間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

      2020/01/23

次のような条文を見たことがある人も多いでしょう。

 

The Contractor is not required to be liable to the Owner for any indirect damage in connection with this Agreement.

「コントラクター(請負者)は、オーナー(注文者)に対し、本契約に関する何らの間接損害も賠償する責任を負わない。」

 

しかし、コントラクターが上記のような条文のまま契約を結ぶのはとても危険です。というのも、この条文だと、コントラクターが最も負いたくないと考える損害について責任を負わなければならなくなり得るからです。

 

それは、「逸失利益」と呼ばれるものです。

 

例えば、火力発電所の建設案件を想定します。火力発電所を建設し、無事に検収に至り、オーナーが商業運転を開始した際に、発電所に欠陥(瑕疵)が発見されたとします。瑕疵担保期間内でれば、コントラクターはこの瑕疵を無償で修理しなければなりません。すると、発電所の運転を止めなければならなくなります。この運転を止めている期間中に、オーナーが本来であれば得られていたはずの利益が逸失利益です。つまり、「契約違反がなければ本来得られていた利益」を逸失利益と呼びます。



この逸失利益は、通常、莫大な金額になります。これをコントラクターが負担させられることになると、コントラクターは簡単に倒産してしまいかねません。コントラクターとしては、逸失利益については責任を負わない、つまり、免責されることを契約書に明記しておくべきです。

 

この点、次のように考える人もいるでしょう。

 

「間接損害=逸失利益ではないのか?上記の例文のように間接損害(indirect damage)を免責する条文があれば、逸失利益の賠償も免責されるのではないか?」



この考えは間違いです。

 

間接損害は、逸失利益を含む場合もあれば、含まない場合もあるのです。どのような場合に間接損害の中に逸失利益が含まれるのかは一概には言えません。ただ、間接損害とは、一般に、「契約違反から通常生じる損害ではないが、特別な事情が介在することで生じ得る損害」を指します。日本の民法で言えば、第416条2項に当たるものです。つまり、ある事案においてコントラクターによる契約違反からオーナーが逸失利益を被るのが「通常」であると判断できる場合には、その逸失利益は間接損害ではなく、直接損害(契約違反から通常生じ得る損害)に分類されることになるのです。

 

よって、「間接損害を免責する」と定めるだけでは、コントラクターが逸失利益を免責してもらえるのかどうかわからないのです。

 

このことから、確実に逸失利益を免責してもらうためには、「loss of profit」(逸失利益を意味する単語)についてコントラクターが責任を問われない点を契約書に明記する必要があるのです。

 

具体的には、以下の様に定めます。

 

The Contractor is nor required to be liable to the Owner for any indirect, special, consequential, incidental damage, and loss of profit in connection with this Agreement.

 

indirect damage、special damage、そしてconsequential damageは同じ意味と考えてよいですが、loss of profitはまさに逸失利益を意味しますので、これを忘れずに定めましょう。



なお、incidental damageは、損害が拡大するのを防ぐために必要となる対処を行う際に生じる費用を指します。

逸失利益・責任制限関係の記事は以下です!

逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現 間接損害と逸失利益の違い
責任制限条項① Limitation of Liabilityとは? 責任制限条項② 責任制限条項が適用されない場合

 

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