英文契約における「Warranty」と「Guarantee」の違い

「warranty」と「guarantee」はどちらも「保証」を意味しますが、特に英語の契約書の中で使われる場面やニュアンスに違いがあります。
本記事では、それぞれの特徴を具体例とともに解説し、実務での誤解を防ぐためのポイントを整理します。
Warrantyとは?
「warranty」は主に契約当事者間の保証責任を指し、売買契約やM&A契約で多用されます。
特に、売買契約における売主の契約不適合責任を示す場合によく使われます。
売主は契約上、商品やサービスが合意された仕様や品質に適合することを保証します。
例文:
The Seller warrants that the Goods conform to the specifications described in Appendix A.
(売主は、本商品が別紙Aに記載された仕様に適合することを保証する。)
また、M&A契約においては「representations and warranties(表明保証)」として用いられ、取引の対象となる会社や資産に関する情報の正確性や特定の状態について、売主が保証を行います。
例文:
The Seller represents and warrants that the Target Company has no outstanding tax liabilities.
(売主は、対象会社に未払税金がないことを表明し、保証する。)
Guaranteeとは?
「guarantee」は、契約当事者間の保証および第三者による保証の両方に使用される単語です。
この点で、「guarantee」は「warranty」よりも広い意味を持つ言葉といえます。
契約当事者間の保証
性能保証を表す場合、「performance guarantee」という表記が一般的です。
この文脈では、請負者が注文者に対して保証を提供することが前提となります。
「performance warranty」という表記はほとんど使用されません。
例文:
The Contractor provides a performance guarantee to ensure the Plant achieves the agreed operational efficiency.
(請負者は、プラントが合意された運転効率を達成することを保証する性能保証を提供する。)
性能保証では、請負者が契約上の義務を果たすことを直接保証するものですが、warrantyではなく、「guarantee」の使用が一般的です。
ちなみに、guaranteeが契約当事者間の保証の際に用いられるといっても、契約不適合責任を表すためにguaranteeが使われることは通常はありません。
その場合は、上に述べたように、warrantyを使うのが通常です。
第三者による保証
guaranteeは、銀行保証や親会社保証など、契約当事者以外の第三者が保証を提供する場合にも使用されます。
例文
The Parent Company guarantees the performance of the Contractor under the Agreement.
(親会社は、本契約に基づく請負者の履行を保証する。)
WarrantyとGuaranteeの使い分けのポイント
Warrantyの特徴
- 契約当事者間の契約不適合責任(保証)を示す。
- 売買契約やM&A契約で使用される。
Guaranteeの特徴
- 性能保証の他に、第三者による保証である銀行保証、親会社保証を表す際に使用される。
- もっとも、契約不適合責任を表す際は、guaranteeではなく、warrantyを使うのが一般的。
まとめ
「warranty」と「guarantee」は、どちらも保証を意味しますが、使い方に違いがあります。
「warranty」は主に契約当事者間での保証責任、いわゆる契約不適合責任を表し、
「guarantee」は契約当事者間だけでなく第三者による保証にも用いられる点が特徴です。
性能保証の場合には「performance guarantee」という表現が一般的であり、「warranty」という表記はほとんど見られません。
契約書の作成や解釈においては、それぞれの単語がどのような責任や保証を表しているのかを慎重に確認し、適切な表現を選択することが重要です。
関連する記事と動画の紹介
英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!
英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。
・hereto/hereof/herein/hereinafterやthereof/thereby/thereafterなど
・shall 義務
・shall not 禁止
・may 権利
・if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現
・unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現
・otherwise「別途」を表す表現
・notwithstanding ~にかかわらず
・regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現
・to the extent ~の範囲で
・pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現
・provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現
・however provided that 「ただし」を表す表現
これを覚えれば英文契約をずっと読みやすくなる!英単語レベル2
3.「~を履行する」
7.「添付資料」
10.「契約の終了」
はじめて契約書を修正する人が知っておくと便利なこと
契約書の修正は、どんな場合にするの?修正理由はどう書けばいい?
そんなお悩みを解決するのがこちらの記事です。→「はじめて契約書の修正をする際に知っておきたいこと」
2025年5月19日から、本郷塾の新刊『はじめてでも読み解けるビジネス契約書』が出版されました!
企業が頻繁に取り交わす様々な取引についての契約レビューの重要ポイントをしっかりと理解できます。
(なお、本書は、英文契約の参考書ではなく、日本企業同士の契約です。つまり、和文の契約書の参考書となります。)
![]() 【類書と比較した際の本書の特徴】 たとえば、「製造委託契約(業務委託契約)」において、 ・「損害賠償責任を制限する条項」について、8トピック16ページに渡って解説しています。 ・「納期遅延の予定損害賠償金(いわゆるリキダメ)」について、5トピック12ページに渡って解説しています。 ・「民法から修正すべき事項」の一覧表を提示しています。 ・また、販売店契約、ライセンス契約、そして共同研究契約において独占禁止法上問題となる事項について、単に公取委のガイドラインをそのまま示すだけではなく、ガイドラインを読む際の注意事項を指摘しつつ、主に問題となる「競争を回避する行為」と「他者を排除する行為」の観点から、いかなる場合に独禁法違反となるのかを独禁法の初心者にもわかるようにイラストを用いて解説しています。 ・各トピックの終わりに確認テストを置いているので、確実に理解を積み重ねながら読み進めることができます。 ・各トピックを1~4ページで解説しているので、隙間時間を利用してトピックごとに読み進めることができます。 |
![]() こちらの『はじめてでも読みこなせる英文契約書』の和文版となります。つまり、日本企業同士で交わされる契約書のための参考書です。 |
以下の契約について解説しています!
①製造委託契約(モノを作って引き渡す契約):メーカーであれば必須の契約です。
②秘密保持契約:企業が何かの取引を行う際にはほぼ必ず結ばれる契約です。
➂共同研究契約:メーカーが他社と共同で研究する際に結ばれる契約です。
④ライセンス契約:技術を保有する企業が相手方に技術の使用(実施)を許諾する契約です。
⑤販売店契約:販売提携契約の1つです。
⑥代理店契約:自社の代理として販売をしてもらう際に結ばれる契約です。
本書の特徴は、次のページでご確認ください。→新刊の概要