英文契約書における「費用の負担」についての表現

      2019/11/22

 

 

今回は、費用の負担に関する表現をご紹介したいと思います。

 

契約書には、契約当事者の義務がたくさん定められています。

 

通常、その義務を果たすためにかかる費用は、その義務を行うように求められている当事者が負います。

 

例えば、売買契約において、製品を買主のところまで持ってくるのが売主の義務である場合には、次のように定められています。

 


The Seller shall deliver the Product to the Purchaser by the date set forth in purchase order.

 

ここで、売主が買主のところまで製品を運ぶことが売主の義務として契約書のどこかに定められている場合には、その運ぶためにかかる費用も契約金額の中に含まれていることは明らかので、あえて「この運ぶ費用は売主の負担です」という表現は記載されないのが通常です。

 

しかし、あえてこのような、「誰の費用負担か」を明記する場合があります。

 

例えば、製品の保証期間中に、買主に納入した製品に欠陥が発見された場合に、それを売主は修理・交換する義務を負っていますが、その際には、以下のような定めになっていることがあります。

 

The Seller shall repair or replace the defective part of the Product at its cost.

 


これは、「売主は、自己の費用で、製品の欠陥部分を修理または交換しなければならない」という意味です。

 

保証期間中の欠陥の修理・交換なので、売主がそのための費用を負担するというのは当然と言えば当然ですが、このように明示することがあります。

 

また、あえてどちらがその費用を負担するのか明示しないとわからないという場合にも、このat one’s costという表現は使用されますので、覚えておくと便利です。

 

この表現を覚える際の注意点は、on one’s costというように、使われる前置詞はonではなく、atだという点です

 

また、これは、at one’s cost and expenseat one’s own expenseと書く場合もありますが、どれも同じ意味です。必ずcostsとexpensesを両方書いておかないとダメ、ということはなく、片方だけ書けば足ります。また、ownはあってもなくてもone’sという表現があれば足ります。

 

英文契約書を読んでいるときに、at one’s (own) cost (またはexpense)という表現が出てきたら、本当にその費用負担は自社でよいのか?という視点で確認するようにしていただければと思います。

 


目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得