クリティカルパスは時々刻々変化する!~建設契約の納期延長と追加費用のクレーム②~
2022/09/16
前の記事で、クリティカルパスとは如何なるものかは何となく理解して頂けたと思います。
ここで、特に認識していただきたいことがあります。
それは、「クリティカルパスは、常に同じというわけではない」ということです。
これは、かなり意外に感じる人も多いかもしれません。
しかし、事実です。
この点をわかっていないと、コントラクターによるオーナーへの適切なクレームが難しくなるので、しっかり理解しておきましょう。
クリティカルパスが変化することを確認しよう!
契約締結時、つまり、仕事を開始する時点では、クリティカルパスは、以下の工程表にあるようにS1の工程でした。
S2の工程上の仕事も、S3の工程上の仕事も、多少遅れが生じても、納期には影響がでませんが、S1の工程上の作業は1日でも遅れたら、納期が遅れるからです。
ここで、工事開始後1カ月経過したときに、例えばForce Majeure(不可抗力)が原因で、S2の工程上の仕事bが大幅に遅れたとします。
その結果、全体の工程が以下の図のように変化したとします。
すると、どうでしょう?
S2の工程がクリティカルパスに変化しました。
S1は、新たな完成予定時期に間に合うようにするには、いくらか遅らせることができることになったのです。
一方で、S2はここから1日でも遅れたら、完成時期がさらに遅れることになります。
この場合、クリティカルパスは、契約締結から1ヶ月経過時点まではS1だったのですが、S2の工程上に仕事bがForce Majeureで遅れたことで完成予定時期が遅れ、その結果、S2が新たにクリティカルパスになったというわけです。
よって、これより後は、S1やS3の工程上の仕事が多少遅れても、コントラクターは納期延長クレーム(EOTクレーム)をすることができない(する必要がない)という状態になります。
ダイナミックとは?
このように、クリティカルパスが工事期間中に変化することを、dynamic(ダイナミック)と表現することがあります。
ダイナミックというと、例えば、「ダイナミックに変化する」という感じで日本語では使われます。
これは、「劇的に変化する」といった意味でしょうが、実は、もともと英語のdynamicには、「変化する」とか「動的な」という意味があるのです。
よって、「クリティカルパスはダイナミックなものだ」というときは、「クリティカルパスは、工事期間中一定ではなく、刻刻変化し得る(契約締結時にクリティカルパスと見えたものが、その後クリティカルパスでなくなることがある。)」という意味です。
クリティカルパスは、工事中に刻々変化するものである、という点を押さえておきましょう。
これは、コントラクター(請負者)がオーナー(発注者)に納期延長のクレームをする際に、とても重要になるポイントです。
次は、クリティカルパスと合わせて押さえておきたい「フロート(トータルフロート)」についての解説です!