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英文契約で「証明責任」(burden of proof)とは?

2024/01/13
 

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証明責任とは何か?

 

「証明責任」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

証明責任とは、その名の通り、ある事実について証明する責任です。

 

ある事実が実際にあったということについて証明責任を負っている当事者が、もしもそれを裁判で証明できない場合にはどうなるのかといいますと、その事実はなかったものとして扱われます。

 

その場合、その事実があるということを条件としている法律効果が認められないことになります。

 

具体例を使ってみます。

 

次のような条文があったとします。

 

「売主は、保証期間中に本製品に瑕疵が発見された場合には、本製品を無償で修理しなければならない。」

 

これは、簡単に言うと、「瑕疵があれば、売主は無償で修理する」ということです。

 

ここで、「瑕疵があること」が「売主が無償で修理する」という効果を得るための条件です。

 

ここで、通常、証明責任は誰にあるかと言いますと、原則として、「その事実を証明できないと不利益を被る当事者」とされています。

 

つまり、上記の例だと、「瑕疵があること」を証明できないと売主に無償で修理してもらえないという不利益を被ることになる買主になります。

 

この点、条文には、「買主が証明責任を負う」なんてことはどこにも定められていません。

 

しかし、上記のように、「この条文のもとでは、証明できないと不利益を被るのは誰か?」を考えることで、誰が証明責任を負うことになるのかは大体わかることになっています。

 

そして、この証明責任のポイントは、「その事実があるのかないのかわからない」という場合には、その証明責任を負う当事者にとって不利益となる判断が下されるということです。

 

上記の例だと、「瑕疵があるのかないのかよくわからん!」(事実があることを証明できないし、一方で、事実がない、ともはっきりとは言えない)という場合には、「瑕疵はない」と判断されます。結果として、売主は製品を修理する義務を負わないことになります。

 

証明責任という表現は英文契約書に出てくるのか?

 

この点、「証明責任」という文言は、滅多に出てこないといってよいと思います。

 

というのも、先ほど説明したように、契約書の条文には、いちいち、「この事実については、証明責任は買主が負うよ」とかは定められていないのが通常です。

 

そんなことを定めなくても、問題になる条文を読めば、「その事実の有無を証明できないことで不利益を被る当事者はどちらなのか?」ということがわかるようになっているのです。

 

よって、「通常、証明責任という言葉は、契約書には出てこない」と考えてよいと思います。

 

逆に、もしも出てきたら、そのときはその条文を注意して読んだ方がよいという印です。

 

なぜなら、本来契約書で「この事実についての証明責任は誰にある」という定めを書かなくても、自ずと証明責任が決まるはずなのに、あえて誰に証明責任があるのかを明記しているということは、それは、相手方が、「証明責任の転換」を図ろうとしている可能性があるからです。

 

つまり、本来は買主に証明責任のある事実について、契約書で「売主が証明しなければならない」と定めることで、証明責任を買主から売主に押し付けようとしている可能性が考えられます。

 

そのため、もしも契約書で「証明責任」が定められている条文があったときは、「そもそも、そこで問題になる事実の証明責任は自分たちにあるものなのかどうか?」を考えるようにしたほうがよいです。

 

もしも、本来自分たちが証明責任を負う事実が問題にされているのであれば、単に証明責任の所在を明確化しようとしているだけということになるので、修正や削除を申し入れる必要はないかもしれません。

 

一方、本来は自分たちが証明責任を負わない事実について、自分たちが証明責任を負うことになるような定めがある場合には、相手方に修正を申し入れる必要があるでしょう。

 

その意味で、「証明責任」を表す表現は知っておいた方がよいと思います。

 

証明責任を表す表現

 

「証明責任」は、burden of proofという表現です。

 

burdenは責任、proofが証明という意味です。

 

また、「証明する」は、proveという動詞です。

 

この他に、demonstrateという表現を使うこともあります。

 

よって、以下のような表現が契約書中にあったら注意が必要です。

 

A shall bear the burden of proof …

 

A shall prove SV…

 

A shall demonstrate SV…

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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