むが、これに限らない | 第25回 救済 |
第8回 ~でない限り、~を除いて | 第17回 費用の負担 | 第26回 差止 |
第9回 provide | 第18回 努力する義務 | 第27回 otherwise |
第28回 契約の終了 |
第38回 権利を侵害する | 第48回 遅延利息 |
第29回 何かを相手に渡す、与える |
第39回 保証する | 第49回 重大な違反 |
第30回 due |
第40回 品質を保証する | 第50回 ex-が付く表現 |
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 | 第41回 補償・品質保証 | 第51回 添付資料 |
第32回 ~を被る | 第42回 排他的な | 第52回 連帯責任 |
第33回 ~を履行する | 第43回 | 第53回 ~を代理して |
第34回 果たす、満たす、達成する | 第44回 | 第54回 下記の・上記の |
第35回 累積責任 | 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している | 第55回 強制執行力 |
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 | 第46回 証明責任 | 第56回 in no event |
第37回 補償・免責 | 第47回 indemnifyとliableの違い | 第57回 for the avoidance of |
第58回 無効な | 第68回 representations and warranties | |
第59回 whereについて | 第69回 material adverse effect | |
第60回 in which event, in which case | 第70回 to the knowledge of | |
第61回 株主総会関係 | 第71回 GAAP | |
第62回 取締役・取締役会関係 | 第72回 covenants | |
第63回 indemnifyとdefendの違い | ||
第64回 Notwithstandingと責任制限条項 | ||
第65回 M&Aの全体の流れ | ||
第66回 conditions precedent | ||
第67回 adjustment |
【私が勉強した参考書】