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本郷塾で学ぶ英文契約

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

2024/02/19
 
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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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英語の契約書には、indirect damageloss of profitという表現がときどき出てきます。

これらはそれぞれ、間接損害逸失利益と訳されますが、この2つを同じものと考えている人は多いかもしれません。

しかし、この2つは必ずしも同じ意味ではありません

この記事では、次の事項についてわかりやすく解説します。

  • indirect damageとloss of profitの意味
  • この2つの表現の違いと注意点

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)

英文契約で次のような条文を見たことがある人も多いでしょう。

 

The Contractor is not required to be liable to the Owner for any indirect damage in connection with this Agreement.

「コントラクター(請負者)は、オーナー(注文者)に対し、本契約に関する何らの間接損害も賠償する責任を負わない。」

 

しかし、コントラクターが上記のような条文のまま契約を結ぶのはとても危険です。

というのも、この条文だと、コントラクターが最も負いたくないと考える損害について責任を負わなければならなくなり得るからです。

 

それは、「逸失利益」と呼ばれるものです。

 

例えば、火力発電所の建設案件を想定します。

火力発電所を建設し、無事に検収に至り、オーナーが商業運転を開始した際に、発電所に欠陥(不適合)が発見されたとします。

契約不適合期間内でれば、コントラクターはこの不適合を無償で修理しなければなりません。

すると、発電所の運転を止めなければならなくなります。

この運転を止めている期間中に、オーナーが本来であれば得られていたはずの利益が逸失利益です。

つまり、「契約違反がなければ本来得られていた利益」を逸失利益と呼びます。

この逸失利益は、通常、莫大な金額になります。

これをコントラクターが負担させられることになると、コントラクターは簡単に倒産してしまいかねません。

コントラクターとしては、逸失利益については責任を負わない、つまり、免責されることを契約書に明記しておくべきです。

indirect damageとloss of profitの違いは?

この点、次のように考える人もいるでしょう。

 

「間接損害=逸失利益ではないのか?上記の例文のように間接損害(indirect damage)を免責する条文があれば、逸失利益の賠償も免責されるのではないか?」

この考えは間違いです。

 

間接損害は、逸失利益を含む場合もあれば、含まない場合もあるのです。

どのような場合に間接損害の中に逸失利益が含まれるのかは一概には言えません。

ただ、間接損害とは、一般に、「契約違反から通常生じる損害ではないが、特別な事情が介在することで生じ得る損害」を指します。

日本の民法で言えば、第416条2項に当たるものです。

つまり、ある事案においてコントラクターによる契約違反からオーナーが逸失利益を被るのが「通常」であると判断できる場合には、その逸失利益は間接損害ではなく、直接損害(契約違反から通常生じ得る損害)に分類されることになるのです。

 

よって、「間接損害を免責する」と定めるだけでは、コントラクターが逸失利益を免責してもらえるのかどうかわからないのです。

 

このことから、確実に逸失利益を免責してもらうためには、「loss of profit」(逸失利益を意味する単語)についてコントラクターが責任を問われない点を契約書に明記する必要があるのです。

 

具体的には、以下の様に定めます。

 

The Contractor is nor required to be liable to the Owner for any indirect, special, consequential, incidental damage, and loss of profit in connection with this Agreement.

 

indirect damage、special damage、そしてconsequential damageは同じ意味と考えてよいですが、loss of profitはまさに逸失利益を意味しますので、これを忘れずに定めましょう。

なお、incidental damageは、損害が拡大するのを防ぐために必要となる対処を行う際に生じる費用を指します。

おさらい

では、上記を、関連する重要英単語と合わせて押さえておきましょう!

売主の責任を制限する手当としての2つ目は、間接損害・逸失利益の免責と呼ばれるものである。

これは、売主の契約違反によって生じる間接損害(indirect damage)、

特別損害(special damage)、

結果損害(consequential damage)、

付随的損害(incidental damage)、および

逸失利益(loss of profit)といった損害については、売主を免責するものである。

 

免責とは、責任を免れる、という意味で、売主がこれらについて責任を負わなくてよいことになる。

 

ここで、間接損害、特別損害、結果損害とは何かは、直接損害(direct damage)との対比で理解するとわかりやすい。

直接損害は、「契約違反から通常生じる損害」を意味する。

一方、間接損害、特別損害、そして結果損害は、「契約違反から通常は生じないが、特別な事情が介在することで生じる損害」を指す。

そして、ここで重要となるのが、これらは、必ずしも逸失利益と同じものではないという点である。

逸失利益は、「契約違反がなければ、得られたであろう利益」を指す。

例えば、検収された製品に不適合が発見され、売主が保証責任としてその不適合を修理する間、買主はその製品を使用できないことになる。

すると、その製品を使用できていたならば得られたはずの利益を失うことになる。

これが逸失利益である。

そして、この逸失利益は通常、莫大な金額となり得るので、売主としては、逸失利益については確実に免責されるように手当てしておきたいところである。

この逸失利益は、直接損害よりも、間接損害、特別損害、そして結果損害に当たるように思われがちだが、実は、その状況によっては、直接損害にも該当し得るものである。

よって、逸失利益を免責してもらうためには、間接損害などに加えて、loss of profitは免責される」と明記する必要がある。

なお、この2つの責任制限は、売主が故意(willful misconduct)・重過失(gross negligence)によって買主に損害を被らせた場合や以下で触れる第三者(third party)の生命・身体・財産への損害や知的財産権の侵害の場合には適用されないという扱いとなるのが通常である。

以下は、拙著『「重要英単語と例文」で英文契約書の読み書きができる』の89~90頁の抜粋です。

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英語の契約書をスラスラ読めるようになるために必要となる基本的かつ重要な表現を下にまとめておりますので、ご参考ください。

英文契約の頻出英単語レベル3! 契約違反と責任関係の表現です!

1.契約に違反する

2.liability

3.リキダメ、LD、liquidated damages

4.(損害等)を被る

5.故意・重過失

6.保証

7.契約不適合

8.不適合がない

9.保証・免責する

10.権利を侵害する

11.間接損害と逸失利益

これを覚えれば英文契約をずっと読みやすくなる!英単語レベル2

1.「契約を締結する」

2.契約締結日と発効日の違い

3.「~を履行する」

4.「費用を負担する」

5.例示列挙(非制限列挙)

6.事前の通知と事前の同意

7.「添付資料

8.英文契約でwhereとは?

9.「in which case/event」とは?

10.「契約の終了」

英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!レベル1

英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。

hereto/hereof/herein/hereinafterやthereof/thereby/thereafterなど

shall 義務

shall not 禁止

may 権利

if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現

unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現

otherwise「別途」を表す表現

notwithstanding ~にかかわらず

regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現

to the extent ~の範囲で

pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現

provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現

however provided that 「ただし」を表す表現

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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