EPC契約における不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き

      2020/01/30

 

Force Majeureに当たる出来事が生じました。

 

それにより、コントラクターの義務の履行が妨げられました。

 

Force Majeureに当たる出来事が生じた場合の効果は、納期延長です。

 

では、当然のように、納期は延長されるのでしょうか?

 

つまり、コントラクターは何もせずとも、自動的に、納期延長という効果を得ることができるのでしょうか?

 

そうではありません。

 

Force Majeureによる影響を受けたコントラクターは、ある一定の手続きを踏まなければなりません。

 

 

Force Majeureの効果を得るための手続き

 

EPC契約には、一般的に、次のようなような条文が定められています。

 

「Force Majeureに当たると思われる出来事が生じたら、その出来事を知り得た時点から○日以内に、それによって影響を受ける当事者は、もう一方の当事者に対して、書面でその旨を通知しなければならない。」

 

そして、次のような条文が定められていることが多いです。

 

「上記の期限内に通知をしない場合には、納期延長はなされない。」

 

つまり、Force Majeureに当たると思うような出来事が生じたら、EPC契約に定められた期限内に相手方に書面で通知しなければならないのです。

 

それを怠ると、本来得られるはずのForce Majeureの効果を得ることができなくなってしまいます。

 

そうなると、コントラクターはオリジナルの納期に遅れた場合には、オーナーから納期遅延の損害賠償を請求されてしまいます。

 

そのころ慌てて「いや、あのときはForce Majeureが起きたんです!」と言っても、EPC契約に従った手続きをしていないとして裁判所や仲裁でも認めてもらえないことになりかねません。

 

この点、「書面による通知をしないくらいで、Force Majeureの効果を得られなくなるのは厳しすぎる、不当だ」と思われるかもしれません。

 

それはごもっともだと思います。

 

なので、実際に書面による通知を忘れてしまい、後日、その期限が過ぎてから通知をしたことが無効だと、裁判や仲裁で本当に扱われてしまうのかはわかりません。そのような条文の有効性を争う余地も、場合によってはあるのかもしれません。

 

しかし、本当に契約書の定めの通りの扱いと判断されるリスクもあります。

 

EPC契約書にそう書いてある以上、書いてある通りに通知をするべきでしょう。

 

 

 

影響最小化義務

 

Force Majeureと思えるような出来事が生じたからといって、その影響を受けた当事者はもう何もせず黙って休んでいればよいか、というとそうではありません。

 

Force Majeureに当たる出来事が起きた場合でも、なるべくその影響を小さくするためにできることがあるかもしれません。

 

そのような場合には、Force Majeureの影響を最小化するように努力する義務がEPC契約書に定められているのが一般的です。

 

この努力を怠ると、その分だけ納期が延長されない、という結果になる可能性がありますので、ご注意ください。

 

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

 

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント