EPC契約における契約金額の定め方と追加費用の扱い

      2022/05/23

 

契約金額の定め方

 

EPC契約のおいては、契約金額の定め方について、いくつかの種類があります。

 

もっとも、私自身は、ほぼ、「ランプサム契約」と呼ばれている形態のものしか経験したことがありません。

 

ランプサム契約とは、「一括総額請負契約」といった訳になると思います。

 

この契約の下では、契約金額として合意された金額で、コントラクターが全ての仕事を行い完成する義務を負います。

 

コントラクターは、コストを削減して仕事を完成させることができれば、より多くの利益を生み出すことができます。

 

一方で、コントラクターによる入札時の見積もりに誤りがあり、その見積金額よりも多い費用が契約締結後に生じた場合でも、その追加でかかった費用はコントラクターが負担しなければならないことになります。

 

契約締結時点で、プラント完成にかかる費用を確定させることができるため、オーナーが最も望む形態であると言えます。

 

「これって、普通の契約じゃないの?」

 

「これ以外に契約金額の定め方ってあるの?」

 

そう思われたかたもいらっしゃるかと思います。

 

あります。

 

その代表的なものは、「コスト・プラス契約」と呼ばれる契約です(詳しい内容と例文はこちらをご参照)。

これは、コントラクターが行った作業について通常必要となるコストはいくらかを算出した上で、それにプラスアルファでオーナーが利益分を支払うことになる契約です。

 

コントラクターとしては、かかった費用にプラスアルファで対価をもらえるので、コスト・オーバーランになるリスクが少ない契約形態であると言えます。

 

しかしこの形態だと、コントラクターがコスト削減の努力をしようと思わない可能性があり、請負金額が当初の予想以上に増加してしまいかねません。これはオーナーにしてみると大きなリスクでしょう。

 

そこで考え出されたのが、「コスト・インセンティブ契約」・「Target Price契約」(例文はこちらを参照)です。

 

これは、オーナーとコントラクター間で目標コストをあらかじめ合意し、最終的にかかったコストがその目標を下回った場合には、その差額分を、オーナーとコントラクターとで事前に合意した比率で分け合う、というものです。

 

この方法なら、コストを削減しようという気持ち(インセンティブ)がコントラクター側に生じます。

 

一方で、この目標コストを超えるコストが生じた場合には、コントラクターとオーナーで負担しあうというものや、コントラクターのみが全額負担するものもあります。

 

上記の3つ、つまり、「ランプサム契約」、「コスト・プラス契約」、そして「コスト・インセンティブ契約」の中で、最もオーナーに有利なのは「ランプサム契約」、最もコントラクターに有利なのは「コスト・プラス契約」、そしてその中間が、「コスト・インセンティブ契約」ということが一般的には言えると思います。

追加費用の負担

 

ところで、「ランプサム契約」が、コントラクターにとって最も不利な契約ということになりますが、このランプサム契約においても、契約締結後に何があっても、契約金額で定められた以上の金額をオーナーから支払ってもらえないわけではありません。

 

例えば、オーナーの契約違反が原因でコントラクターに追加費用が生じた、という場合には、その追加費用分の金額はオーナーに支払ってもらうのが公平ですよね。

 

その他にも、コントラクターに生じた追加費用をオーナーに負担してもらうべき場合というのがあります。

 

それらについて、EPC契約の中に適切に具体的に定められる必要があります。その定めがないと、コントラクターがその追加費用分を自分で負担させられることになりかねません。

 

そのため、契約金額についてもっとも重要なチェックポイントは、「契約金額の増加がなされることになる場合がEPC契約中に適切に明記されているか」という点です。

 

次回では、コントラクターが追加費用をオーナーに負担してもらうべき場合にはどのような場合があるかついて説明したいと思います。

コストプラスフィー契約は、「かかった費用全部を支払ってもらえる契約」ではない

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EPC契約とは?

全体の流れ

3つの視点

対価の定め方

支払条件

対価を得られなくなるのを防ぐための手当

納期遅延LD

性能未達LD

契約不適合責任

リスクの負担

責任制限

ボンド

クレーム

下請との関係

コンソーシアム

英文契約の基礎

 

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EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

仕事関係

これから法律・契約について勉強し始める社会人が陥りやすい勘違い

 

英語はある日突然聞き取れるようになるのか?

 

会社は誰のものか?

 

司法試験に落ちた後の人生とは?

 

休日を楽しめない理由とは?

 

ピカソがその絵で伝えようとしたこと

 

メンター(教育係)に初めてなる人へ①

メンター(教育係)に初めてなる人へ②

 

自分の勝因は相手の敗因にある(日露戦争から学ぶ)

 

Subject toとポツダム宣言の受諾

どうして議論がまとまらないのか?

 

歴史の本の紹介

 

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント