納期遅延LDの決め方~発電所案件の一例~

      2022/05/23

EPC契約で登場するliquidated damages(LD)には、以下のようなものがあります。

 

・納期遅延LD

・性能LD

・稼働率LD

 

今回は、納期遅延LDの定め方の一例を紹介します。

 

納期遅延LDは、「請負者であるコントラクターが納期に一日遅れたら発注者であるオーナーはどれだけの損害を被るのか?」という視点で定められます。ここでは、発電所建設案件の場合を紹介します。

 

まず、発電所の建設が遅れると、その発電所の運転開始時期が遅れることになります。運転開始が遅れれば、オーナーが電気を売るのも遅れます。その結果、電気を売ることの対価を得るのが遅れます。

 

ここで、オーナーはコントラクターに支払うEPC契約の対価について銀行などの金融機関から融資を受けている場合が多いです。というのも、EPC契約の対価は莫大な金額であることが多く、オーナーの自己資金だけで賄うことは難しいためです。

 

オーナーはその融資分を銀行に返済する義務を負っていますが、その返済のための資金は発電所の運転から得られる利益です。つまり、発電所の運転が遅れれば、その分、融資を受けた金額を返済するだけの資金を得るのも遅れ、その結果、返済が遅れます。

 

そうすると、返済が遅れたことによる遅延利息をオーナーは銀行に支払わなければならなくなります。これが、納期遅延によってオーナーが被る損害の代表的なものです。

 

これはプラント建設中に生じる利息であることから、「建中利息」と呼ばれます。英語でいうと、interest during constructionで、頭文字をとって「IDC」とも呼ばれます。

 

また、発電所完成前から、その発電所から生み出される電気を購入する契約、つまり、買電契約を締結している者がいます。この者を通常、「オフテイカー」と呼びます。このオフテイカーとオーナー間の買電契約書の中には、電気が売られ始める期限が定められており、その期限までに売電が開始されない場合には、オーナーがオフテイカーに対して遅延LDを支払うことが定められていることもあります。その場合、この遅延LDも、発電所の完成が納期に遅れたことによってオーナーが被る損害となります。

 

よって、①銀行への返済遅延によって生じる遅延利息、および②オーナーがオフテイカーに対して支払う必要がある遅延LDを基準にして、コントラクターがオーナーに対して賠償する納期遅延LDの金額が算出されることになります。もしもオーナーが提示する納期遅延LDの金額がこれらよりもはるかに大きい場合には、「それは実際にオーナーが被る損害よりも高すぎる」として、より小さい金額に修正を申し入れます。

 

ここで特に気を付けたいのが、オーナーが、「納期に遅れなければ得られたはずの利益」をLDに含めてきた場合には、拒否するべきです。この利益は、逸失利益(loss of profit)と呼ばれます。逸失利益は莫大な金額になる可能性が高いです。このようなものをコントラクターが負担させられることになれば、倒産するリスクもあります。逸失利益をLD算定の根拠にしてはいけないという決まりはありませんが、コントラクターとしてはできる限り拒否するべきです。

(※逸失利益とは何か?と逸失利益に関する条文の注意点はこちら!「間接損害と逸失利益の違い」)

 

ここで、「オーナーから銀行に支払うべき遅延利息、およびオーナーからオフテイカーに支払う遅延LDはどのようにわかるのか」という疑問を持つ人もいるかもしれません。これは、オーナーに質問するのです。このような質問をして回答を得られない場合には、次のように主張します。

 

「LDは、いくらでもよいわけではありません。算定根拠がない場合、LDについて定めた条項それ自体が無効と判断される可能性もあります。無効となると、オーナーが実際に被った損害を証明しない限り我々コントラクターは賠償する必要がなくなります。」

 

LDは、「実際に生じ得る損害」に代わるものなので、何ら根拠がない金額の場合には、裁判所や仲裁は無効と判断する可能性があります。無効になったときに困るのは、コントラクターよりもむしろオーナーのほうです。そこで、上記の様に主張し、適切な納期遅延LDの金額を算定するようにオーナーに対して促すのがよいでしょう。

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

仕事関係

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メンター(教育係)に初めてなる人へ②

 

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Subject toとポツダム宣言の受諾

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歴史の本の紹介

 - EPC契約のポイント