英文契約でdueとは?
第30回です!(遂に30回まできました)
今回は、dueについてお話ししたいと思います。
dueという単語は、普段はあまり目にしないかもしれませんが、「デュー」という音を聞いて、これまでの業務で何か思い出すものはないでしょうか?
「デュー・デリジェンス」という言葉は聞いたことがないでしょうか?
企業買収取引等のM&Aの前に行われる、対象となる企業の資産の調査のことを「デューデリ」とか、DDと言ったりしますが、これは「デュー・デリジェンス」のことです。このデュー・デリジェンスの結果を踏まえて買収価格を決めていくことになります。
英語で書くと、due diligenceとなります。
ここでのdueの意味は、「正当な」といったところです。
おそらく、海外営業の方が目にするdueは、これとは違う意味であることが多いと思います。
以下、例文を2つ示します。
the Purchaser shall pay the Contractor any sum due under the Contract within the period specified in the Article 5 hereof.
訳:購入者は、本契約の第5条に定められた期間内に、本契約のもとで支払期日が到来した金額をコントラクターに支払わなければならない。
the due date
訳:支払期日
ここで使われているdueは、「支払い期日が到来した」という意味になります。
そして、この他にも、英文契約書でよく使われる上記2つの意味とは異なるdueがあります。
それは、「原因」を表すdueです。
以下、例文です。
The Purchaser shall reimburse to the Contractor any additional cost incurred by the Contractor due to the Purchaser’s failure to perform its obligation under this Contract.
訳:購入者は、本契約に基づく自己の義務の履行を懈怠したことによってコントラクターに生じさせた追加費用をコントラクターに償還しなければならない。
dueを見たときの注意点
一つの単語で3つも意味があるなんて、嫌な単語ですよね。
特に、以下のような英文が現れると、一瞬考えなくてはなりません。
The Purchaser shall pay the amount due to the Contractor in accordance with the payment schedule.
ここでのdueは、おそらく、「支払期日が到来した」という意味だと思われます。最後の方に、「支払スケジュールに従って」という表現があるので、おそらくそうだとわかります。しかし、「due to」とあるために、「due to the Contractor」と捉えて、「コントラクターに原因がある」という意味に一瞬考えてしまうかもしれませんが、英文全体を見ると、これは、「支払期日が到来した金額をコントラクターに支払わなければならない」という意味になると思います。
このように、一見、「due toだから、原因という意味か?」と思ってしまう形が、英文契約中に時々出てきます。私はその都度、「ん?どっちだ?」と一瞬迷わせられるので、このdueという単語があまり好きではありません。
そのため、私は自分が契約書をドラフトする際には、「原因」を表すためには、due toよりも、because ofを使うようにしています。そうすれば、dueという単語に遭遇したときに、上記のような迷いを持つことが、少なくとも自分のドラフトした契約書においては起きません(「細かいやっちゃな~」と思われそうですが・・・)。
この点、due toの方がbecause ofよりもフォーマルな表現であり、契約書には向いているのだろうと思いますが、because ofも英文契約書中で見かけます。
なお、due toの場合には、ネガティブな原因を表し、because ofの場合には、ネガティブでもポジティブでも両方表すために使われているようです。
今日のまとめ
dueを見たら、以下の意味のどれなのか、文脈から注意して判断しましょう!
- 正当な
- 支払期日が到来した
- 原因
-
目次 第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる 第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任 第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する 第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する 第22回 償還する
第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD) 第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失 第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済 第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止 第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise 第28回 契約の終了
第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息 第29回 何かを相手に渡す、与える
第39回 保証する 第49回 重大な違反 第30回 due
第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現 第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料 第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任 第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して 第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の 第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力 第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event 第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of 第58回 無効な 第68回 representations and warranties 第59回 whereについて 第69回 material adverse effect 第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of 第61回 株主総会関係 第71回 GAAP 第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants 第63回 indemnifyとdefendの違い 第64回 Notwithstandingと責任制限条項 第65回 M&Aの全体の流れ 第66回 conditions precedent 第67回 adjustment
【私が勉強した参考書】