性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD

      2022/05/23

最低性能保証とは?

 

性能確認試験を行った結果、保証性能を満たすことができていないことが分かった場合、コントラクターはいかなる責任を負うのでしょうか。

 

修理や損害賠償だろうという予想はつきますよね。

 

今回は、この点を詳しく解説します。

 

まず、EPC契約によっては、保証性能に二つの段階がある場合があります。

 

それは、最低性能と通常の性能です。

 

最低性能とは、オーナーが、最低限、満たしてほしいと思っている性能です。

 

これを満たせないようなプラントはいらない」というラインです。

 

よって、性能確認試験を行った結果、この最低性能を満たしていない場合には、コントラクターは、修理をして、最低でも、この最低性能を満たすようにしなければなりません。

 

もしもこの最低性能を満たせないと、場合によっては、オーナーはこのEPC契約を解除する権利が与えられるのが一般的です。

 

一応動くけど、性能はからっきし、というプラントを欲しくないと思うのは当然ですよね。

 

 

最低性能を満たした場合

 

では、この最低性能を満たしたが、通常の保証性能を満たさない場合にはどうなるのでしょうか。

 

その場合には、コントラクターは、修理して保証性能を満たすようにするか、または、性能保証の未達についての予定された損害賠償金額(以下、「性能LD」)を支払うかのどちらかで対応することになります。

 

オーナーとしては、プラントが最低限の性能をクリアしているので、そのまま引き取って使う気はあるので、あとは、修理か性能LDの支払いで終わらせてもよいというわけです。

 

最低性能保証と性能保証、そして性能LDの関係を図にすると、以下のようなイメージとなります。

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選択権はどっちにある?

 

ここで重要なのは、修理か性能LDのどちらで行くかは、誰が決めるのか、という点です。

 

この点、オーナーは自分が選択権を持ちたいと思うでしょう。

 

というのは、性能LDを支払ってもらって終わりにされるよりも、修理してもらった方が長い目で見たときには採算がよい、と考えるかもしれませんし、逆に、修理を長期間されるよりは、すぐにそのプラントを使い始めることができる方がよい(性能LDの支払いで終わり)、と考えるかもしれないので、「自分で決めたい!」と思うはずです。

 

そしてそれは、コントラクターも同じです。

 

性能LDを支払うよりも、修理したほうが安く済む、と考えるかもしれませんし、その逆と考えるかもしれません。

 

よって、この選択権をどちらが持つかは当事者間の交渉となるでしょう。

 

この点、最低性能と通常の保証性能の間にもう一段階設けて、最低性能とそこまでの間の性能の場合には、コントラクターに選択権があり、それ以上の性能が出た場合には、オーナーに選択権がある(またはその逆)、という方法もあるかもしれません。図にすると以下のようなイメージです。

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性能LDもsole and exclusive remedy!

 

いずれの場合でも、性能LDを支払うことになったら、性能未達に関する損害賠償は、その性能LDの支払いだけで終わりである旨(sole and exclusive remedy)はEPC契約書に忘れずに明記するようにしてください。

 

準拠法によっては、LDの性格や扱いが日本のそれとは異なる恐れがあるので、LDを支払い、かつ実際生じた損害やLDではカバーできなかった損害分を支払わせられるようなことがないように、つまり、sole and exclusive remedyとなるようにしっかり手当することが重要です。

 

性能LDの上限の相場

 

なお、この性能LDは、私がこれまで見てきたものでは、契約金額の20%~30%程度のものが多かったです。これは業界によっても異なるでしょうから、オーナーと交渉する前に、過去の例や算定根拠を調べておくと交渉がスムーズにいくと思います。

 

ボーナス条項について

 

保証していた性能を上回る性能が出るプラントを完成させた場合、オーナーは当初の計画よりも多くの利益をそのプラントの運転によって得られるようになるかもしれません。

 

そのような場合には、オーナーはコントラクターにいくらか追加で支払うべき!というのが、ボーナス条項です。

 

これがあれば、コントラクターもできるだけよい性能が出るように頑張るインセンティブになるかもしれません。

 

しかし、私自身はボーナス条項が入っている案件を見たことがありません。

 

その理由はよくわかりませんが、保証していた性能を上回ったからと言って、必ずしもオーナーがより多くの利益を得られることになるわけではなく、その具体的な金額を算出することが困難だからなのかもしれません。

 

ENAA2010の条文(2016年11月16日追記)

 

ENAA2010にも、GC 28に性能LDについての条文が結構厚く定められています。最低性能保証を満たしていない場合と満たした場合の扱い、そして性能LDについて明記されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

仕事関係

これから法律・契約について勉強し始める社会人が陥りやすい勘違い

 

英語はある日突然聞き取れるようになるのか?

 

会社は誰のものか?

 

司法試験に落ちた後の人生とは?

 

休日を楽しめない理由とは?

 

ピカソがその絵で伝えようとしたこと

 

メンター(教育係)に初めてなる人へ①

メンター(教育係)に初めてなる人へ②

 

自分の勝因は相手の敗因にある(日露戦争から学ぶ)

 

Subject toとポツダム宣言の受諾

どうして議論がまとまらないのか?

 

歴史の本の紹介

 

 

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント