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本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約の条文は受動態ではなく、できる限り能動態で書こう!

2024/01/13
 

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受動態について

英文契約の条文は、次のように受動態で書かれることがよくあります。

 

The Contract Price shall be paid to the Seller in accordance with the payment terms.

契約金額は支払条件に従って売主に支払われなければならない。

The Product shall be delivered to the Purchaser by the Deadline for Delivery.

製品は、納期までに売主に引き渡されなければならない。

in accordance with ~に従って

 

上の条文は、文法的にはなんら誤りのない英文です。

 

しかし、「受動態で書かなければならない」というルールがあるわけではありません。

 

それどころか、実は、能動態で書くべきといわれています。

 

これは、契約書に限らず、英語の文章を書く際に一般的に言われていることです。

 

原則として受動態を避けて能動態で書くべきと考えられている理由には、次のようなものがあります。

 

  • 受動態にすると、「誰が行為を行う義務を負っているのか?」について書き忘れるやすくなる
  • 能動態で書いたほうが、「誰が、誰に対して、何をする」ということがわかりやすくなる。
  • 受動態で書いたほうが、文字数が多くなる

 

まず、①については、上に挙げた例文では、支払いをする主体であるby the Purchaserがなくても(1つ目の例文)、製品を引渡す主体であるby the Sellerがなくても(2つ目の例文)、文法的な誤りはないですが、「誰の義務なのか(誰が行為を行うのか)」が重要である契約書においては、それらは明記されるべきです。

 

日本語では、主語を省略する、つまり、「誰が行為をするのか?」を書かなくても意味が通じることが多いためか、英語の受動態を使う際にその点を書き忘れてしまうことが起こり得るのです。

 

英文を作る際に行為の主体を忘れずに書くようにするには、次のように、主語を明記することが必要となる能動態で書く方が適しています。

 

The Purchaser shall pay the Contract Price to the Seller in accordance with the payment terms.

買主は、支払条件に従って、売主に契約金額を支払わなければならない。

The Seller shall deliver the Product to the Purchaser before the Deadline for Delivery.

売主は、納期までに買主に製品を引渡さなければならない。

in accordance with ~に従って

 

また、②については、そもそも、契約当事者間で裁判や仲裁などで争うことになるのは、契約当事者が義務を果たさない場合です。

 

その場合、「契約書には貴社が〇〇という行為を行う、と定められているのに、〇〇を未だしていない。契約違反だ。責任を取れ!」という形で訴えることになります。

 

そうだとすれば、「誰が何をする義務を負う」と書き表す能動態で条文を定める方がわかりやすいのです。

 

最後に③に関しては、受動態と能動態のそれぞれの条文並べてみると、通常、能動態の例文の方が少ない単語で同じ意味を表すことができます。

 

これは、受動態の場合には、be動詞が増え、さらに、行為の主体を表す際にbyという文言を使うことになるからです。

 

受動態:The Product shall be delivered to the Purchaser by the Seller before the Deadline for Delivery.

能動態:The Seller shall deliver the Product to the Purchaser before the Deadline for Delivery.

 

もっとも、必ず受動態で書いてはいけないというわけではありません。

 

受動態の方が書きやすく、また、わかりやすい場合もあるでしょう。

 

そして、受動態それ自体が文法的に間違いであるわけではなく、また、能動態で書いた場合と比較して法的な効果に差が出るわけでもありません。

 

よって、shall be entitled to doやshall be required to doと同じように、契約相手が受動態で書いてきた条文をいちいち能動態に直す必要はないのです。

 

ただ、自分でドラフトする場合には、

①英文契約書では、受動態で書かれていることが多いけれども、必ず受動態で書かなければなければいけないわけではないこと、そして、

②能動態で書くとシンプルにわかりやすく書くことができることが多い、

という2つを頭に入れておけば、ドラフト・修正しやすくなると思います。

 

その上で、相手方の義務が受動態で書かれている条文があった場合には、

相手が行為主体であることがby~と明記されているかを注意して読み、

もしも明記されていない場合には、追記するように心がけましょう。

(※ちなみに、is required to doやis entitled to doも受動態ですが、

これらは1まとめでshallやmayと同じ意味であるとすぐに判断でき

また、これらの表現を使った場合の文の主語には「契約当事者」が

置かれる形となるので、

上で述べた「なるべく避けるべき受動態」とは異なるものとして扱います)

 

練習問題

では、受動態で書かれた以下の和文について、行為主体を補った上で、能動態の英文で書き表す練習をしてみましょう。

①    契約金額は売主に支払われなければならない。

②    情報はライセンシーに提供されなければならない。

③    秘密情報が開示当事者に返還されなければならない。

 

答え

①「買主が、売主に契約金額を支払わなければならない」という意味になるようにします。

The Purchaser shall pay the Contract Price to the Seller.

②「ライセンサーがライセンシーに情報を提供しなければならない」という意味になるようにします。

The Licensor shall provide the information to the Licensee.

➂「受領当事者は開示当事者に秘密情報を返却しなければならない」という意味になるようにします。

The Receiving Party shall return the Confidential Information to the Disclosing Party.

役に立つ英文契約ライティング講座

義務を定める方法 ④shall be required to doとshall be obliged to doの問題点 義務違反の場合を表す方法
権利を定める方法 英文契約の条文は能動態で書くとシンプルかつ分かりやすい英文になる!
shall be entitled to doとshall be required to do 第三者に行為をさせるための書き方

上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の15~18頁部分です。

英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。

①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。

②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。

➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!

この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。

 

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英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。

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