納期遅延に伴って生じる追加費用の請求
納期延長と追加費用の関係
コントラクターの原因でない事象(例えば、Force Majeureや法令変更など)が発生して、クリティカルパス上の仕事に遅れが生じました。
この場合、納期に間に合わなくなります。
コントラクターとしては、契約書に定められている手続きに従って、いわゆる納期延長クレーム(EOTクレーム)をオーナーに対して行うことになります。
ここで、納期延長が認められる場合、コントラクターはそれだけで安心してよいでしょうか?
確かに、納期が延長されれば、コントラクターは納期に遅れることで生じる納期遅延LDの支払義務を免れることになります。
これは、納期延長クレームをすることでコントラクターが得られる果実の1つではあります。
しかし、忘れてはならないのは、工事の完成時期が遅れるということは、コントラクターに追加費用が生じるということです。
具体的にどのような費用が生じるのか見てみましょう。
Site Establishment Cost
まず、①サイトに予定よりも長く滞在しなければならなくなったことで生じる費用が考えられます。
例えば、
・サイトの建設機材のレンタル費用
・サイトで使用していたレンタルカーの費用
・仮説設備のレンタル費用
・工事監督者などの人件費
です。
これらは、●円(ドル・ユーロなど)/日という形で算定できるものであるはずです。
よって、もしも納期が10日遅れるなら、この10倍、20日遅れるなら、20倍の費用が生じることになります。
ボンド手数料
忘れがちなのが、ボンド発行手数料です。
ボンド、たとえば履行保証ボンドは、通常、検収時にオーナーから返還される、またはボンド保証料が減額されることになっているのが通常です。
そして、このボンドの発行手数料をコントラクターがボンド発行銀行に支払っていますが、これは、予めボンドの期限を定めており、それに基づいて決められているはずです。
よって、検収日が後ろに行けば行くほど、コントラクターが銀行に支払わなければならないボンド手数料は増えます。
保険料
これと似たものに、保険料があります。
EPC契約では、工事保険や第三者賠償責任保険などをつけているはずです。
そして、その保険料をコントラクターが保険会社に支払っていることもよくあることでしょう。
この保険も、期間が予め検収日までとされているはずです。
とすれば、この検収日がズレれば、それだけ保険会社に支払うべき保険料は増えていきます。
したがって、この保険料も、納期遅延に伴って生じる追加費用といえます。
遅延利息
さらに、次のようなものも考えられます。
一般に、検収時に比較的大きな契約金額が支払われる仕組みになっていることが多いと思われます。
しかし、検収が後ろにズレたことで、コントラクターがオーナーから契約金額の支払を受けるのもその分遅れることになります。
これにより、コントラクターがキャッシュ不足となり、銀行から資金の融資を受けなければならなくなることもあるでしょう。
すると、当然、コントラクターは銀行に利息を支払わなければならなくなります。
この利息分も、元はといえば、納期延長に伴って生じたといえます。
まとめ
以上をまとめると、納期が延びることで、以下の様な費用が追加で生じることになります。
・サイトで生じる費用
・ボンド費用
・保険料
・対価未払い分の利息
もちろん、法令変更によって、設計から作業をやり直さなければならなくなり、さらには使用する材料も増えるという場合には、それらの費用も生じます。
これらは、Direct Cost(直接費)と呼ばれています。
ただ、これは、工事の完成が遅れることで生じる費用ではありません。
(※遅れるから材料費が増えるわけではないですよね?)
純粋に「工事の完成が遅れることで生じる費用」というくくりで整理すると、上記4つが代表的なものとなります。
このような費用を単に追加費用(additional cost)と呼ぶこともありますが、特にprolongation costと呼びます。
prolongationとは、「延長」という意味です。
そして、このprolongation costをコントラクターは納期延長クレームと共に、オーナーに対して請求していくことになります。
もっとも、実は、更にコントラクターに生じる損失があります。
それは、本社経費と逸失利益です。
これは上記に示したprolongation costとはやや異なる配慮が必要になりますので、次回の記事で解説いたします。
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