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本郷塾で学ぶ英文契約

サイトに関する情報は、その正確性に気を付ける!

2024/01/04
 

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サイトに関する情報

 

今回は、「サイトに関する情報」についての注意点について解説します。

 

「サイトに関する情報」とは、例えば、サイトの土地の状況とか、土地の下に何があるかといった情報です。

 

私が今まで見てきたEPC契約では、オーナーが一定のサイトの情報を提供する義務を負っているものの、同時にコントラクターが自分でサイトを見に行ってその状況を確認することが求められているものが多いです。

 

このサイトに関する情報についてまず問題になるのは、コントラクターは、実際に入手していた、または入手できたはずのサイトの情報については、原則として、契約締結後に、「サイトに関する情報で知らないものがあった。よって、契約金額を変更させてほしい」と言えないようになっていることが多いということです。

 

そのため、サイトには実際に行き、建設する際に追加の作業が必要になるものがないか、契約締結前に自社で十分に確認をすることが実務上必要になるでしょう。

 

2点目は、オーナーから提供されたサイトに関する情報の正確性です。

 

普通は、こう考えるのではないでしょうか。

 

「オーナーがくれた情報なのだから、その正しさを信頼してもよいはずだ。もしも、契約締結後にオーナーがくれた情報に誤りがあったことがわかり、それによって、コントラクターが考えていた工程が変わるとか、追加で作業が必要になって、追加費用が生じるような場合には、オーナーがそれを負担してくれるはず。」

 

そうですよね。オーナーがくれた情報に誤りがあったら、その責任はオーナーに取ってもらいたい、そう思いますよね。

 

しかし、実際は、そのような扱いにはなっていないEPC契約があるように思います。

 

つまり、「オーナーがコントラクターに与えたサイトの情報に誤りがあった場合でも、その誤りについて、オーナーは責任を負わない」といった扱いになっていることが多いと思います。つまり、オーナーはサイトに関する情報を、コントラクターに対して参考情報として提供しているのであって、その情報の正しさはコントラクターで十分に確認するべき、という扱いになっているのです。

 

よって、納期も延長されないし、追加費用もコントラクターが自分で負担しなければならなくなります。

 

どうしてこのような扱いになっているのでしょうか?

 

それは、EPC契約は、とにかく、最初から最後まで、原則としてコントラクターが自己の責任として作業を遂行するべき、という基本思想があるからだと思われます。

 

コントラクターの取るべき対応

 

この点、このサイトに関する情報の正しさについて、オーナーに保証してもらう、という交渉をすることもあり得ると思います。そのサイトにプラントを立てたいと考えたのはオーナーですし、海外にいるコントラクターからしてみるとサイトに関する情報にアクセスしやすいのは、どう考えてもオーナーの方です。

 

しかし、オーナーも素直にこれを認めてくれないかもしれません。オーナーの方が立場が強いことが多いEPC契約の交渉においては、コントラクターがこれをのまざるを得ない状況になることもあると思います。

 

このため、コントラクターは、次のような対応をとることが必要になるでしょう。

 

「オーナーがくれたサイトに関する情報を、そのまま鵜呑みにしてはならず、「本当にこの情報は正しいのか?」という観点から、その正しさを確認する必要がある。」

 

こうなると、「初めからオーナーの情報なんていらないよ」と思われるかもしれませんが、そうとは言えないと私は思います。

 

というのも、全く何の情報も与えられないのと、その正しさをコントラクター側で確認する必要があるとしても、一応、そのとっかかりとなるような情報を与えられるのとでは、コントラクターの負担は全く違うと思うからです。

 

それに、オーナーも、あえて虚偽のサイトに関する情報をコントラクターに渡そうと思っているわけではないでしょう。オーナーは、万が一その情報が誤っている場合でも、自分たちは責任を負いたくない、というだけなのです。あえて虚偽の情報をコントラクターに渡して、工程を遅らせることで、オーナーにも何のメリットもないのです。

 

そのため、オーナーがコントラクターに提供するサイトに関する情報は、基本的には正しいものであるはずです。しかし、オーナーは責任を取りたくないために、正確性までは保証できない、という条文が定められてくることが多いのだと思います。

 

まとめ

サイトに関する情報については、以下を注意しましょう。

 

「実際に入手したサイトの情報」のみならず、「入手できたはずの情報」に基づいて契約金額が合意されたという扱いになるので、契約締結前に実際に現地に行ってサイトを調査する必要がある。

 

オーナーが提供した情報の正確性をオーナーが保証しないという扱いになっている場合がある。その条文を修正できない場合には、オーナーがくれた情報に誤りがあっても、それによる納期の延長も追加費用もコントラクターは得られないので、オーナーが提供した情報の正確性も十分に確認することに努める。

 

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EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

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