英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

      2022/05/23

「~を被る」という表現が使われる場面

 

今回は、「~を被る」という表現についてご紹介したいと思います。

 

「~を被る」の「~」にはどのような言葉がくるのかと言いますと、「遅れ」や「費用」や「損害」といったものが多いです。

 

英文契約は、当事者間の権利義務を定めている文書です。

 

特に義務を中心に定めています。

 

この義務に違反するとどうなるでしょうか?

 

違反をされた当事者は、自分の作業に遅れが出たり、追加費用が生じたり、損害が発生したりしますよね。

 

このとき、「遅れを被る」、「追加費用を被る」、そして「損害を被る」といいます。

 

そして、遅れ、追加費用、損害等を被った当事者は、違反をした当事者に対して、「納期延長」、「追加費用の支払い」、「損害の賠償」を求めることができる、と契約書で定められているはずです。

 

つまり、以下のような条文が契約書に定められていることが多いと言えます。

 

「当事者Aの契約違反によって、当事者Bがその作業に遅れを被ったら、当事者Bはその分納期を延長してもらえる」

 

「当事者Aの契約違反によって、当事者Bが追加費用を被ったら、当事者Bはその追加費用を負担してもらえる」

 

このように、相手方当事者が契約違反に陥った場合の扱い定める条文中に、「~を被る」という表現が使われるのです。

 

ちなみに、この「~を被る」という表現は、英文契約書に限らず、相手方当事者に対してクレームレターを書く際にもよく使われます。

 

クレームレターとは、相手方当事者が契約に従わない場合に、契約違反に陥っていること相手方に伝え、その契約違反によって自分が被った工程の遅れや追加費用の請求をするレターのことです。

 

このクレームレターの中では、「あなたは契約書の○条に違反しています。それによって私達は、工程に遅れや追加費用を被りました。よって、納期を延長し、追加費用を支払ってください」というようなことを書くことが多いです。

 

以上から、「~を被る」という表現が英文契約書やそれに関するクレームレターでよく使われるということをわかっていただけたかと思います。

 

 

「~を被る」という表現

 

では、「~を被る」とは、どのような表現を使うのでしょうか。

 

まず、「遅れ(delay)」や「損失・損害(loss、damage)」を被る場合は、sufferまたはsustainが使われます。

 

一方、「費用(expense、cost)」を被る場合は、incurが使われます。

 

この点、英和辞典を見ると、sufferincurもどちらも「~を被る」という訳が充てられており、両者が「遅れ」「損失・損害」と「費用」とで使い分けがなされているわけではないように思えます。

 

しかし、これはあくまで私の経験なのですが、以下の例文のように、英文契約書では、「遅れ」「損失・損害」suffer、「費用」はincurという使い分けがなされているものが多いです。

 

If the Contractor suffers delay and/or incurs additional cost due to a failure by the Owner to perform the Owner’s obligation under this Agreement, the Contractor is entitled to an extension of time for any such delay and a payment of any such additional cost.

 

訳:もしもコントラクターが本契約に基づくオーナーの義務の履行がなされないことによって工程の遅れを被る、または追加費用を被った場合には、コントラクターはかかる遅延分の納期の延長、および、かかる追加費用を請求することができる。

 

よって、英文契約やクレームレターにおいては、「費用」の場合は、incurを、「それ以外の何か好ましくないもの」を被る場合はsufferを使う、という使い分けをするのがよいと思います。

 

 

additional cost incurred by~とdelay suffered by~について

 

なお、このincursufferは次のような過去分詞の形でも使われます。

 

The Owner shall reimburse to the Contractor any additional cost incurred by the Contractor due to the failure of the Owner’s obligation under this Agreement.

 

訳:オーナーは、本契約に基づくオーナーの義務違反に起因してコントラクターが被った追加費用をコントラクターに対して償還しなければならない。

 

ここでは、any additional cost incurred by the Contractorとあり、「コントラクターによって被られた追加費用」=「コントラクターが被った追加費用」となります。意味を理解する際に、ここでは追加費用を被る主体がコントラクターである点にご注意ください。

 

 

The Contractor is entitled to an extension of time for any delay suffered by the Contractor due to the failure of the Owner’s obligation under this Agreement.

 

訳:コントラクターは、本契約に基づくオーナーの義務違反に起因してコントラクターが被った工程の遅延分だけ納期の延長を得ることができる。

 

ここでは、any delay suffered by the Contractorとあり、「コントラクターによって被られた遅れ」=「コントラクターが被った遅れ」となります。意味を理解する際に、ここでは遅れを被る主体がコントラクターである点にご注意ください。

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

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