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本郷塾で学ぶ英文契約

guaranteeとは?

2023/07/21
 

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英文契約基礎から実践講座

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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37回では、「補償する」という表現をご紹介しました。

 

読みは同じですが漢字が異なる「保証」という言葉があります。

 

そしてこの「保証する」には、2つの意味があります。

 

一つは、「何かを確約する」という意味の「保証」です。

 

これは、例えば、「製品に欠陥がないことを保証する」という、いわゆる瑕疵担保責任で使われる用語です。

 

もう一つは、「保証債務を負う」という意味の「保証」です。

 

これは、みなさんがアパートを借りる場合に、両親にみなさんの賃貸料金支払い債務についての保証人になってもらった人が多いと思いますが、その保証です。

 

今回ご紹介するのは、2つめの「保証」、つまり、保証債務を負う場合の「保証」についてです。

 

 

保証債務を負うことになる場合

 

保証債務を負う場合の「保証」は、英文契約の中で頻出かと言われると、さほど頻出ではありません。

 

企業間でよく締結される契約である秘密保持契約や、売買契約といった契約の中で、保証債務についての条文は定められないのが通常だからです。

 

しかし、海外に子会社を持っている企業では、この保証は結構馴染みがあるのではないでしょうか。

 

例えば、海外の子会社が銀行からお金を借りる場合、つまり、融資を受ける場合には、その親会社が、子会社の返済債務について保証することがありますよね。

 

このように、親会社が子会社の債務を保証する場合を特に、親会社保証と呼びます。

 

銀行に対して親会社保証をする場合の方が、子会社は低金利で融資を受けられるのが一般的です。なぜなら、例え子会社が返済できなくなった場合でも、その親会社が代わりに返済することになっている方が、銀行が返済を受けられないリスクが減るので、その分金利を低く設定できるからです。

 

親会社保証が使われる他の場面としては、例えば、海外の子会社が海外でプラント建設等の比較的大きな案件を請け負った場合に、オーナー(プラント建設契約における注文者)は、請負人である子会社の親会社から、子会社の債務不履行の場合に備えて、親会社保証を提出するように求める、というものもあります。

 

このように、秘密保持契約や売買契約においては、保証債務についての条文は定められていないことが一般的ですが、上記のような融資や大型案件の場合に、保証債務を負う場合が多いと思います。

 

 

保証債務を負う場合の「保証」を表す表現

 

この場合の保証は、guaranteeという表現を使います。

 

特に親会社保証は、parent guaranteeと言います。

 

なお、「保証する」という動詞も、guaranteeです。

 

※もっとも、このguaranteeは、最近では、保証債務の場合に限らず、製品が仕様に合致していることを確約する際の「保証」の意味(つまり、上述の一つ目の保証の意味)で使われることもあるようです。

 

 

guaranteeについての注意点

 

時々、海外の子会社が、取引先からある文書を渡され、それに親会社の署名を得た上で提出するように求められることがないでしょうか?

 

その文書を見ると、どこにも、guaranteeという表現は使われていません

 

しかし、その文書の中身をよく読んでみると、「親会社は、子会社がこの契約を確実に遂行することを確認する」といったことが書かれているのです。

 

これは、親会社保証に当たるのでしょうか?

 

この点、タイトルに「parent guarantee」と書いてなければ、それは親会社保証ではない、という人が時々います。

 

しかし、それは間違いです。

 

契約書や誓約書の類は、その文書のタイトルはその法的拘束力と何ら関係ありません。

 

よって、タイトルからは到底親会社保証であるとわからないような文書でも、親会社保証となりえます。

 

一方、その文書の中にguaranteeという表現がないから、これは親会社保証ではない、と考える人もいます。

 

こちらも間違いです。

 

確かに、保証債務を負う場合の保証する、という表現には、guaranteeを使うべきです。しかし、この表現でない限り、保証債務を負うことにならない、というわけではないのです。

 

要は、実質的な中身が保証債務と判断されるものかどうか、という点が判断基準になります。

 

上記に書いたような「親会社は、子会社がこの契約を確実に遂行することを確認する」という文言がある文書に親会社が署名して相手方に提出した場合、それは、保証債務を負う誓約書である、と裁判所に判断される可能性は大す。

 

したがって、上記のような文書の提出を子会社がその客先から求められた場合には、その中身をよく検討し、ときには客先からその文書の利用目的等を確認し、不要な文書は親会社から出さないようにするようにするべきです。

 

あるいは、そのような文書を提出する場合には、親会社の社内においては、「これは保証債務を負うことになるんだ」という認識に下で、適切に社内で「保証債務を負う際に必要となる社内承認」を取るようにするべきです。この手続きを取らずに、「これは保証ではないだろう」と軽く考えて客先に提出後、子会社がその契約を履行できなくなったときに「あれは保証だった」ということになると、親会社社内でも、「どうしてそんな文書を社内承認も得ずに提出したのだ!」ということになり、最後は社内承認を取らずにその文書を提出した部門の長の責任問題に発展することにもなり得ます

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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