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本郷塾で学ぶ英文契約

EPC契約におけるTarget Price方式の例文を読んでみよう!

2024/02/20
 

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Target Price方式とは、Fixed Priceとコストプラスフィーの中間的な方法です。

 

まず、プラント建設の対価の一部または全部について、コストプラスフィー方式が採用されます。つまり、コントラクターが仕事を遂行する中で実際に生じた費用が支払われる方法です。

 

ただ、このコストプラスフィーが採用される仕事について、Target Priceと呼ばれる金額をオーナーとコントラクター間で合意し、契約書中に定めます。これは、目標額のようなものです。

 

その後、実際にプラントを建設した結果、Target Priceを上回る金額で仕事が完成した場合には、コントラクターは、Target Priceとして合意した金額に加えて、(実際にかかった金額-Target Price)についてオーナーとコントラクター間で予め合意した割合分しか追加でもらえないことになります。残りは、コントラクターの自己負担となるのです。

 

逆に、Target Priceを下回る金額で仕事が完成した場合には、コントラクターは、実際にかかった金額に加えて、(Target Price-実際にかかった金額)についてオーナーとコントラクター間で予め合意した一定の割合分を追加でもらうことができます。

 

上記だけではイマイチ理解できないかもしれませんので、Target Priceと実際にかかった金額との差額の分担について定める例文を見てみましょう。

 

The payment structure of this Contract is designed to encourage Contractor to perform the Work at or below the Target Price.

At the same time, the payment structure is designed so that Contractor bears a proportion of any costs if the Project is not completed at or below the Target Price(→Target Price以下の金額で仕事を完成させられなかった場合).

In that regard:

  1. If the Actual Cost is greater than Target Price, the amount of the excess (the “Excess”) shall be borne in accordance with the following (the aggregate of Contractor’s share of such Excess is defined herein as the “Contractor’s Excess Cost Liability”):
Amount of Excess

(Target Priceを超えた金額)

Contractor Share

(コントラクターの負担分)

Owner Share
Up to and including $5 million 20 % 80 %
Greater than $5 million , and up to and including $10 million 50 % 50 %
All amounts in excess of $10 million 80 % 20 %

上記は、(実際にかかった金額-Target Price)=Excess(超過分)とし、このExcessをコントラクターとオーナーでどのような割合で分担しあうか(bear)を定めているのです。

上記は、以下の様になります。

  • 超過額が5百万米ドルまでであれば、超過額のコントラクターが20%分を自己負担します。
  • 超過額が5百万米ドルを超えて10百万米ドルまでであれば、コントラクターが50%分を自己負担します。
  • そして、超過額が10百万米ドルを超える場合には、コントラクターが80%分を負担します。

このように、超過額が増えるほど、コントラクターの負担分が多くなるようにすると、コントラクターは超過額が大きくならないように努力しようと努めることが期待できます。オーナーにとっても受け入れやすくなりると考えられます。

一方、以下は、Target Priceよりも少ない金額で仕事を完成できた場合についての例文です。

2 If the Actual Cost is less than Target Price, the amount by which the Target Price exceeds the Actual Cost (the “Savings”) shall be divided between Contractor and Owner in accordance with the following:

Amount of Savings

(節約できた金額)

Contractor Share

(コントラクターの分け前)

Owner Share
Up to and including $1 million 20 % 80 %
Greater than $1 million 50 % 50 %

(Target Price-実際にかかった金額)=Savings(節約分)とし、このSavingsという分け前をコントラクターとオーナーでどのような割合で分け合うか(divide)を定めています。

つまり、

  • 節約額が1百万米ドルまでは、そのうち20%分をコントラクターがもらえることになります。
  • 節約額が1百万米ドルを超える場合には、そのうち50%をコントラクターがもらえることになります。

このように、節約額が多くなるほど、コントラクターがもらえる分け前が大きくなるようにすると、コントラクターはTarget Priceよりも下回る金額で仕事を完成させようと努力することが期待できるでしょう。

 

純粋なコストプラスフィー方式では、最終的にいくらの対価をコントラクターに支払わなければならないかが予測しにくいため、オーナーの同意を得られないことが多いと思われます。

一方、このTarget Price方式は、コストプラスフィー方式よりは、オーナーがコントラクターに支払う金額がどこまでも上昇するのを防ぐ仕組みといえるので、オーナーにとっては、受け入れやすいものといえます。

 

この点、結局はFixed Priceがオーナーにとって一番よいではないか、と思われるかもしれません。

しかし、契約締結時には、完成させるための費用の見積が困難な案件では、Fixed Price方式では、コントラクターが多くの予備費を積むことになりがちです。そのような案件でも、Target Price方式を採用すれば、コントラクターが大きな予備費を契約金額に入れ込むことを防ぐことができ、結果的に、オーナーにとっては、Fixed Priceよりも低い金額でプラントを完成させられることもあるわけです。

 

というわけで、必ずしも、オーナーにとって、Fixed Price方式がベストの方法とはいえず、その意味で、コントラクターとしては、Target Price方式を受け入れてもらえる余地はあるといえます。

 

 

 

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

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納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

 

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