責任上限と逸失利益のどちらが重要か?(その②~修理費用と責任上限条項~)

   

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案件を受注する際に負う最大リスクはいくらか?

 

この契約は、責任上限が契約金額の100%なので、最悪の場合でも、トントンであるから、リスクを負ってでも受注した方がよい

 

この発言に含まれている注意すべき点の2つ目は、「この案件を受注することで生じるリスクが、最悪でも契約金額の100%で収まると考えている点」です。

 

これは、前回解説した1つ目の問題点(こちらをご参照)よりもわかりにくいかもしれません。

 

修理費用と責任上限条項

例えば、売買契約において、売買の対象となる製品を売主が製造したとします。

 

実際にちゃんと動くか試験を行った結果、不合格となりました。

この場合、売主は、仕様を満たす性能が出るように修理・交換しなければなりません。

 

この修理・交換のためには、当然、費用がかかります。

 

では、この修理・交換を何度か繰り返すうちに、その追加費用の合計額が契約金額の100%を超えたとしましょう。

 

さて、この場合、売主は、契約金額の100%を超えた分について、買主に「責任上限を超えたから、超えた分は買主が負担してください」と言えるでしょうか?

 

もしかすると、「責任上限が契約金額の100%であると定められているのなら、売主はそのように買主に請求できる」と考えた方もいるかもしれません。

 

しかし、それは誤りです。

 

理由は、「責任上限は、相手方に対する損害賠償責任を制限するものに過ぎないから」です。

 

試験に合格しなかった製品を修理・交換するために生じる費用は、売主から買主に支払われる損害賠償ではありません

 

売主は、買主に対して仕様に合致する製品を引き渡す義務を負っています。

上記の修理・交換は、その売主の義務を遂行するために必要な費用に過ぎず、売主から買主に支払われる損害賠償の支払ではありません。

 

よって、上記のような「未だ仕様を満たしておらず、検収に至っていない製品を修理・交換するために生じる費用は、売主が無制限に負担しなければならない」のです。

と考えると、「最悪の場合でも、契約金額の100%までの責任を負うのだから、トントンである」という発言は、大分誤った認識を周りの人々に与える可能性を秘めていることがわかると思います。

 

つまり、契約金額の100%に制限されているのは、相手方に対する損害賠償責任のみであり、上記の例に示したような「製品を完成させるために生じる費用については、売主が無制限に負う」という点を見落とす、または忘れさせてしまう発言と言えます。

 

売主や請負人がある案件を受注する際には、それを完成させるために売主が負うリスクは、理論上、上限なしであるのです。

 

責任上限もこの完成義務については意味を持ちません。

 

よって、「自社にとってやり切れない案件は受注すべきではない」という結論が導かれるべきなのです。

 

責任上限に関しては、前回の記事とここで紹介した点がよく勘違いされるので、十分に気を付けるようにしてください。

 

続きはこちら

 - 和文の売買契約