ボンドのon demand性を緩和する方法

      2019/11/18

 

ボンドはon demandであるのが通常なので、オーナーがそのボンドを発行した銀行(ボンド発行銀行)に対してボンドを提示し、「支払ってくれ」と要求すれば、その銀行は、本当にコントラクターが契約に違反したのか否かを確認することなく、オーナーの要求に応じなければなりません。

 

このことは、オーナーにとっては非常に強力な武器であり、一方、コントラクターは人質をオーナーに取られているようなものです。

 

では、このon demand性を少しでも緩和する方法はないのでしょうか?

 

この点、on demandであることを修正することではないのですが、次のようにすることで、いきなりボンドに基づいてボンド発行銀行からオーナーに対して支払われてしまうリスクを少しは減らすことができると思います。

 

①    オーナーは、ボンドに基づいてボンド発行銀行からお金を支払ってもらうためには、その前に一度、「ボンドを没収する旨の通知」をコントラクターに対して送付しなければならず、さらにその通知には、契約違反状態を一定の期間内に治癒すべきことを記載する。その通知をコントラクターに対して送付したことの証拠として、その通知の写しを、オーナーがボンド発行銀行に送付しなければならないことにする。

 

②    さらに、オーナーは、コントラクターが契約上の何条に定められた義務に違反したのか、かつ、その契約違反がコントラクターによって一定期間内に治癒されなかったことを明記した書面をもって、ボンド発行銀行に対して支払いを求めなければならず、かつ、その書面には、オーナーの正当な代表者による署名を必要とする。

 

上記により、少しは、ボンドのon demand性を緩和できると思います。

 

というのも、ボンドに基づくボンド発行銀行からオーナーへの支払いは、コントラクターにとっては、本当に避けたいことだからです。

 

①については、事前にオーナーがボンドに基づく請求をする旨の通知をコントラクターが与えられれば、コントラクターはオーナーと少しは協議をすることができるかもしれません。その協議をすることにより、お互いに和解できるかもしれません。オーナーが当初考えていた損害賠償額を減額できるかもしれません。

 

また、②については、オーナーの担当者レベルの人が、ボンドに基づく請求をしようと考えただけでボンド発行銀行に対して支払いを請求できるとするのではなく、オーナー内のそれなりの地位にいる人(代表権を持っている人等)の署名が必要とすることにより、安易に没収されるのを防ぐことになります。

 

上記の①と②を、ボンドの文面に記載し、「以下を満たした場合に限ってボンド発行銀行はオーナーからの請求に応じなければならない」としておくとよいと思います。

 

ボンドのフォームは、EPC契約に添付されてくるのが通常です。上記のような記載が最初からボンドに定められている場合もありますが、そうでない場合には、ぜひ追記することを、オーナーおよび銀行と協議してみるとよいと思います。

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント