in no eventとunder no circumstances 英文契約の基本的な表現 第56回

      2017/06/18

今回は、英文契約書の中でよく見かける、「in no event」と「under no circumstances」という表現についてお話ししたいと思います。

 

まず、次の例文を見ていただきたいと思います。

 

The Seller shall in no event be liable to the Purchaser for loss of profit or for any indirect, special or consequential loss or damages suffered by the Purchaser due to the Seller’s breach of the Contract.

 

訳:売主は、売主の本契約の違反によって買主が被った逸失利益、間接損害、特別損害、結果損害について決して責任を負うものではない

 

ここのin no eventは、「決して~でない」という意味です。

 

つまり、否定を強調しているのです。

 

では、もしも上記の条文が、次のようなものであったらどうでしょうか?

 

The Seller shall not be liable to the Purchaser for loss of profit or for any indirect, special or consequential loss or damages suffered by the Purchaser due to the Seller’s breach of the Contract.

 

最初の例文のin no eventの部分を単なるnotに置き換えただけです。

 

訳すと、「売主は、自己の本契約の違反によって買主が被った逸失利益、間接損害、特別損害、結果損害について責任を負うものではない。」となります。

 

2つの日本語訳を比較すると、「決して」という文言がなくなっただけです。

 

ここで問題です。

 

上記2つの条文は、法的な効果に違いがあるのでしょうか

 

 

 

答えは、「違いはない」です。

 

「決してない」と「ない」は、法的には同じ意味なのです。

 

「決してない」は例外を一切認めない意味であり、「ない」だけだと、例外的に否定されない場合があり得る、というような違いはないのです。

 

もしも上記の様な違いが効果として認められるなら、私たちは、契約書中で否定したい場合には、常にin no eventを使わないと危なくてしょうがない、ということになってしまいます。

 

結論として、in no eventと単なる否定は、同じと考えてよいです。

 

とすると、次のように考えられないでしょうか?

 

「in no event」なんて文言は、不要!使う必要はない!ていうか、こんな文言、誰が英文契約書中で使い始めた?混乱するだろうが!

 

その通りです。

 

むしろ、in no eventなんて使うと、単に文字数が増えるだけです。

 

では、どうして英文契約書では、ときどきin no eventなんて余計な文言が使われ続けているのでしょうか?

 

それはわかりません。

 

ただ、私は次のように考えています。

 

人間は、感情の生き物だから。

 

人は、単に「ない」と書くだけではなんだか物足りない!あえて強調しておきたい!

 

という気持ちになるときがあるのです。

 

たとえそれが法的な効果として違いを生じさせるものではないと知っていても、つい、強く言いたくなる時があるのです。

 

そのためでしょうか。

 

このin no eventは、通常、特に重要な場面でしか使われていません。

 

その代表例が、損害賠償の制限についての条文です。

 

損害賠償の原則からすると、相手方に生じさせた損害は合理的な因果関係が認められる限り負わなければなりません。

 

しかし、その原則を覆し、損害賠償の上限を付けたり、逸失利益を免責する条文については、「決して、そのような賠償責任を負うものではない」と強調されていることが多いです。

 

これは、under no circumstancesも同じです。

 

こんな表現、法的には普通の否定文と同じです。しかし、「いかなる状況においてもない!」と強調したくなるのです。

 

というわけで、今回理解していただきたいのは、「in no event」も「under no circumstances」も無理して使う必要はない、ということです。

 

もちろん、使っても大丈夫です。

 

 

・・・それにしても、契約書という一見無味乾燥に思える法律文書にさえ、人は感情を入れたくなるということは、結局人は、どこまで行っても、感情の生き物なんだな、と思わせられますね・・・。

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