英文契約の基本的な表現 第46回 証明責任

      2017/06/21

証明責任とは何か?

 

「証明責任」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

証明責任とは、その名の通り、ある事実について証明する責任です。

 

ある事実が実際にあったということについて証明責任を負っている当事者が、もしもそれを裁判で証明できない場合にはどうなるのかといいますと、その事実はなかったものとして扱われます。

 

その場合、その事実があるということを条件としている法律効果が認められないことになります。

 

具体例を使ってみます。

 

次のような条文があったとします。

 

「売主は、保証期間中に本製品に瑕疵が発見された場合には、本製品を無償で修理しなければならない。」

 

これは、簡単に言うと、「瑕疵があれば、売主は無償で修理する」ということです。

 

ここで、「瑕疵があること」が「売主が無償で修理する」という効果を得るための条件です。

 

ここで、通常、証明責任は誰にあるかと言いますと、原則として、「その事実を証明できないと不利益を被る当事者」とされています。

 

つまり、上記の例だと、「瑕疵があること」を証明できないと売主に無償で修理してもらえないという不利益を被ることになる買主になります。

 

この点、条文には、「買主が証明責任を負う」なんてことはどこにも定められていません。

 

しかし、上記のように、「この条文のもとでは、証明できないと不利益を被るのは誰か?」を考えることで、誰が証明責任を負うことになるのかは大体わかることになっています。

 

そして、この証明責任のポイントは、「その事実があるのかないのかわからない」という場合には、その証明責任を負う当事者にとって不利益となる判断が下されるということです。

 

上記の例だと、「瑕疵があるのかないのかよくわからん!」(事実があることを証明できないし、一方で、事実がない、ともはっきりとは言えない)という場合には、「瑕疵はない」と判断されます。結果として、売主は製品を修理する義務を負わないことになります。

 

証明責任という表現は英文契約書に出てくるのか?

 

この点、「証明責任」という文言は、滅多に出てこないといってよいと思います。

 

というのも、先ほど説明したように、契約書の条文には、いちいち、「この事実については、証明責任は買主が負うよ」とかは定められていないのが通常です。

 

そんなことを定めなくても、問題になる条文を読めば、「その事実の有無を証明できないことで不利益を被る当事者はどちらなのか?」ということがわかるようになっているのです。

 

よって、「通常、証明責任という言葉は、契約書には出てこない」と考えてよいと思います。

 

逆に、もしも出てきたら、そのときはその条文を注意して読んだ方がよいという印です。

 

なぜなら、本来契約書で「この事実についての証明責任は誰にある」という定めを書かなくても、自ずと証明責任が決まるはずなのに、あえて誰に証明責任があるのかを明記しているということは、それは、相手方が、「証明責任の転換」を図ろうとしている可能性があるからです。

 

つまり、本来は買主に証明責任のある事実について、契約書で「売主が証明しなければならない」と定めることで、証明責任を買主から売主に押し付けようとしている可能性が考えられます。

 

そのため、もしも契約書で「証明責任」が定められている条文があったときは、「そもそも、そこで問題になる事実の証明責任は自分たちにあるものなのかどうか?」を考えるようにしたほうがよいです。

 

もしも、本来自分たちが証明責任を負う事実が問題にされているのであれば、単に証明責任の所在を明確化しようとしているだけということになるので、修正や削除を申し入れる必要はないかもしれません。

 

一方、本来は自分たちが証明責任を負わない事実について、自分たちが証明責任を負うことになるような定めがある場合には、相手方に修正を申し入れる必要があるでしょう。

 

その意味で、「証明責任」を表す表現は知っておいた方がよいと思います。

 

証明責任を表す表現

 

「証明責任」は、burden of proofという表現です。

 

burdenは責任、proofが証明という意味です。

 

また、「証明する」は、proveという動詞です。

 

この他に、demonstrateという表現を使うこともあります。

 

よって、以下のような表現が契約書中にあったら注意が必要です。

 

A shall bear the burden of proof

 

A shall prove SV…

 

A shall demonstrate SV…

 

目次

第1回 義務

第2回 権利

第3回 禁止

第4回 ~に定められている、~に記載されている

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足)

第6回 ~に従って

第7回 ~に関わらず

第8回 ~でない限り、~を除いて

第9回 provide

第10回 ~に関する

第11回 ~の場合

第12回 ~の範囲で、~である限り

第13回 契約を締結する

第14回 契約締結日と契約発効日

第15回 事前の文書による合意

第16回 ~を含むが、これに限らない

第17回 費用の負担

第18回 努力する義務

第19回 知らせる

第20回 責任

第21回 違反する

第22回 償還する

第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)

第24回 故意・重過失

第25回 救済

第26回 差止

第27回 otherwise

第28回 契約の終了

第29回 何かを相手に渡す、与える

第30回 due

英文契約書の基本的な表現 第31回 英文契約書における「瑕疵(defect)」が発見された場合の救済方法の表現

英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

英文契約書の基本的な表現 第33回 「~を履行する」

英文契約の基本的な表現 第34回 果たす、満たす、達成する

英文契約の基本的な表現 第35回 累積責任

英文契約の基本的な表現 第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現

英文契約の基本的な表現 第37回 補償する・免責する

英文契約の基本的な表現 第38回 権利を侵害する

英文契約の基本的な表現 第39回 保証する (guarantee)

英文契約の基本的な表現 第40回 品質を保証する(warranty)

英文契約の基本的な表現 第41回 補償・保証債務の負担・品質の保証の表現のまとめ

英文契約の基本的な表現 第42回 「排他的な」という表現 その1

第43回 「排他的な」を表す表現 その2 他社と組まない

第44回 「排他的な」を表す表現 その3 唯一の責任・救済

英文契約の基本的な表現 第45回 売買・請負契約の保証に関する条文における「瑕疵がない」「仕様書に合致している」という表現

英文契約の基本的な表現 第46回 証明責任

 

 

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