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英文契約の基本的な表現 第26回 差止

      2017/06/21

 

第26回です!

 

今回は、「差止」という表現についてご紹介したいと思います。

 

差止は、第25回の「救済」の中で少しだけ(ほんの少しだけですが・・・)お話ししました。

 

つまり、義務違反の場合に相手方に与えられる損害賠償請求権とか解除権等と同じく「救済」の一つです。

 

しかし、この「差止」は、他の救済とは大分異なる性格を持っています。

 

何が異なるかと言いますと、この差止が認められる場合は、他の救済の場合と比較して、かなり限定されているということです。

 

実は、救済は、「金銭賠償」で行うべき、という原則があります。

 

契約に違反したことによって、違反された契約当事者は損害を被りますが、それは「金銭で補填されれば十分だよね」ということです。

 

売買契約や請負契約において、瑕疵担保期間中に製品に欠陥が発見された場合には、買主は売主に対してその欠陥を修理するように求めることができるという救済がありますが、この買主による修理は無償で行われるので、実質的には、金銭での賠償と同じです。つまり、欠陥の修理も、金銭賠償の原則にかなっていると一応言えます。

 

しかし、この「差止」は、金銭的な賠償では補填できないような損害が生じえる場合に、そもそもそのような損害が生じないようにしよう、という救済方法なのです。

 

例えば、秘密保持契約において、本来秘密にしておくことが義務付けられている相手方当事者の秘密情報を勝手に第三者に漏えいしようとしたとします。もしも情報が漏えいされると、取り返しのつかないような損害を、情報のもともとの所有者は被ってしまうかもしれません。その損害は、金銭に換算しようとしても、あまりにも莫大で、また、そのような莫大な金額を、義務違反者は支払えないかもしれません。

 

そのような場合、金銭賠償の原則を貫くと、非常に不都合が生じます。つまり、「金銭で賠償すればよいでしょう」と言えない場合があるわけです。

 

そのような特殊な場合に限って裁判所は「差止」を認める、ということになっています。

 

では、この「差止」とは、英語ではどのような表現なのでしょうか。

 

stop?

 

違います。

 

suspension?(中断)

 

違います。

 

答えは、injunctionです。

 

これもあまり聞きなれない英語ではないでしょうか?

 

実はこのinjunctionという表現は、英文契約書の中でも、非常に限られた場面でしか出てきません。

 

というのも、もともとこの差止というものが救済として使われる場面が、上記に定めたように金銭的な賠償では損害をカバーしきれない恐れがある場合というように非常に限られているからです。

 

具体的には、秘密保持義務の違反に関する条文の中で出てくることが多いです。

 

以下が例文です(難しい単語がたくさん出てきますがご容赦ください)。

The Receiving Party acknowledges that the unauthorized disclosure or use of the Confidential Information would cause irreparable damages for which monetary indemnity would not be adequate remedy. Accordingly, The Receiving Party is entitled to seek and obtain an injunction enjoining breach of this Agreement or disclosure of the Confidential Information from any court of competent jurisdiction.

※irreparable:回復困難な

※enjoin:命じる

※court of competent jurisdiction:管轄権をもつ裁判所

訳:情報受領当事者は、秘密情報の不当な開示または不当な使用が金銭的な補償では十分な救済とならないであろう回復困難な損害額を生じさせることを認識している。したがって、情報受領当事者は、本契約の違反または秘密情報の開示を命じる差止を求め、そしてそれを正当な管轄権を持つ裁判所から得る権利がある。

 

秘密情報の開示についての注意点

今回、私がもっとも認識していただきたいと思うのは、上記の例文が示す通り、「情報漏えい」をされると、会社にとって金銭賠償では回復困難な損害が生じてしまうリスクがある!ということです。

 

情報を相手方に開示する際に、契約書で「漏えいしてはいけない」とか、「漏えいしたら損害賠償として○円支払う」とか定めたとしても、もしも相手方がそれでも情報を第三者に漏らした場には、自社は取り返しのつかない損害を被ってしまうかもしれないわけです。

 

ではどうすればよいのか?

 

まず、そもそも信用できなそうな相手には自社の重要な情報は開示しないことです。契約書をちゃんと結ぶんだから誰に開示してもよいだろう、ということにはならないわけです。

 

次に、その情報を開示する必要は本当にあるのか?という点をよく検討していただきたいと思います。契約書があれば大丈夫、安心、ではないわけです。一番の情報保護は、「そもそも他社に開示する必要がないものは開示しないこと」です。

 

 

では、上記のまとめです。

 

・契約違反の救済は、原則として金銭賠償である。つまり、損害賠償の支払いである。

 

・ただし、例外的に、金銭的な賠償ではカバーしきれないような損害が生じるおそれがある場合にだけ、差止が認められる。これは、裁判所が義務違反者に対して命令することで実行される。

 

・この差止は、秘密保持義務違反の場合を定める条文中に定められるのが一般的。

 

・差止は、injunctionという表現である

 

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第9回 provide

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第15回 事前の文書による合意

第16回 ~を含むが、これに限らない

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第19回 知らせる

第20回 責任

第21回 違反する

第22回 償還する

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第26回 差止

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第29回 何かを相手に渡す、与える

第30回 due

 

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