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本郷塾で学ぶ英文契約

プロジェクトファイナンス①

2024/01/05
 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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企業法務2年目のタマは、先輩社員ハチに、何か相談したいことがあるようです。

 

プロファイとは?

タマ
実は今日、私が担当しているEPC案件の説明を営業部門の人から受けたのですが、一つよくわからないことがありまして・・・
ハチ
へ~、もう大分EPC契約のチェックはできるようになってきたはずなのに、何がわからなかったの?
タマ
EPC契約そのものは大分読めるようになってきたのですが、営業の人が、「プロファイ」がどうこうって話していて・・・。そのあたりが全く分からなかったんです
ハチ
なるほど!「プロファイ」ね~。そのあたりはまだ教えていなかったね
タマ
それで、営業の方に、「プロファイって何ですか?」って聞いたんです。そしたら、「「プロジェクトファイナンス」って知らない?まあ、EPCメーカーの僕らにはあまり関係ないことだから気にしないで」って言われて・・・。

そういわれると、余計気になるんですよ。もしかしたら、EPC契約の検討の際に何か考慮するべきことがあるかもしれないし・・・

ハチ
webとかは見てみた?
タマ
ざっと見てみたのですが、メインバンクのホームページには色々書かれていました。でも、関係する当事者が多くて、図が複雑で、さらに、説明中の言葉が私には専門的過ぎて難しくて、挫折してしまったんです。もしもご存知でしたら、プロジェクトファイナンスがどういうものなのか、教えて欲しんですけど・・・

というわけで、二人はホワイトボードがある部屋に行き、プロジェクトファイナンスについて話をすることになりました。

 

ファイナンスについて

ハチ
そもそも、「ファイナンス」とは何か知ってる?
タマ
「ファイナンス」とは何か、ですか?はじめから難しい質問ですね。お金にまつわる何かだとは思うのですが・・・。すみません!わかりません。教えてください!
ハチ
「ファイナンス」とは、一般的に、「企業による資金調達」を指すんだよ。企業が何かしようとしたら、必ずそのためのお金が必要になるよね?

例えば、何か製品を製造したければ、その材料を買わないといけない。製造にかかわる人を雇わないといけない。その材料の費用や人の給料を払うためにお金が必要になるよね。そのためにどこかからお金を集める必要があるよね。このお金を集める行為を、「資金調達」といい、英語では「ファイナンス」と言うんだよ

タマ
なるほど~。「お金集め」のことを「ファイナンス」って言うんですね
ハチ
そう。では、「企業の資金調達」、ここでは、株式会社の「ファイナンス」には、どういうものがあるか考えてみよう。どんなものがあると思う?
タマ
株式会社がお金を集める方法といえば・・・、株式を新たに発行することで、株券を買ってもらう方法があると思います。つまり、「新株発行」がそうじゃないかと
ハチ
それも一つだね。新株を発行すれば、その株を買った人からお金を集めることができるからね。他には?
タマ
 他には・・・「社債」とか?  
ハチ
おっ、結構難しい言葉を知ってるんだね!そう。社債もそうだよ。ちなみに、新株発行と社債の違いは知ってる?
タマ
 え~と、新株発行は、株券を交付したことでお金を得るので、そのお金を返す必要はないですが、社債の場合は、広く一般の投資家からお金を借りているということなので、利子をつけて返す必要がある、というのが一番の違いだと思います  
ハチ
そう!その通り。新株発行と社債の一番の違いは、返済義務の有無なんだよ。では、他の資金調達の方法はないかな?もっとよくある方法なんだけど
タマ
 もっとよくあるお金集めの方法?・・・ヒントください!  
ハチ
ヒントは、「会社に限らず、個人でもすることがあるもの」と言えば何か思い浮かぶかな?
タマ
 個人がするお金集め・・・?もしかして、「借金」ですか?  
ハチ
そう。銀行などの金融機関からお金を借りることだね。銀行からしてみると、お金を融通すること、つまり、「融資」というんだ。そしてこれから説明する「プロジェクトファイナンス」とは、「融資の一つ」なんだよ。つまり、企業がお金を借りるんだ
タマ
 へ~、「プロジェクトファイナンス」は融資の一つなんですね。じゃあ、いよいよ、「プロジェクト」について教えてください!  
ハチ
まあまあ、そう焦らずに。その前にまた一つ考えてほしいことがあるんだ
タマ
え~、また質問ですか?

