EPC契約における作業中断権① 中断権の存在意義

      2017/06/03

 

EPC契約の中には、Suspensionという条項があるのが一般的です。

 

これは、「中断」を意味します。

 

EPC契約におけるコントラクターの義務の履行を中断する場合の定めです。

 

これは不思議な気がしないでしょうか?

 

本来、EPC契約は、納期までにプラントを完成させることを最大の目的の一つとしているはずです。

 

その目的を果たすためには、中断なんて不要なはずです。

 

EPC契約に定められている義務を、当事者で合意したスケジュールに従って粛々と遂行していくことがコントラクターに求められることです。

 

中断なんてしたら、納期までに間に合わなくなる可能性は大です。

 

どうして、「中断権」なんていう一見余計なものを定めているのでしょうか?

 

 

作業を中断される場合

 

EPC契約において、作業が中断されるのは、大きくは以下の2つの場合とされています。

 

①    オーナーが中断を望み、オーナーが中断をコントラクターに求める場合

②    オーナーのEPC契約上の義務違反があり、コントラクターが中断を求める場合

 

以下、説明します。

 

 

オーナーの作業中断権

 

まず、①についてです。

 

一般的に、「オーナーは、プラントの検収までの間に、いつでも、理由なく、コントラクターの作業を中断させることができる」とEPC契約中に定められています。

 

オーナーが具体的にいかなる理由で中断を望むのかはわかりません。ケースバイケースでしょう。

 

ただ、EPC契約履行中に何らかの事情の変更がオーナーにあり、急きょ、工程を遅らせたい、と考えた場合に、それができるように、上記のような中断権がオーナーに与えられています。

 

もっとも、オーナーが中断してほしいと考える理由が、コントラクターの契約違反等のコントラクターに原因がある場合もあります。

 

例えば、コントラクターが仕様書とは異なる設計や機器製造をしているのを、オーナーが気付いた時には、まずは作業を中断してコントラクターと協議したいと思うでしょう。

 

 

コントラクターの作業中断権

 

次に、②です。

 

EPC契約において、プラントを完成させるために必要な大部分の作業は、コントラクターが行うことになっております。

 

しかし、中には、オーナーの義務と定められているものもあります。

 

例えば、プラントを建設するためのサイトの占有権の取得、サイトへのアクセス権の取得、その他の許認可の取得等です。

 

これらは、コントラクターによるサイトでのプラント建設の大前提になるものです。

 

これらが確保されていないと、コントラクターはサイトで建設を行うことができません。

 

そこで、このようなオーナーの義務違反の場合には、コントラクターが自分の義務を遂行することができないので、作業を中断することができる、つまり、中断権がコントラクターに付与されるべきです。

 

さらに、EPC契約におけるオーナーの最大の義務と言えば、コントラクターへの対価の支払い義務です。

 

この対価を得るためにコントラクターは仕事をしているのです。

 

よって、コントラクターにとって、この対価の支払いをオーナーが滞らせることは、絶対に許せないことです。

 

もしもオーナーが、対価の支払いを滞らせた場合には、コントラクターはどうしたらよいでしょうか?

 

それは、「お金をくれないなら、もう仕事しないよ」とオーナーに伝えることでしょう。

 

つまり、この対価の支払いをオーナーが不当に滞らせた場合にも、コントラクターは作業を中断することができるようにしたいですよね。

 

中断されれば、納期までにプラントが完成されることを強く望んでいるオーナーは、対価を支払うようになるでしょう。

 

コントラクターにとっての中断は、オーナーに対価を支払わせるための武器でもあるわけです。

 

したがって、コントラクターとしては、対価の支払い義務をはじめとしたオーナーによるEPC契約義務違反があった場合に、中断権がコントラクターの付与されるのが通常です。

 

時々、オーナーに中断権が与えられているのに、コントラクターには与えられていないEPC契約を見ることがあります。

 

これは、オーナーの契約義務違反に対して、コントラクターに効果的な武器がないことになるので、ぜひ、コントラクターにも中断権が与えられているのかしっかりと確認し、もしも漏れていれば、明記するようにしてください。

 

次回は、中断権を行使した場合の効果について説明します。

 

EPC契約の流れ

Scope of Work

サイトに関する情報

オーナーの義務

契約金額の定め方と追加費用の扱い

追加費用の負担について

ボンドについて

入札保証ボンド

前払金返還保証ボンド

履行保証ボンド

瑕疵担保保証ボンド

ボンドのon demand性を緩和する方法

コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は?

仕事の遂行

設計(design)の条文について①

設計(design)の条文について②

仕様変更① 仕様変更とは?

仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項

仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い

プラントの試験①

プラントの試験②

プラントの検収条件と効果

危険の移転時期とその例外

債務不履行

納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合

納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ

納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限

納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy

納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD

性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験

性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD

責任制限条項① Limitation of Liability/LOL

責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合

瑕疵担保責任① 総論

瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権

瑕疵担保責任③ 保証期間の延長

瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項

作業中断権① 中断権の存在意義

作業中断権② 中断権行使の効果

不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か?

不可抗力の扱い② Force Majeureの効果

不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き

不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合

法令変更について

契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか?

契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除

契約解除③ オーナーの自己都合解除

契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除

契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合

私がEPC契約で真っ先に確認する点①

私がEPC契約で真っ先に確認する点②

私がEPC契約で真っ先に確認する点③

 

 - EPC契約のポイント