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本郷塾で学ぶ英文契約

EPC契約におけるコントラクターの責任関係

2024/01/12
 

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EPCコントラクターの責任については、既に「EPCのポイント」にて解説していますが、ポイントがいくつもあるため、なかなか理解できないでいる方もいるかと思います。

 

しかし、EPC契約においては、このEPCコントラクターの責任についての条文は、EPCコントラクターが支払いを受けることを確保することに次いで重要です。

 

そこで今回は、その重要性から、EPCコントラクターが負う責任の全体像を理解していただきたいと思い、全体のまとめを作成しました!

 

目次

リスクの負担

納期遅延

性能未達

契約不適合責任(保証責任、かつては瑕疵担保責任と呼ばれていたもの)

第三者の生命・身体・財産への侵害

第三者の知的財産権への侵害

責任制限

 

読んでいて、「あれ?そうだったけ?」などと思った方は、リンク先である個別の解説のページを読んでいただければ、良い復習になると思います。

 

では、早速はじめたいと思います!

 

まず、ざっと、EPCコントラクターの責任について時系列でまとめた下の図を見てみましょう。

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では、解説します!

 

1. リスクの負担

検収前にどちらの当事者の責めにも帰さない事由でプラントやそれを構成する機器が毀損・消滅した場合には、EPCコントラクターは、無償で修理したり、機器を製造し直したりしなければなりません。

(上の図では「危険の負担」となっておりますが、正しくは「リスクの負担」です。)

 

これは、プラントの検収までの間は、EPCコントラクターがプラントについてのリスクを負担しているからです。

 

もっとも、例外的に、保険を付けることができないような事由の場合にはオーナーが危険を負う、という定めになっているのが通常です。

 

リスクの負担の詳しい個別の解説はこちら

 

2. 納期遅延

EPCコントラクターは、納期までにプラントの検収を完了させる義務があります。

 

それに遅れたら、納期遅延の責任を負います。

 

具体的には、納期LDをオーナーに対して支払わなければなりません。

 

LDとは、liquidated damagesの略で、日本語では、「予定された損害賠償額」と呼びます。

 

この納期LDについてEPCコントラクターが注意しなければならないポイントは、以下の通りです。

(1)   納期LDはsole and exclusive remedyである旨を必ず明記する

(2)   納期LDには上限を設けるべき。契約金額の20%~30%程度が相場だと思われるが、業界にもよるので調査の上で設ける

(3)   納期LDの料率(1日の遅れ当たりいくら支払うべきか)は、納期遅延によってオーナーが被ることになる建設中の利息に基づいて検討する

 

納期遅延の詳しい個別の解説はこちら

 

3. 性能未達

性能試験を行った結果、EPCコントラクターが保証している保証性能値を満たすことができなかった場合には、EPCコントラクターは次のような責任を負う。

 

(1)   最低性能保証を満たしていない場合

最低性能保証を満たすために必要な修理・交換を行う(性能LDを支払うことで責任を果たしたとすることはできない)。

 

(2)   最低性能保証は満たしている場合

保証性能値を満たすために必要な修理・交換を行うか、または、性能LDを支払うかのどちらかを選択する。

 

この性能LDについてのEPCコントラクターが注意するべきポイントは以下の通り。

(1)   性能LDはsole and exclusive remedyであることを明記する

(2)   最低性能保証を満たしたが、保証性能値を満たせていない場合に、修理をするか、または性能LDを支払うかの選択権は、EPCコントラクターが持つようにするべき

 

性能未達の詳しい個別の解説はこちら

 

4. 契約不適合責任

プラントの検収後、保証期間内にプラントに不適合が発見された場合には、EPCコントラクターは、その不適合を無償で修理・交換しなければならない。

 

この契約不適合責任についてEPCコントラクターが注意するべきポイントは以下の通り。

 

(1)   不適合の定義は、「EPC契約書の仕様書の定めとの不一致」と明記する。

(2)   黙示の保証を排除し、EPC契約書に定められた内容しか保証しない旨を明記する。

(3)   契約不適合責任期間中に修理した部分については、保証期間が延長されることになるのは当然だが、だからといって、無制限に繰り返し延長されないように契約書を手当てする

 

契約不適合責任の詳しい個別の解説はこちら

 

5. 第三者の生命・身体・財産への侵害

EPCコントラクターによる契約履行が原因で第三者の生命・身体・財産を侵害した場合には、その第三者からオーナーに対する責任の追及について、EPCコントラクターが免責する。

 

6. 第三者の知的財産権への侵害

EPCコントラクターによる契約履行において、第三者の知的財産権を侵害した場合には、その第三者からオーナーに対する責任追及について、EPCコントラクターが免責する。

7. 責任制限について

(1)   責任上限規定

EPC契約についてのEPCコントラクターの責任は、一定の金額を上限とする条文が定められるのが通常。これをlimitation of liabilityといい、略してLOLと呼ぶ。これが明記されていない場合には、必ず追記するべき。

 

なお、仮にLOLが定められていても、重要なのはその中身で、不当に色々な責任がLOLの対象外とされている場合もあるので、その点は十分チェックする

 

(2)   逸失利益の免責規定

 

EPC契約についてのEPCコントラクターの責任は、逸失利益等の間接損害の賠償を免責する条文が定められるのが通常。これが明記されていない場合には、必ず追記するべき。

 

なお、仮にこの条文が定められていても、重要なのはその中身で、不当に色々な責任が対象外とされている場合もあるので、その点は十分チェックする

 

責任制限の詳しい個別の解説はこちら

 

いかがでしょうか?

 

慣れるまでは、何度か解説や実際の条文を読む必要があると思いますが、繰り返し読み込むことで、必ず、何も見ないで重要ポイントを空で全て言えるようになる日が来ます。そうなると、EPC契約の検討のスピードもより速く適切にできるようになると思いますので、諦めずに頑張ってください!

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

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EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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