 

プロジェクトファイナンスの最大の特徴

ハチ
これは「プロジェクトファイナンス」とは何か?に関わる重要な点だから、真剣に考えて欲しいんだ。お金を貸す立場、そう、銀行の立場になってみて欲しんだけど、普通、お金を誰かに貸す場合、一番何に注意すると思う
タマ
 お金を貸す場合に注意することですか?う~ん、やっぱり、「ちゃんと返してくれるのかな?」という点じゃあないでしょうか?貸したお金が返ってこないと銀行は困りますよね  
ハチ
正解!そうなんだ。融資をする銀行にとって、「ちゃんと貸したお金に利息をつけて返してもらえるかどうか」が一番重要なんだよ。じゃあ、そのために、銀行はどうしていると思う?
タマ
 どうって・・・、お金を借りようとしている会社がちゃんと返せるだけの会社なのかを調べて・・・。あとは・・・そうだ!担保や保証人がいないとお金を貸さない、という風にするんじゃないでしょうか?お金を借りた人がお金を返せそうにない場合には、その担保にとったものや保証人から返済を受けられるようにすると思います!  
ハチ
その通り!さすがですね。返済を確実に受けられるようにしておくんだよ。特に、保証について説明すると、ある会社が銀行から融資を受ける場合、その会社の親会社や他の企業から返済についての保証を得ておけば、例え融資を受けた会社が何かの事情で返済できなくなったとしても、保証をしてくれた親会社や他の企業から返済してもらえるようにしておくんだよ。これは、銀行と保証人になる企業の間で、「保証契約」という契約を締結することでなされるんだよ

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タマ
なるほど~。担保にするものがなくても、あるいは、担保が十分な価値を持っていなくても、保証人をつけることで融資を受けられるようになるわけですね。  
ハチ
そうなんだよ
タマ
 それで、このことと「プロジェクトファイナンス」はどんな関係があるんですか?  
ハチ
プロジェクトファイナンスは、融資の場合に通常必要になる「保証」が無い、または、保証される金額が限定されているというのが、最大の特徴なんだよ。

 

ちなみに、この「保証がない」というのを、「ノン・リコース」というんだ。「リコース」は、英語で「請求権(遡及権)がある」という意味だよ。つまり、「リコース」の融資というのは、保証人に対して銀行が請求権を持っているという意味になる。一方、「ノン・リコース」の融資というのは、銀行が請求権を持っていない、ということなんだ。だから、プロジェクトファイナンスは、「ノン・リコース」、または、限定された「リコース」という意味で、「リミテッド・リコース」の融資なんだよ

タマ
 え!保証がない!?それじゃあ、銀行は貸したお金を返してもらえなくなるかもしれないじゃないですか!どうしてそんな融資があるんですか?  
ハチ
いい反応だね~。そう。プロジェクトファイナンスでは、銀行は、貸したお金を返してもらえなくなるリスクを負うんだよ
タマ
 銀行は、「返済」というもっとも重要な点について、どうしてあえてリスクをとるんですか?  
ハチ
それは、そのリスクは十分に自分たちでとることができるリスクだと考えているからなんだ。そして、リスクを負う分、得られる利益も大きいと考えているからだよ
タマ
リスクをとって、大きな利益を得る・・・? 
ハチ
ここから先は、具体的な事例を使って説明することにしよう。と、その前に、ここまでのおさらいをしよう

・「ファイナンス」とは、「企業による資金調達」のことを言う。

・ファイナンスには、大きく以下の3つがある。

新株発行
一般の投資家への社債の発行
銀行や金融機関から融資を受ける

・プロジェクトファイナンスは、この融資の中の一つ。

・その最大の特徴は、保証がない、または保証が限定的であるにも関わらずなされる点にある(ノン・リコース、またはリミテッド・リコースの融資)

・そして、銀行が保証を得なくても、あるいは限定的な保証であっても融資を行える理由は、銀行がそのリスクをとることができると考えていること、そして、その分利益を得ることができると考えているから。

ハチ
こんなところが、今までの説明のまとめだよ。ここまではついてこれてるよね?
タマ
はい!大丈夫です!!プロジェクトファイナンスが具体的にどのようなものなのか、ますます知りたくなってきました。続きをお願いします! 

 

EPCコントラクターからみたプロジェクトファイナンス
発電所建設事例
EPCコントラクターが注意するべき点

 

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・EPCコントラクターが最も避けたい「コストオーバーランの原因と対策」について、日系企業が落ちいた事例を用いて解説!

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ぜひ、以下でEPC契約をマスターしましょう!

 

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

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