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本郷塾で学ぶ英文契約

Scope of Work(スコープオブワーク)の重要事項

2024/02/20
 
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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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ここでは、次の事項について初心者にもわかりやすく解説いたします!

  • スコープオブワークとは何か?
  • スコープオブワークの条文のチェックポイント
  • スコープオブワークの条文の注意点は?
  • 見積り落ちのリスク

 

スコープオブワークとは?

スコープオブワークは、英語ではScope of Workと書きます。

 

日本語にすると、「仕事の範囲」ですね。

 

つまり、請負人であるコントラクターが、このEPC契約に基づいて、一体何を注文者であるオーナーに提供しなければならないのか?が定められているのです。

 

お手元にEPC契約がある方は、このScope of Work(または、Scope of Supplyというタイトルかもしれません)の条文を見てみてください。

 

いかがでしょうか、コントラクターがしなければならないことがずらずらと列挙されているのではないでしょうか?

 

例えば、次のようなことが定められていると思います。

 

「コントラクターは、プラントの設計、製造、調達、建設、組み立て、据付調整、試験を、契約書、およびその仕様書に従って行わなければならない。」

 

そして、このような条文に続いて、さらに、「あれもやれ、これもやれ」と、途中で読むのがいやになるほど詳細に列挙されているのではないでしょうか。

 

そうしてようやく読み終えてみて、結局この条文に書かれていることは何のか?と考えてみると、つまりは次のようなことになると思います。


「コントラクターは、一部の例外を除いて、プラントを運転するために必要な全ての作業をこなさなければならない。」

 

これは考えてみれば当然のことです。

 

EPC契約とは、そもそも、コントラクターが設計から建設をして、運転開始できる状態になるまで全部こなすというのが原則です。それをこのスコープオブワークの条文は、明確に、そして具体的に述べているのです。

チェックポイント

では、この条文の何をチェックする必要があるのでしょうか?

 

まず、「コントラクターの仕事として定められている事項は具体的に何か?」を一つ一つ確認することです。

 

おそらく、EPC契約の本文は、添付資料(仕様書=specifications)を引用し、そこにより詳細なScope of Workを記載しているはずです。

 

よって、その添付資料も含めて、「本当にこれらはコントラクター側でやるものなのか?」を社内で検討します。その際には、主には技術部門の方に確認していただく必要があるでしょう。

 

もしもその中に、「これはオーナーにしてもらう必要があることだ」といった事項があれば、そこから外すという修正をする必要があります。

スコープオブワークの注意点

ここで、一つ注意が必要なのは、「契約書の本文や、添付資料中に、「これはコントラクターのスコープだよ」と明記されていない事項だからといって、コントラクターの仕事ではないとは言い切れない」ということです。

 

どういうことかといいますと、このスコープオブワークの条文には、概ね、次のような意味のことが定められていることがほとんどなのです。

 

「この契約書にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、本来的、または慣習的にプラントの完成のために必要となる作業(または、プラントの完成のために必要だと合理的に推測される作業)は、オーナーの仕事と明記されていない限り、それはあたかも、コントラクターの仕事であると契約書に定められているかの如くに扱われる。」

 

英文では、以下のような条文です。

If any services, functions or responsibilities not specifically described in this Agreement are an inherent or customary part of the Scope of Work, or are required for proper performance or provision of the Plant in accordance with this Agreement, they are included within the Scope of Work to be delivered by the Contractor, as if such services, functions or responsibilities were specifically described in this Agreement, unless such services, functions or responsibilities are expressly designated in this Agreement as the responsibility of the Owner.

 

「・・・何これ?」と、初めてEPC契約を読まれた方は、このように思うのではないでしょうか。私はそう思いました。だったら、コントラクターのスコープをいちいち列挙していたのは何のためなのだ?と。

 

結局、この条文があることで、ほぼ、次のようなことが言えると思います。

契約書中に、「これはオーナーがやる仕事ですよ」と明記されていない事項は、全部コントラクターの仕事になる。」図にすると以下のようなイメージです。

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この類の条文は、EPC契約のモデルフォームであるENAAやFIDICにもあります。また、これまで私が見てきたEPC契約書にもほぼ必ず入っていました。そのため、おそらく、この点はEPC契約ではもはや当たり前の条文、広く受け入れられている条文ということなのではないかと思います。

 

では、このような条文が入っているScope of Supplyにおいて、何を注意する必要があるでしょうか?この点、私は次の点が重要だと思います。

「技術部門も営業部門も、EPC契約のスコープは、「オーナーの仕事です」と明記されているもの以外は、全部コントラクターの仕事になるということを十分に理解の上、自社の仕事の内容を正確に理解し、決して見積もり落ちがないようにする。具体的には、オーナーの仕事の範囲が不明確な場合には、契約締結前にオーナーにしっかりと確認をして、どちらが担当するべき仕事なのか曖昧な点はなくす。」

 

この点、「契約書に「コントラクターの仕事と明記されているものだけがコントラクターの仕事である」というように契約書を修正してはどうか?」という考えもあるかと思います。

 

もちろん、それができればそれに越したことはありません。

 

しかし、このような修正がオーナーに認められることはほとんどの場合でないのではないかと私は思います。オーナー側は、自分達の仕事の範囲が不明確なものになるのを嫌がるはずだからです。そして、EPC契約では、基本的にはオーナーの方が、立場が強いことが多いと思いますので、そのような修正は拒否されることの方が多いと思います。

 

そのため、コントラクターとしては、「プラントを完成させるために必要な全ての仕事を理解した上で、そこからオーナーの仕事であると明確に定められている事項を除いた部分とは何か?を正確に把握した上で、契約金額の見積もりを行う」ということが、現実的な対応方法になるかと思います。

見積もり落ちのリスク

もしも、見積もり落ち、つまり、本当はコントラクターのScope of Workに含まれるのに、それは含まれないと勘違いし、契約締結後になって、「実はそれはコントラクターの仕事だった」となると、その分の仕事は、コントラクターが自費で行わなければならなくなります。

オーナーがその分の費用を負担してくれることはありません。

この金額があまりに大きいと、コントラクターはコスト・オーバーランに陥る可能性も出てきます。

コスト・オーバーランに陥ると、もはやそのEPC契約案件を遂行しても、当初計画していたような利益を出すことができなくなってしまいます。

それを避けるために、もっとも注意しなければならないのは、このスコープオブワークで、自社が遂行することを義務付けられている範囲を正確に把握することになります。

 

まとめ

以上をまとめると、以下のようになります。

  • スコープオブワークの条文と添付資料を読み込み、オーナーにしてもらうべき事項を見つけたら、そのように契約を修正する。
  • EPC契約においては、「この契約書にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、本来的、または慣習的にプラントの完成のために必要となる作業(またはプラントの完成のために必要だと合理的推測できる作業)は、オーナーの仕事であると明記されていない限り、それはあたかも、コントラクターの仕事であると契約書に定められているかの如くに扱われる。」という条文が定められていることがほとんどであるので、契約書本文や添付資料にコントラクターのスコープだと明記されていなくても、自社のスコープになるものがあるということを十分に理解の上で、見積もり落ちがないように注意する。これは、技術部門と営業部門に十分に理解してもらうことが実務上重要になる。

 

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EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

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