EPC契約における瑕疵担保責任②
オーナーによるコントラクターへの通知義務
瑕疵が瑕疵担保保証期間中に発見されたら、コントラクターは無償で修理・交換等をしなければなりません。
ここで、コントラクターとしては、一つ条件を付けたいところです。
例えば、瑕疵担保期間後にオーナーがプラントに瑕疵を発見したとします。
これは、コントラクターの瑕疵担保保証責任の範囲外になります。
よって、コントラクターは、有償で、この瑕疵の修理・交換等を行うことができます。
しかし、オーナーがこう主張してきたとします。
「この瑕疵は、実は瑕疵担保期間中に発見したんだ。ただ、ちょっとコントラクターに連絡するのが遅れてしまっただけなんだ」
こうなると、果たして、その瑕疵が本当に瑕疵担保期間中に発見されたものなのか、それとも瑕疵担保期間経過後に発見されたものなのかについて、コントラクターとオーナー間で争いとなります。
もしかすると、コントラクターの方がオーナーに押し切られて、本当は瑕疵担保期間経過後に発見された瑕疵なのに、無償で修理させられることになるかもしれません。
このような事態になるのを防ぐために、次のような条文にするとよいと思います。
「オーナーが、瑕疵担保期間中にプラントの瑕疵を発見後、○日以内に、その瑕疵の性格およびその証拠をコントラクターに書面で通知した場合には、コントラクターは、自己の費用で、瑕疵を修理・交換等しなければならない」
ここでポイントとなるのは、「瑕疵発見後一定期間内のオーナーによるコントラクターへの通知」を、「コントラクターが責任を負う条件とする」ことです。
つまり、もしもオーナーがコントラクターへのこの通知を怠った場合には、コントラクターの責任は生じないことにすることです。
この点、単に、「オーナーは、瑕疵を発見後、○日以内に、その瑕疵の性格およびその証拠をコントラクターに書面で通知しなければならない。」という条文を入れただけでは、仮にオーナーがコントラクターへの通知を怠った場合でも、依然としてコントラクターが無償で瑕疵を修理・交換する義務が認められる可能性がありますので、注意してください。
ここで、「オーナーがコントラクターへの通知を怠っただけでコントラクターの瑕疵の修理・交換等の責任が問われなくなるのはコントラクターに有利過ぎないか?」との反論がオーナーからあるかもしれません。
しかし、このような条件を付けないと、上述のように、瑕疵担保期間経過後に、「実は瑕疵担保期間中に瑕疵を発見していたのだが、コントラクターに連絡するのを忘れていた」といったしらじらしい嘘をオーナーがついてきた場合にも、コントラクターは無償で対応しないといけなくなる可能性があります。
オーナーにとっても、瑕疵を発見してから速やかにそのことをコントラクターに通知することは、さほど困難なことではないはずですから、このような条件をコントラクターの瑕疵担保保証責任につけることは、両当事者にとって公平なことだと思います。
コントラクターによる運転データへのアクセス権
さらに、コントラクターにプラントの運転データへのアクセス権を付与する条文を定めるべきです。
これは、オーナーが「コントラクターが責任を負うべき瑕疵だ」と言っているものについて、「本当にコントラクターが責任を負わないといけない瑕疵なのか」をコントラクターが確認できるようにするためのものです。
運転データを見れば、オーナーが不適切な運転をしていなかったかどうかを確認することができます。もしも不適切な運転をしていたことが分かれば、それは前回ご説明した、「コントラクターが責任を負わなくてもよい瑕疵」となります。
瑕疵担保責任に関心がある方はこちらもお勧めです。
EPCコントラクターの下請けとして機器供給する契約の注意点(その①)保証期間の定め方
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EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
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納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 | 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 | 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。 |
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |