EPC契約におけるオーナーによる追加費用の負担
オーナーに対して追加費用を請求できる主な場合
EPC契約におけるオーナーの義務の最たるものは、コントラクターへの契約金額、つまり対価の支払いです。
この契約金額に加えて、コントラクターに生じた追加費用をオーナーに負担してもらうべき場合としては、以下のようなものがあります。
- オーナーが仕様変更をコントラクターに命令し(Change Order)、その仕様変更命令に従うことによって追加費用が生じる場合
- オーナーがコントラクターの作業を中断するように命令し、その中断によってコントラクターに追加費用が生じる場合(ただし、作業を中断するようにオーナーが命令したのはコントラクターに原因があるわけではない場合)
- コントラクターが契約上の義務を履行する上で適用される法律や規則等が変更となり(税法も含む)、その変更に伴ってコントラクターに追加費用が生じる場合
- オーナーが自己の義務に違反し、それによってコントラクターに追加費用が生じる場合
上記が、オーナーがコントラクターに生じた追加費用について負担するべき事項の代表的なものです。
コントラクターがEPC契約においてもっとも避けたいのは、コスト・オーバーランに陥ることです。
この追加費用を適切にオーナーに負担してもらうようにしないと、簡単にコスト・オーバーランに陥ってしまいます。
上記のような場合に、コントラクターが追加費用を請求できる旨、および、その請求するための実際の手続きが明確に定めてあるかをぜひ確認するようにしてください。
また、この追加費用のオーナーへの請求権は、「コントラクターターがオーナーに対して請求できるようになった日から一定期間内に行使しないと消滅する」といったことが定められていることが多いです。
そのため、契約にこの追加費用請求権についての定められているだけで安心することはできず、実際の運用の際にも、その期間や請求する際の条件に特に気を配るようにしてください。
『英文EPC契約の実務』は、お陰様で出版から6度の増刷となっております。
この本は、
・重要事項についての英語の例文が多数掲載!
・難解な英文には、どこが主語でどこが動詞なのかなどがわかるように構造図がある!
・もちろん、解説もこのブログの記事よりも詳しい!
・EPCコントラクターが最も避けたい「コストオーバーランの原因と対策」について、日系企業が落ちいた事例を用いて解説!
・英文契約書の基本的な表現と型も併せて身につけることができる!
ぜひ、以下でEPC契約をマスターしましょう!
EPC契約のポイントの目次
【私が勉強した原書(英語)の解説書】
残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。
原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。
EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 | 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 | 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。 |
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 | 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 | 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。 |
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |