Scope of Work (スコープオブワーク) コントラクターのスコープを正確に理解し、見積もり落ちを防ぐ!

      2022/05/23

スコープオブワーク

 

今回は、「スコープオブワーク」の条文についてご説明します(なお、スコープオブワークの英文の条文例と構造の解説こちらをご参照ください)。

 

スコープオブワークは、英語ではScope of Workと書きます。

 

日本語にすると、「仕事の範囲」ですね。

 

つまり、請負人であるコントラクターが、このEPC契約に基づいて、一体何を注文者であるオーナーに提供しなければならないのか?が定められているのです。

 

お手元にEPC契約がある方は、このScope of Work(または、Scope of Supplyというタイトルかもしれません)の条文を見てみてください。

 

いかがでしょうか、コントラクターがしなければならないことがずらずらと列挙されているのではないでしょうか?

 

例えば、次のようなことが定められていると思います。

 

「コントラクターは、プラントの設計、製造、調達、建設、組み立て、据付調整、試験を、契約書、およびその仕様書に従って行わなければならない。」

 

そして、このような条文に続いて、さらに、「あれもやれ、これもやれ」と、途中で読むのがいやになるほど詳細に列挙されているのではないでしょうか。

 

そうしてようやく読み終えてみて、結局この条文に書かれていることは何のか?と考えてみると、つまりは次のようなことになると思います。


「コントラクターは、一部の例外を除いて、プラントを運転するために必要な全ての作業をこなさなければならない。」

 

これは考えてみれば当然のことです。

 

EPC契約とは、そもそも、コントラクターが設計から建設をして、運転開始できる状態になるまで全部こなすというのが原則です。それをこのスコープオブワークの条文は、明確に、そして具体的に述べているのです。

 

チェックポイント

 

では、この条文の何をチェックする必要があるのでしょうか?

 

まず、「コントラクターの仕事として定められている事項は具体的に何か?」を一つ一つ確認することです。

 

おそらく、EPC契約の本文は、添付資料を引用し、そこにより詳細なScope of Workを記載しているはずです。

 

よって、その添付資料も含めて、「本当にこれらはコントラクター側でやるものなのか?」を社内で検討します。その際には、主には技術部門の方に確認していただく必要があるでしょう。

 

もしもその中に、「これはオーナーにしてもらう必要があることだ」といった事項があれば、そこから外すという修正をする必要があります。

 

注意点

 

ここで、一つ注意が必要なのは、「契約書の本文や、添付資料中に、「これはコントラクターのスコープだよ」と明記されていない事項だからといって、コントラクターの仕事ではないとは言い切れない」ということです。

 

どういうことかといいますと、このスコープオブワークの条文には、概ね、次のような意味のことが定められていることがほとんどなのです。

 

「この契約書にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、本来的、または慣習的にプラントの完成のために必要となる作業(または、プラントの完成のために必要だと合理的に推測される作業)は、オーナーの仕事と明記されていない限り、それはあたかも、コントラクターの仕事であると契約書に定められているかの如くに扱われる。」

 

英文では、以下のような条文です。

 

If any services, functions or responsibilities not specifically described in this Agreement are an inherent or customary part of the Scope of Work, or are required for proper performance or provision of the Plant in accordance with this Agreement, they are included within the Scope of Work to be delivered by the Contractor, as if such services, functions or responsibilities were specifically described in this Agreement, unless such services, functions or responsibilities are expressly designated in this Agreement as the responsibility of the Owner.

 

「・・・何これ?」と、初めてEPC契約を読まれた方は、このように思うのではないでしょうか。私はそう思いました。だったら、コントラクターのスコープをいちいち列挙していたのは何のためなのだ?と。

 

結局、この条文があることで、ほぼ、次のようなことが言えると思います。

 

「契約書中に、「これはオーナーがやる仕事ですよ」と明記されていない事項は、全部コントラクターの仕事になる。」図にすると以下のようなイメージです。

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この類の条文は、EPC契約のモデルフォームであるENAAやFIDICにもあります。また、これまで私が見てきたEPC契約書にもほぼ必ず入っていました。そのため、おそらく、この点はEPC契約ではもはや当たり前の条文、広く受け入れられている条文ということなのではないかと思います。

 

では、このような条文が入っているScope of Supplyにおいて、何を注意する必要があるでしょうか?この点、私は次の点が重要だと思います。

「技術部門も営業部門も、EPC契約のスコープは、「オーナーの仕事です」と明記されているもの以外は、全部コントラクターの仕事になるということを十分に理解の上、自社の仕事の内容を正確に理解し、決して見積もり落ちがないようにする。具体的には、オーナーの仕事の範囲が不明確な場合には、契約締結前にオーナーにしっかりと確認をして、どちらが担当するべき仕事なのか曖昧な点はなくす。」

