連帯責任~英文契約の基本的な表現 第52回~

      2019/11/16

今回は、「連帯責任」を意味する表現についてご紹介したいと思います。

 

連帯責任とは?

 

具体例を用いて説明したいと思います。

 

今、あなたの会社A社と、他の会社B社が、会社Cに対して契約上、連帯責任を負っているとします。

 

このとき、会社Bの原因で、会社Cに対して損害を生じさせてしまった場合、会社Cは、いかなる請求をすることができるでしょうか?

 

まず、会社Cが会社Bに対してその損害の賠償を請求できるのは当然でしょう。

 

これに加えて、会社Cは、何ら落ち度がないあなたの会社Aにも、その損害の賠償を全額請求することができるのです。

 

ここで、会社Aも会社Bも、どちらも会社Cからの請求に応じなかったとします。

 

すると、遅延損害として、利息が生じます。

 

これも会社Aと会社Bはどちらも会社Cに支払わないといけなくなります。

 

そして、①会社Aまたは会社Bのどちらかが会社Cに生じた損害全額+遅延利息分を支払うか、または、②会社Aと会社Bの両方の支払いの合計額が会社Cの損害全額+遅延利息分に到達すれば、会社Aと会社Bは会社Cへの連帯責任を果たしたことになります。

 

つまり、会社Cとしては、会社Aでも会社Bでもどちらでもよいが、とにかく、被った損害と遅延利息を全額支払ってもらえることになる、というのが連帯責任です。

 

一方、会社Aと会社Bの立場から見ると、自分が悪くなくても、連帯責任を負っている以上、会社Cに対しては責任を免れない、ということになります。

 

もっとも、例えば、会社Aが、自分たちに何ら落ち度がないのに、会社Bの原因で会社Cに生じさせた損害を賠償した場合、その後、会社Aはその賠償金額を会社Bに対して請求することができます。これを求償と言います。これによって、最終的には、何ら落ち度がない会社Aは、会社Cに対して支払った分を会社Bから取り戻すことができるようになります。そして会社Bは、間接的にではありますが、会社Cに対して賠償したのと実質的には同じ状態になります

 

つまり、連帯責任によって得をするのは、債権者である会社Cです。会社Aと会社Bの両方に全額の賠償を求めることができるようになるからです。

 

一方、連帯責任によって、一番面倒な立場に立つのは、何ら落ち度がない会社Aです。なぜなら、自分は何も悪くないのに、一旦は会社Cに対して賠償しないといけない立場に立たされるからです。「いや、その損害を生じさせたのは、会社Bなんです!」という言い訳は。連帯責任を負っている以上、会社Cには通用しないのです。

 

 

コンソーシアム

このような連帯責任を負うことになる契約の例として最も典型的なのは、コンソーシアム、つまり、共同企業体を構成する場合です。

 

例えば、プラント建設案件において、あなたの会社Aと会社Bがコンソーシアムを構成して、オーナーである会社Cとプラント建設契約を締結したとします。

 

この場合、プラント建設契約の契約当事者は、オーナーである会社Cと、会社Aと会社Bで構成したコンソーシアムです。

 

ここで会社Aはプラントを構成する主要機器を供給する役割を、一方、会社Bはプラントの建設をする役割を負っていたとします。

 

この時、会社Bによる建設工事が遅れて、結局プラントの完成が遅延した場合、納期遅延の損害が会社Cに生じます。

 

会社Cは、この損害を、会社Aにも、会社Bにも、同時に、それぞれに対して全額請求することができます

 

 

連帯責任を負う場合の注意点

 

上記を理解していただけた方の中には、こう思う方もいらっしゃるでしょう。

 

「連帯責任といっても、結局は、本来のあるべき姿に落ち着くじゃないか。つまり、落ち度がない会社Aが一時的に債権者である会社Cに賠償した後、実際に落ち度があった会社Bに対して求償できるんだから」

 

これは確かに正しい理解です。

 

ただ、一つ意識していただきたいのは、「会社Aが会社Cに賠償後、会社Bが、例えば倒産した場合、会社Aは会社Cに対して支払った金額を回収できなくなる」ということです。

 

もちろん、この場合、会社Aは会社Cに対して何も請求できません。

 

結局、何ら落ち度がなかった会社Aが会社Cに賠償して終わり、という結果になることもあるのです。

 

このことから、連帯責任を負う場合、具体的にはコンソーシアムを組むような場合には、「本当にそのパートナーは、最後まで、落ち度なく仕事を完成させるだけの能力があるのか?仮に何か落ち度があり、債権者に損害を生じさせた場合でも、その損害を全額賠償できるだけの資力があるのか?」ということを確認する必要があります。

 

決して、「自分たちの役割部分だけしっかりやれば、あとはパートナー企業の役割なんだから、パートナー企業が失敗しようがどうなろうが関係ない!」と考えてはいけません。そして、案件を採るために、実績も資力もない会社と大型案件を受注するということには、充分注意しなければなりません。

 

 

連帯責任を表す表現

 

これは、joint and several liabilityとか、joint and several responsibilityと書きます。

 

副詞的に使う際は、jointly and severallyです。

 

以下例文です。

 

The Company and the Company B shall be jointly and severally liable to the Company C for the Works under this Agreement.

 

訳:会社Aと会社Bは、本契約に基づく仕事について、会社Cに対して、連帯して責任を負わなければならない。

 

なお、コンソーシアムについての詳しい解説は、以下にありますので、ご興味のある方は読んでみて下さい。

コンソーシアムについて

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得