英文契約書における「事前の文書による同意」と「事前の文書による通知」とは?

      2022/05/23

 

 

英文契約書を読んでいると、よく次のような表現に出会うことはないでしょうか。

 

the prior written consent

 

これは、どのような意味だと思いますか?

 

答えは、「事前の書面による同意」です。

 

では、この表現はどのような場合に出てくるのでしょうか。

 

それは、「原則としては、してはいてはいけない行為なんだけど、相手方がしていい、というなら、その場合にはしていいよ」という場合です。

 

具体例をご紹介します。

 

以下は、秘密保持契約の中によく定められる条文です。

 

“The Party A shall not disclose the confidential information disclosed by the Party B to the Party A to any third party without the Party B’s prior written consent.”

 

訳:「当事者Aは、当事者Bから開示された秘密情報を、当事者Bの事前の書面による同意なくして、第三者に開示してはならない。」

 

この条文は、以下のように原則と例外を明確にして二つの文章に分けることができます。

 

①   原則として、当事者Aは、当事者Bから開示された秘密情報を第三者に開示してはならない。

②   例外として、当事者Aは、当事者Bから、「第三者に開示してよい」という事前の書面による同意を得られれば、第三者に開示することができる。

 

ここでのポイントは、「原則として、してはいけないこと」を例外的に「してよいこと」に変えるための条件として、「当事者Bの事前の書面による同意」が求められている、ということです。

 

時々、この表現を、このように解釈する方がいます。

 

「事前の同意を得れば、「してよいこと」になるんでしょ?それなら、これは結局、「してよい」という意味なんですよね。」

 

この解釈は、間違っています。

 

この手の条文は、原則として、「してはいけない」と言っているのです。ただ、もしも契約締結後に、相手方が何らかの理由で「してもいいよ」と書面で同意してくれた、つまり、許してくれた場合のみ、「してよいこと」になるのです。ということは、もしも相手が「していいよ」と同意してくれない場合には、原則通り、「してはいけないまま」なのです。そして、この「してよい」と同意するかどうかは、相手方当事者の意思によるので、いざこちら側が「したい」と思って相手方に同意するようにお願いしても、あっさりと断られる場合も十分あるのです。

 

もっというと、この「事前の書面による同意がないとしてはいけないよ」という条文は、契約締結時点では、原則通り、ほとんどの場合に「してはいけない」と相手方は思っており、今後も許可する気はないけど、もしかしたら将来、「してよい」と許可する場合もなくはない、という場合に使われることが多いのです。

 

よって、このthe prior written consentがある条文を目にした場合には、次のように考える必要があります。

 

「この条文は、原則として「してはいけない」と言っている。当社として、その扱いでよいのだろうか?つまり、原則として「してよい」という条文に変える必要はないのだろうか?」

 

この「事前の文書による同意」が必要と定められている場合には、ぜひそれでよいのか検討するクセをつけていただければと思います。

 

ところで、the prior written consentと似た表現として、the prior written noticeというものがあります。

 

両者の違いは、consentとnoticeだけです。しかし、両者の意味は全く異なります。

 

the prior written consentは、「同意」です。つまり、「していいよ」という「許可」を意味します。

 

一方、the prior written noticeは、「通知」です。つまり、あることを「知らせるだけ」でよいのです。

 

具体例を見てみます。

 

Either Party is entitled to terminate this agreement by giving the other Party a prior written notice.

 

これは、「いずれの当事者も、相手方当事者に対して、事前の書面による通知を渡すことにより、この契約書を解除することができる」という意味です。

 

これは、単なる「通知」、つまり、「この契約を解除しますよ」という意思を相手方に知らせる文書を渡せば、解除することができます。解除することについて相手の同意を得る必要はありません。

 

このように、the prior written consentとthe prior written noticeは、見た目にはよく似た表現ですが、意味が全く異なるので、契約書中で出てきたときには、同意なのか、それとも通知なのかをよく注意して読むようにしてください。また、書く場合にも、この両者を間違って使わないように注意してください。

 

なお、the prior written consentはthe prior written agreementという表現になっている場合もありますが、両者はほぼ同じ意味だと考えていただいて問題ないと思います。厳密には、the prior written consentは、「相手方当事者の同意」の意味で、the prior written agreementは、「両当事者の合意」なので、違うと言えば違うのですが、「両当事者の合意」とは、相手方が同意しないことには成り立たないものなので、実質的には同じと考えて差し支えありません。

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

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納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

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性能未達LD

 

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コンソーシアム契約

 

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