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本郷塾で学ぶ英文契約

EPC契約におけるコストプラスフィー契約の注意点を押さえよう!

2024/11/26
 

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コストプラスフィー

 

コストプラスフィー契約とは、契約締結時において、オーナーがコントラクターに対して支払う総額が固定されず、コントラクターが仕事を完成するまでに実際に生じた費用に、予め合意された割合分を足した金額をオーナーがコントラクターに対して支払うという方法をとる契約のことをいいます。

 

もっとも、全ての仕事についてコストプラスフィーとするよりも、一部の仕事だけコストプラスフィーとすることが多いかもしれません。

 

なぜなら、仕事の中には、予め総額を決めやすいものと、決めにくいものがあり、前者についてまでコストプラスフィーとする必要はないからです。

 

つまり、ある一定の仕事については固定価格(Fixed Price)とし、残りの仕事をコストプラスフィーとするのです。

 

コストプラスフィーの例文

そのような仕組みとなる例文を見てみましょう。

 

  1. Fixed Price

Owner and EPC Contractor agree that EPC Contractor shall be paid for all Engineering Services and [ ] for a fixed price, as provided in Exhibit X.

  1. Cost plus Fee

Owner and EPC Contractor agree that EPC Contractor shall be paid in accordance with Exhibit Y for all Construction Work, excluding Engineering Services and [ ] included in Exhibit X.

 

まず、上記の1つ目の例文は、Fixed Price部分を定める条文です。ここでは、Engineering Serviceと、添付資料Xに定められる仕事([]内に具体的に仕事の内容を記載します)がFixed Priceとなることを定めています。

そして、2つ目の例文は、Engineering Serviceと添付資料Xに定められている仕事を除くConstruction Workを添付資料Yに従って支払うことを定めています。このConstruction Workがコストプラスフィーで支払われる仕事となるのですが、その点は以下の添付資料Yに具体的に定めています。

 

Exhibit Y

1. Construction Costs/Pass-Through + 4.5%

For the performance of the Work, EPC Contractor shall be paid the Cost of the Construction Work, plus a fee of four and one half percent (4.5%) of the Cost of the Construction Work (the “Contractor’s Fee”).

2. As used herein, the term “Cost of the Construction Work” shall mean the following actual costs necessarily and reasonably incurred by EPC Contractor in the performance of the Work.

(a) [具体的に仕事を記載]

(b) [具体的に仕事を記載]

(c) [具体的に仕事を記載]

3. Owner acknowledges that EPC Contractor’s budget for the Cost of Construction Work, as set forth in Exhibit Z, is merely an estimate and subject to change.

 

添付資料Yの1つめの例文では、コストに載せるフィーを、Construction Workにかかるコストの4.5%と定めています。

 

次に、2つ目の例文では、コストプラスフィーの「コスト」に当たる部分であるConstruction Workのコストとは具体的に何か?を定義しています。ここでは、(a)~(c)に列挙する仕事をConstruction Workとしています。これが、実際に生じた費用を支払ってもらえることになる条文です。

 

さらに、3つ目の例文では、添付資料Zには、Construction Workにかかる費用の予定を記載することにしています。ここに記載された金額は、あくまで予定に過ぎず、これを越えても、コストプラスフィーとしてコントラクターはオーナーから支払いを受けることができます。ただ、この予定よりも増えた場合、オーナーは「なぜ増えたのか?」を説明するようにコントラクターに求めてくることになるでしょう。その理由次第では、オーナーが支払を拒むこともありえます

 

なお、この他に、コントラクターには、コストプラスフィーが適用されるコスト部分の証拠記録の保管とオーナーへの開示義務が定められるのが通常です。

これは、コントラクターが実際にかかったコスト以上の金額を請求していないか、または、本来妥当とされる金額以上のコストがかかっていないかをオーナーが確認できるようにするためです。

 

コストプラスフィーの注意点

ここで注意したいのが、添付資料Yの2つ目の例文の「以下の仕事のためにコントラクターに生じる必要かつ合理的な金額」を、オーナーが支払うべきthe Cost of the Construction Workとしている点です。

記録次第では、「コントラクターに生じる必要かつ合理的な金額」ではない、となる可能性もあるのです。その場合、コストプラスフィーに関する条文の適用を受けない=支払い対象外=コントラクターが負担することになる、という結果になり得ます。

 

以上からわかるように、コストプラスフィーは、「なんでもかんでも、コントラクターに生じた費用を全部オーナーが支払ってくれる方法」ではありません。

必要かつ合理的な費用」が支払われるものです。

コントラクターは、この点を忘れず、適切に仕事を遂行し、下請などからは相見積もりをとり、なぜその金額になったのか、それが合理的といえるのかをしっかり説明できるようにしましょう。

 

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

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Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

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