実務で必要なスキルを24時間どこにいても学べる!

本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約のprior written consentとprior written notice

2024/02/21
 

▶4/30(火)まで、今年の春から企業法務部で働くことになった方や企業法務部の若手の方々に向けて、本郷塾にて単体でご提供している英文契約の講座から、秘密保持契約や売買契約など、企業法務部ならどなたでもかかわることになると思われる9つの講座(講義時間は合計約37時間)をお得なセット割でご提供いたします。詳しくは、こちらをご覧ください。

英文契約基礎から実践講座

この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

英語の契約書を読んでいると、prior written consentprior written noticeといった表現に遭遇することがあります。

この2つは、似ていますが、異なる意味です。

ここでは、この2つの表現の意味と注意点について初心者の方にもわかるように、詳しく解説いたします!

prior written consentの意味

the prior written consentは、「事前の書面による同意」という意味です。

 

では、この表現はどのような場合に出てくるのでしょうか。

 

それは、「原則としては、してはいてはいけない行為なんだけど、相手方がしていい、というなら、その場合にはしていいよ」という場合です。

 

具体例をご紹介します。

 

以下は、秘密保持契約の中によく定められる条文です。

 

“The Party A shall not disclose the confidential information disclosed by the Party B to the Party A to any third party without the Party B’s prior written consent.”

 

訳:「当事者Aは、当事者Bから開示された秘密情報を、当事者Bの事前の書面による同意なくして、第三者に開示してはならない。」

 

なお、prior written consentは、prior written approvalとしても同じ意味です。

 

prior written consent/approvalの注意点

この条文は、以下のように原則と例外を明確にして二つの文章に分けることができます。

 

①   原則として、当事者Aは、当事者Bから開示された秘密情報を第三者に開示してはならない。

②   例外として、当事者Aは、当事者Bから、「第三者に開示してよい」という事前の書面による同意を得られれば、第三者に開示することができる。

 

ここでのポイントは、「原則として、してはいけないこと」を例外的に「してよいこと」に変えるための条件として、「当事者Bの事前の書面による同意」が求められている、ということです。

 

時々、この表現を、このように解釈する方がいます。

 

「事前の同意を得れば、「してよいこと」になるんでしょ?それなら、これは結局、「してよい」という意味なんですよね。」

 

この解釈は、間違っています。

 

この手の条文は、原則として、「してはいけない」と言っているのです。

ただ、もしも契約締結後に、相手方が何らかの理由で「してもいいよ」と書面で同意してくれた、つまり、許してくれた場合のみ、「してよいこと」になるのです。

ということは、もしも相手が「していいよ」と同意してくれない場合には、原則通り、「してはいけないまま」なのです。

そして、この「してよい」と同意するかどうかは、相手方当事者の意思によるので、いざこちら側が「したい」と思って相手方に同意するようにお願いしても、あっさりと断られる場合も十分あるのです。

 

もっというと、この「事前の書面による同意がないとしてはいけないよ」という条文は、契約締結時点では、原則通り、ほとんどの場合に「してはいけない」と相手方は思っており、今後も許可する気はないけど、もしかしたら将来、「してよい」と許可する場合もなくはない、という場合に使われることが多いのです。

 

よって、このthe prior written consentがある条文を目にした場合には、次のように考える必要があります。

 

「この条文は、原則として「してはいけない」と言っている。当社として、その扱いでよいのだろうか?つまり、原則として「してよい」という条文に変える必要はないのだろうか?」

 

この「事前の文書による同意」が必要と定められている場合には、ぜひそれでよいのか検討するクセをつけていただければと思います。

prior written notice

ところで、the prior written consentと似た表現として、the prior written noticeというものがあります。

 

両者の違いは、consentとnoticeだけです。しかし、両者の意味は全く異なります。

 

the prior written consentは、「同意」です。つまり、「していいよ」という「許可」を意味します。

 

一方、the prior written noticeは、「通知」です。つまり、あることを「知らせるだけ」でよいのです。

 

具体例を見てみます。

 

Either Party is entitled to terminate this agreement by giving the other Party a prior written notice.

 

これは、「いずれの当事者も、相手方当事者に対して、事前の書面による通知を渡すことにより、この契約書を解除することができる」という意味です。

 

これは、単なる「通知」、つまり、「この契約を解除しますよ」という意思を相手方に知らせる文書を渡せば、解除することができます。解除することについて相手の同意を得る必要はありません。

 

このように、the prior written consentとthe prior written noticeは、見た目にはよく似た表現ですが、意味が全く異なるので、契約書中で出てきたときには、同意なのか、それとも通知なのかをよく注意して読むようにしてください。また、書く場合にも、この両者を間違って使わないように注意してください。

 

なお、the prior written consentはthe prior written agreementという表現になっている場合もありますが、両者はほぼ同じ意味だと考えていただいて問題ないと思います。厳密には、the prior written consentは、「相手方当事者の同意」の意味で、the prior written agreementは、「両当事者の合意」なので、違うと言えば違うのですが、「両当事者の合意」とは、相手方が同意しないことには成り立たないものなので、実質的には同じと考えて差し支えありません。

これを覚えれば英文契約をずっと読みやすくなる!英単語レベル2

1.「契約を締結する」

2.契約締結日と発効日の違い

3.「~を履行する」

4.「費用を負担する」

5.例示列挙(非制限列挙)

6.事前の通知と事前の同意

7.「添付資料

8.英文契約でwhereとは?

9.「in which case/event」とは?

10.「契約の終了」

英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!レベル1

英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。

hereto/hereof/herein/hereinafterやthereof/thereby/thereafterなど

shall 義務

shall not 禁止

may 権利

if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現

unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現

otherwise「別途」を表す表現

notwithstanding ~にかかわらず

regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現

to the extent ~の範囲で

pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現

provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現

however provided that 「ただし」を表す表現

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。
この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 本郷塾で学ぶ英文契約 , 2016 All Rights Reserved.