 

この点、「契約書に「コントラクターの仕事と明記されているものだけがコントラクターの仕事である」というように契約書を修正してはどうか?」という考えもあるかと思います。

 

もちろん、それができればそれに越したことはありません。

 

しかし、このような修正がオーナーに認められることはほとんどの場合でないのではないかと私は思います。オーナー側は、自分達の仕事の範囲が不明確なものになるのを嫌がるはずだからです。そして、EPC契約では、基本的にはオーナーの方が、立場が強いことが多いと思いますので、そのような修正は拒否されることの方が多いと思います。

 

そのため、コントラクターとしては、「プラントを完成させるために必要な全ての仕事を理解した上で、そこからオーナーの仕事であると明確に定められている事項を除いた部分とは何か?を正確に把握した上で、契約金額の見積もりを行う」ということが、現実的な対応方法になるかと思います。

 

見積もり落ちのリスク

 

もしも、見積もり落ち、つまり、本当はコントラクターのScope of Workに含まれるのに、それは含まれないと勘違いし、契約締結後になって、「実はそれはコントラクターの仕事だった」となると、その分の仕事は、コントラクターが自費で行わなければならなくなります。オーナーがその分の費用を負担してくれることはありません。この金額があまりに大きいと、コントラクターはコスト・オーバーランに陥る可能性も出てきます。コスト・オーバーランに陥ると、もはやそのEPC契約案件を遂行しても、当初計画していたような利益を出すことができなくなってしまいます。それを避けるために、もっとも注意しなければならないのは、このスコープオブワークで、自社が遂行することを義務付けられている範囲を正確に把握することになります。

 

まとめ

 

以上をまとめると、以下のようになります。

 

・スコープオブワークの条文と添付資料を読み込み、オーナーにしてもらうべき事項を見つけたら、そのように契約を修正する。

 

・EPC契約においては、「この契約書にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、本来的、または慣習的にプラントの完成のために必要となる作業(またはプラントの完成のために必要だと合理的推測できる作業)は、オーナーの仕事であると明記されていない限り、それはあたかも、コントラクターの仕事であると契約書に定められているかの如くに扱われる。」という条文が定められていることがほとんどであるので、契約書本文や添付資料にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、自社のスコープになるものがあるということを十分に理解の上で、見積もり落ちがないように注意する。これは、技術部門と営業部門に十分に理解してもらうことが実務上重要になる。

EPC契約のポイント(『英文EPC契約の実務』で解説している事項の一部です)

 

スコープオブワーク

 

EPC契約の契約金額の定め方と追加費用の扱い

 

コストプラスフィーの注意点

 

ボンドについて

 

前払金返還保証ボンド

 

履行保証ボンド

 

契約不適合責任ボンド

 

リテンションボンド

 

仕様変更

 

プラントの検収条件と効果

 

納期遅延①

納期遅延②

納期遅延③

納期遅延④

納期遅延LDの決め方(発電所建設の一例)

 

Time is of the Essenceとは?

 

性能未達LD

 

EPC契約における保険

 

責任制限①

責任制限②

 

対価をとりっぱぐれるリスクへの対処法

 

プロジェクトファイナンス

 

コンソーシアム契約

 

Delay Analysis関係

必要な立証の程度(balance of probabilities)

 

フロート

 

同時遅延

 

英文契約の基本的な表現

Shall

 

~に定められている

 

「~に定められている」の補足

 

Notwithstanding

 

~を除いて、~でない限り

 

~に従って

 

~に関する

 

~の場合

 

Whereについて

 

~の範囲で

 

例示列挙の方法

 

事前の文書による同意と承認

 

契約締結日と発効日

 

LDとpenaltyの違い

 

Gross negligenceと結果の重大性

 

間接損害(indirect damage)と逸失利益(loss of profit)の違い

 

知らせる

 

Liquidated damages

 

Otherwise

 

~を被る

 

~を履行する

 

累積責任

 

~を補償する、免責する

 

Indemnifyとbe liableの違い

 

~を保証する(guarantee)

 

遅延利息

 

Warranty

 

排他的な

 

to one’s knowledge/to the knowledge of

 

Material adverse effect

 

Covenants

 

Representations and warranties

 

Notwithstandingと責任制限条項

 

Indemnifyとdefend

 

取締役・取締役会関係の単語

 

株主総会関係の単語

 

添付資料

 

連帯責任

 

下記の、上記の

 

一般条項(Notice)

 

一般条項(Term)

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 - EPC契約のポイント