EPCにおける設計(design)の条文について②

      2017/06/15

 

前回(EPCにおける設計(design)の条文について①)の続きです。

 

5. オーナーの承認がなされた図書に後日誤りが発見された場合には、図書を修正したり、場合によっては製造をやり直したりすることになるが、その責任はオーナーとコントラクターのどちらが負うのか?

 

この点、「オーナーの承認が下りた図書に後に誤りが発見されても、その誤りの責任はコントラクターが負う」とEPC契約書に定められているのが一般的です。

 

図書を承認したオーナーにも一部責任を取ってもらいたい!と思うかもしれません。

 

しかし、私はこれまで、そのような場合にオーナーが責任を負うとの記載を見たことがありません。

 

その理由は、おろらく、次のようなものであると思われます。

 

もともとEPC契約においては、原則として、最初から最後までコントラクターの責任で仕事を行うことが求められています。

 

よって、途中経過は問わず、とにかく、仕様書に合致した製品をオーナーに引き渡す義務がコントラクターにはあると言えます。

 

これを純粋に貫こうとすると、図書の承認手続きは不要となるでしょう。

 

つまり、コントラクターは自分が正しいと考えて作った図書に基づいて製造・建設を行えばよく、もしも図書に誤りがあり、その結果製造された機器や建設されたプラントに欠陥が生じた場合は、コントラクターが責任をもって修理すればよいだけです。

 

しかし、このように途中でオーナーのチェックが一度も入らないようにするよりも、オーナーが途中で図書の内容を確認するというプロセスを経たほうが、コントラクターが図書の作成において誤りを犯しても、製造に入る前にその誤りが発見される可能性が高くなります。

 

そして、納期にも遅れず、仕様書に合致した製品・プラントが完成される可能性も高まるでしょう。

 

この点、オーナーには損害賠償請求権があるので、仮にコントラクターが設計において誤りを犯し、機器やプラントに欠陥を生じさせても、コントラクターに無償で修理させることができるし、納期に遅れる、または、性能が未達成だった場合にも、損害賠償を支払ってもらえばよいので、オーナーがわざわざ途中で図書をチェックしなくても、オーナーの利益は守られている、よって、オーナーによる図書承認手続きは不要である、という考え方もあるかもしれません。

 

しかし、損害賠償請求権があるとはいえ、EPC契約には、責任上限や逸失利益の免責等の責任制限条項があるのが一般的です。

 

つまり、オーナーに生じた損害をすべてコントラクターに負担してもらえるとは限らないのです。

 

そして、オーナーの最大の目的は、コントラクターから損害賠償を得ることではなく、納期までに仕様書を満たす製品・プラントの引渡を受けることです。

 

そのためには、コントラクターによる履行の途中で、オーナーがその仕事の内容をチェックする機会があるとしたほうが、その目的を果たせる可能性が高まります。

 

そのため、オーナーによる図書承認というプロセスがEPC契約の中に定められているのだと思います。

 

とはいえ、図書の作成がコントラクターの義務であることには変わりはありません。

 

オーナーによる図書承認プロセスは、図書に誤りがないかを念のため確認する、というだけであり、図書に誤りがないことを保証するといった性格のものではないのです。

 

一方、コントラクターからしても、途中でこのようなオーナーの図書承認プロセスがあるおかげで、図書の中に誤りを見つけてもらえれば、そのまま製造した後で図書の誤りが見つかった場合よりも、やり直しや修正の程度が減るというメリットがあります。

 

つまり、図書承認プロセスは、コントラクターにとっても良い面があるといえるでしょう。

 

そのため、EPC契約においては、図書を一度オーナーが承認し、製造が開始され、その後その図書に誤りが発見された場合でも、オーナーは何ら責任を負わず、コントラクターが全責任を負う、という立て付けになっているのだろうと思われます。

 

したがって、コントラクターとしては、「図書の承認についてオーナーは責任を一切負わない。図書は自分たちで誤りのないものを完成させる!」という気持ちで図書作成に取り組む、ということが重要だと思います。

 

 

オーナーが提供した図書作成の前提となる情報の正確性の保証について

 

もっとも、コントラクターによる図書作成の前提となる情報をオーナーが提供する場合には、その情報の正確性については、オーナーに保証してもらうべきです。

 

つまり、その情報に誤りがあった場合には、追加費用や納期延長をコントラクターが認めてもらえるようにEPC契約の中で手当てするべきです。

 

EPC契約の流れ

Scope of Work

サイトに関する情報

オーナーの義務

契約金額の定め方と追加費用の扱い

追加費用の負担について

ボンドについて

入札保証ボンド

前払金返還保証ボンド

履行保証ボンド

瑕疵担保保証ボンド

ボンドのon demand性を緩和する方法

コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は?

仕事の遂行

設計(design)の条文について①

設計(design)の条文について②

仕様変更① 仕様変更とは?

仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項

仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い

プラントの試験①

プラントの試験②

プラントの検収条件と効果

危険の移転時期とその例外

債務不履行

納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合

納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ

納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限

納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy

納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD

性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験

性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD

責任制限条項① Limitation of Liability/LOL

責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合

瑕疵担保責任① 総論

瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権

瑕疵担保責任③ 保証期間の延長

瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項

作業中断権① 中断権の存在意義

作業中断権② 中断権行使の効果

不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か?

不可抗力の扱い② Force Majeureの効果

不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き

不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合

法令変更について

契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか?

契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除

契約解除③ オーナーの自己都合解除

契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除

契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合

私がEPC契約で真っ先に確認する点①

私がEPC契約で真っ先に確認する点②

私がEPC契約で真っ先に確認する点③

 

 - EPC契約のポイント