EPC契約における仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い

      2019/11/18

 

今回は、仕様変更についての注意点の2つ目、「オーナーとコントラクター間で、仕様変更に伴う納期延長期間または追加費用金額について合意に至らない場合」について説明します。

 

オーナーから仕様変更の求めがあり、コントラクターがその影響度合いを検討し、書面でオーナーに対して、納期延長と追加費用の金額を提出しました。

 

しかし、オーナーは、コントラクターの提示した内容に不満でした。

 

つまり、「そんなに長期間かからないだろう、そして、そんなに追加で費用はかからないだろう」と思ったわけです。

 

そうしてオーナーとコントラクター間で協議がなされました。

 

しかし、一向に両者は合意に至りませんでした。

 

この場合、どのような扱いになるのでしょうか。

 

 

オーナーによる仕様変更要求に潜むリスク

 

コントラクターとしてみると、延長される納期と追加費用金額について合意されない以上、「仕様変更要求に応じなくてもよい」という扱いにしてもらいたいところです。

 

しかし、通常のEPC契約では、この場合には、「コントラクターは一時的にオーナーの要求通りに仕事を行わなければならず、延長される納期と追加費用金額に不満があるのであれば、EPC契約に定められている紛争解決方法に従って解決するように求めること」とされています。

 

これは、ものすごくコントラクターにとって不利なように思えます。

 

EPC契約締結前であれば、当事者間で仕様書に合意するまでは、契約書に署名するもしないも、コントラクターにはある程度自由があります。

 

納得いかない仕様で無理やり仕事を受けることを避けることができます。

 

しかし、一度EPC契約を締結すると、オーナーが仕様を変更してほしいと要求した場合には、その条件としての追加費用金額と延長される納期にコントラクターに不満がある場合でも、とりあえずはオーナーの要求に従わなければならないことになるのです。これは、どうにも納得がいかないように思います。

 

ただ、納得はいかないのですが、上記が、一般的なEPC契約上の仕様変更手続きについての扱いです。

 

ここで、コントラクターは、紛争解決方法に従って、自社が考えるだけの追加費用と納期の延長をしてもらうためにオーナーと争うことになりますが、これは証明の世界なので、証明できないと、自社の要求通りにはなりません。

 

仮にコントラクターが真実を主張していても、証明できない限り、負ける可能性もあるわけです

 

 

オーナーによる仕様変更の要求への対策

 

そこで、このような不利益を少しでも改善するために、以下のような対策が考えられます。

 

一つは、オリジナルの仕様書の中で、特定の部分については、オーナーによる仕様変更の対象外とすることです。

 

これにより、プラントのコアな部分、つまり、変更されると追加費用が多額にかかるとか、納期に多大な影響がでると思われる部分は変更されないものとすることができます。

 

もう一つは、オリジナルの契約金額の、例えば10%を超えるような追加費用がかかるとコントラクターが判断した場合には、その仕様変更をコントラクターは拒否できるようにすることです。

 

これにより、コントラクターが大幅な仕様変更を拒否することができるようになり、それだけ、多額の追加費用をオーナーに支払ってもらえなくなるリスクを減らすことができます。

 

上記の2点をEPC契約中に定めることで、仕様変更にかかるリスクを少し減らせるようになると思います。

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント