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「強制執行力」を表す表現 英文契約の基本的な表現 第55回

      2017/06/21

今回は、「強制執行力」を意味する表現についてご紹介します。

 

「強制執行力」とは何か?

 

強制執行とは、一体何なのでしょうか?

 

強制」は、無理矢理、といった意味ですよね。

 

執行」は、例えば、「刑の執行」という言葉を聞いたことがあると思います。つまり、「何かを実行すること」といった程度の意味でしょうか。

 

となると、「強制執行」とは、「無理矢理何かを実行すること」という意味でしょうか・・・。

 

実は、「強制執行」とは、次のような意味です。

 

債務名義にあらわされた私法上の請求権の実現に向けて国が権力(強制力)を発動し、真実の債権者に満足を得させることを目的とした法律上の制度

 

「・・・難し!」

 

 

と思われた方も多いと思いますので、具体例を用いてご説明したいと思います。

 

今、あなたと私の間で、ある物の売り買いについての契約、売買契約を締結したとします。

 

あなたが売主、私が買主とします。

 

あなたは、ちゃんと、契約書に定められている納期までに私にその製品を渡してくれました。

 

契約書によると、私は製品を引き渡された時点で代金を支払わなければならないことになっていました。

 

しかし、私は、「今はお金がない」といって、代金を支払いませんでした。

 

そして、そのまま、数ヶ月間代金を支払わずにいます。

 

あなたは、「いい加減、払え!」と私に対して思います。当然ですよね。

 

しかし、私は、あなたからの度重なる請求をことごとく無視しました。というのも、払いたくなくなってしまったから。そりゃ、お金くらいあります。でも、払いたくなくなったんです。このままずっと電話もメールも無視して、家に直接来た時には居留守を使って、あなたがあきらめるのを待とう!と固く決心したんです。

 

さて、ここで、あなたは何をすることができるでしょうか?

 

警察に言う?

 

いや、たぶん、警察はこういう時、何もしてくれないと思います。

 

というのも、私は罪を犯したわけではないですから。

 

その代わり、警察はたぶんこう言ってくれるかもしれません。

 

そういうのは、弁護士に相談した上で、民事裁判所に訴えるものだよ」と。

 

そこであなたは、弁護士に相談し、民事裁判所に訴えました。

 

その結果、確かにあなたの主張は正しいことがわかり、裁判所は、私に対して、「製品の代金と、これまでの遅延利息分を支払え」という判決を下しました。

 

めでたし、めでたし・・・。

 

と、思いきや、私は、判決をも無視することに決めました。

 

「裁判所が何?関係ねえや。裁判所で「支払え」と確かに言われたけど、俺は人の言うことを簡単に聞くような人間じゃあないんだ!」という気持ちです。これまでもあなたからのメールも電話も、直接の訪問も無視してきました。それが裁判所の判決になっても同じです。

 

さて、私がこのような態度をとったら、どうなるのでしょうか?

 

このような、裁判所の判決をも無視するような人には、もはや、誰が何を言っても無駄です。

 

そう。言葉で言ってもいうことをきかない人には、昔から、力ずくで行くしかありません

 

この場合は、裁判所が、執行官という人たちを私の家に行かせ、その執行官が私の家にずかずかと入り込み、金目の物を探して、それを持ち出し、競売にかけていくらかにして、そこからあなたに代金分をあげるのです。

 

これが、「強制執行」です。

 

そして、この強制執行をすることができる力を「強制執行力」と言います。

 

 

強制執行力の重要性

 

小学校の時に、どんなに先生に注意されても悪ふざけをやめない生徒がクラスには何人かいるものです。

 

そういう人は、「先生に言いつけてやる」、と言われようが、親から怒鳴りつけられようが、関係ないのです。

 

そして、社会には、それがもっとエスカレートして、裁判所の判決をも無視する人がいたり、会社があるのです

 

そういう人たちや会社に無理矢理いうことをきかせる、結果的に従わせる、それが、強制執行なのです。

 

これがないと、世の中のルールを守らない人に契約を守らせることができません。

 

その意味で、「強制執行」は、最後の手段ではあるものの、これがないと、不誠実な債務者に、「契約に違反してもいいや」と思われてしまう大事なものです。

 

そして、この「強制執行力」は、「法的拘束力」と言われるものとほぼ同義です。

 

法的拘束力がある合意」とは、つまり、「義務を果たそうとしない債務者に、強制執行することができる契約書」ということです。

 

そして、「法的拘束力のない合意」は、つまり、契約違反をしても、強制執行をすることができない約束、という意味です。つまり、ただの紙っぺら、ということになります。

 

 

強制執行力を意味する表現

 

これは、enforceabilityと書きます。

 

また、「強瀬執行力のある」という形容詞は、enforceableと書きます。

 

そして、「強制執行力がない」は、unenforceableと書きます。

 

ちなみに、「法的拘束力のある」は、bindingで、その逆の意味、つまり、「法的拘束力のない」はnon-bindingです。

 

下の条文は、一般条項の一つで「分離条項」と呼ばれるものです。

 

実は、英文契約書で、「強制執行力」という表現は、この条文以外でほとんど出てきません。では、なぜ今回そのような滅多に出てこない文言をご紹介したのかと言いますと、「強制執行力(法的拘束力)があることが、契約書の本質だ。強制執行力(法的拘束力)があるからこそ、最終的に約束が守られることになる」という点を理解していただきたかったからです。

 

条文:

If any of the provisions contained in this Agreement is declared invalid, illegal, or unenfoceable in any respect under any applicable law, then the validity, legality, and enforceability of the remaining provisions contained in this Agreement is not in any way affected or impaired.

 

訳:

本契約の一部の条項が、法律により無効、違法、または執行不能と判断された場合でも、本契約上のその他の条項の有効性、合法性または執行力は何らの影響も受けない。

「添付資料」を表す表現 英文契約の基本的な表現 第51回

連帯責任~英文契約の基本的な表現 第52回~

「~を代理して」 英文契約の基本的な表現 第53回

「下記の」「上記の」という表現 英文契約の基本的な表現 第54回

「強制執行力」を表す表現 英文契約の基本的な表現 第55回

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for the avoidance of doubt 英文契約の基本的な表現 第57回

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英文契約の基本的な表現 第59回~whereについて~

 

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 - 英文契約の基本的な表現の習得