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本郷塾で学ぶ英文契約

オペラハウスのコストオーバーランの原因

2024/02/05
 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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「諸君。これが私たちの街の新たなランドマークとなるにふさわしい建築物である!」

 

1955年。ある街に新たな建築物を建設することになり、その建築物の設計に関するコンペが開催されました。

世界中から公募を受け付けた結果、全部で200件を超える様々なデザイン案が提案されました。

多くの独創的なデザインの中からどの1つを選ぶべきか、審査員たちは頭を悩ませました。

そんなとき、審査会場に遅れてやってきた審査員の一人が、一次審査で落とされたデザインの中から1つを取り出し、冒頭にあるように叫び、そしてそれがそのまま採用されました。

(遅刻してきて、一度落選した案を復活させるなんて、余程決定権を持った人だったのでしょうか)

 

これが、その完成後に、過去例にない斬新なデザインのために、当初の狙い通り世界中の人々を魅了し、この街のランドマークとなるだけでなく、遂には世界遺産にまで登録されるに至る建築物のデザインが選出された瞬間でした。

 

1959年、早速そのデザインに基づき建設作業が開始しました。

 

・・・が、その後、当初の予定期限を過ぎても、一向に完成しません。建設費用もどんどん増えていきます。そのうち、このデザインを考案した者はプロジェクトから外されてしまいました

 

結局、この建築物が完成したのは、当初の完成予定時期から10年後工事費用は当初の14倍にも膨れ上がりました。

 

この建築物は、オーストラリアはシドニーにあるオペラハウスです。

 

オペラハウスの建築は、どうしてこんなに予定の期間と費用を超えたのでしょうか?

 

みなさんご存知の通り、オペラハウスの屋根の形は極めて独創的です。

あのような形の屋根が、力学的に安定した建物として存在し得るのか、当時の建築技術では検証できていませんでした。

それにも関わらず、「デザインが素晴らしい!はやく完成させたい!」という気持ちから、実現可能性を吟味する前に予算が決まり、工期も決まり、そして工事が開始されたのです。

つまり、世界で「初めて」のデザインをもつ建築物なのにも関わらず、できるかどうかもわからないうちに工事期間と建設費用を決めたのでした。これではその期間と費用内で完成できるはずがありません。

 

・・・しかし、意外と、失敗する案件というのは、こういうものです。

この程度の規模の建造物なら、〇年くらいで出来るだろう。」

いつもは▲ドルで出来てるから、今回もその程度でいけるだろう。」

こういう、「前と同じで大丈夫」という考えが巨額損失を発生させます。

なぜ、「初めての案件」なのに、「前と同じで大丈夫」と考えてしまうのか・・・?

 

後日談ですが、オペラハウスのデザインを考案したデンマークの建築家ヨーン・ウツソンは2003年にオペラハウス設計の栄誉を称えられ、シドニー大学から名誉博士号を授与されました。

同時に、オーストラリア勲章も授与されました。

しかし、途中でプロジェクトから降ろされたからでしょうか。プロジェクトから身を引いた後は、一度もシドニーの地を訪れることはありませんでした

ちなみに、この建設費用は公共工事でしたので、宝くじ資金等により1975年に完済されました。

このことから、「被害者なき巨額損失案件」などといわれることもあるようです(とはいえ、このコストオーバーランがなければ、宝くじの収益を他のことに回すことができたと考えると、被害者がいなかったといえるのか疑問ですが・・・)。

 

いわゆる海外における建設案件において、海外の企業も日系企業も、時々失敗しています。

その失敗事例のいくつかに当てはまる共通点は、上記の様な「初めて」の案件であるということなのです。

その損失額は、数百億円どころか、数千億円になることもあります。

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

英文EPC契約の実務』は、お陰様で出版から6度の増刷となっております。

この本は、

・重要事項についての英語の例文が多数掲載!

・難解な英文には、どこが主語でどこが動詞なのかなどがわかるように構造図がある!

・もちろん、解説もこのブログの記事よりも詳しい!

・EPCコントラクターが最も避けたい「コストオーバーランの原因と対策」について、日系企業が落ちいた事例を用いて解説!

・英文契約書の基本的な表現と型も併せて身につけることができる!

ぜひ、以下でEPC契約をマスターしましょう!

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

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